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転生したら幽霊だったのだが  作者: 白乃兎
二章 王都編
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ハイスペック

「ぶっちゃけもう何をしたらいいか分からないわ」

『え?』


 カナの家のリビング。

 いきなりのカミングアウトに少しびびった。

 いきなりどういう事だ?


「師匠って言っても何を弟子にさせたらいいのかさっぱりよ。基礎はあらかた教えたし、あなたの戦闘スタイルに合わせての応用って言ってもよく分からないし」


 そんな事俺に言われても困る。

 俺も最初の頃に比べればびっくりするくらい強くなっただろう。

 だが、まだまだカナとの模擬戦ではカナに触れる事すら出来ないのだ。


「と、言うわけで、王都に行って討伐系の依頼を受けるわよ」

『いきなりだな。まあ、依頼を受けるのはいいんじゃないか』

「私も行くからちょっと待ってて。戦闘用の服に着替えてくるから」


 そう言ってリビングの方から寝室へ入っていく。

 あそこで二人で寝ているのだ。

 まぁベッドは流石に別だが。

 ちなみに今のカナの服装はパジャマのような服である。

 普通の女子とかはなぜか恥ずかしがったりするところなのだろうが、カナはその辺は適当らしい。

 カナの戦闘服は最初に会った頃の服だ。

 よくあんな格好で戦えるよなって思ったりする。

 下着とか見えないかな?と思ったりしたのだが下にスパッツとか着ているので見えなかった。


 おっと、俺も憑依しておくか。

 《憑依》

 本当に、ここまで目の前に餌をぶら下げられるとか生殺しだっつーの。


 そんな事を考えていると部屋からカナが出てきた。


「準備できたわ。行きましょうか」

「おう」







 ♢





 王都のギルド内。

 相変わらず人は少なく活気がない。

 みんな疲れているようだ。


「ようやく来てくれたんですね。早く仕事に行ってください」


 受付嬢は目の下に隈を作っていた。

 ギルドに登録してから日はそんなに過ぎてはいないがそれでも色々と大変らしい。

 戦争の後処理を押し付けられるとこうも人は疲れるのか。


 戦争はやっぱりいけないね。

 これは異世界だろうと何だろうと共通の思いだと思う。


「ロキア、この依頼とかよくない?」


 そう言ってカナが見せてきたのはドラゴンの討伐依頼。

 いきなりレベル高いの選んだなおい!

 適性ランクとかあるだろ。すると、横で見ていた受付嬢が突っ込んできた。


「えっ?ダメです!そんなのじゃなくて戦争の後始末系にしてください。討伐系は後回しです」

「え?でも今日はその為に来たんだし」

「人助けだと思って!」


 随分と必死である。

 今は少しでも人手が欲しいのだろう。

 規模の小さな戦争とはいえ、行方不明の捜索、戦場となった場所の後始末、戦争に使われた金や武具等のリストアップ。

 パッと見ただけですこれらの依頼が大量に国から出されている。


 中々に大変な依頼なのにも関わらず、報酬はとても少なくなっている。

 戦後は金がないからしょうがないとはいえ、小規模の戦争にそこまで金を注ぎ込んだとは思えない。

 これが権力の差ってやつか。横暴だな。


「カナ、おとなしく戦争関係の依頼を受けよう」


 俺がそう言うと受付嬢の顔がぱあっと明るくなった。可愛いなおい。


「修行はいいの?」

「そこまで急いで強くなる必要もないからな」

「まぁそうね。じゃあこれにしましょう」


 そう言ってカナが選んだ依頼はがっつり書類仕事系。

 国がどの位戦争に金を注ぎ込んだかを計算して欲しいらしい。

 全くこの国の教育はどうなっているんだ?


「この国は教育はそこまで熱心にされてなくて文字の読み書きが出来ればいい方よ。というか、あなたも文字は読めないじゃない」


 それは仕方がない。

 だって異世界の文字なんて読めるわけないんだから。

 っていうかなんで考えている事が分かったんだ?


「あなただいたい顔か口に出てるわよ」


 今知った衝撃の事実。

 自分の事なのにわからない事ってたくさんあるんだな。

 無意識ってやつか?


「ほら、早く行くわよ」

「あ、ちょっと置いてかれたら場所わかんない!」


 そもそも依頼の場所すらわからん。

 計算くらいなら出来るかこの国の地理に関してはちんぷんかんぷんです。




 少しギルドの外に出てみるとかなり賑わっている。

 国民は戦争が終わって平和になったと喜んでいるのだろう。


 しかし改めて見てみるとところどころに疲れて目が死んでいる人もちらほらと。

 ぜったい後始末の人たちだ。


「あのー、少しいいだろうか?」


 唐突に後ろから声をかけられた。

 しかも声的に可愛い女の子と見た。


「はい、なんでしょう?」


 即座に外面を付け、ナンパモードに入る。

 カナは俺の顔つきがいきなり変わった事に驚いているが気にしない。

 振り返ると銀髪ロングでストレート、顔は美人でキリッとしている。

 スタイルもカナほどではないがかなりいい美少女。

 歳も俺とそう変わらないだろう。

 服装はなんか豪華な感じだ。鎧だけど。

 戦乙女?


「え、えぇ〜と、冒険者ギルドに行きたいのだが場所が分からなくてな。教えてもらえないだろうか?」


 なんだ、逆ナン的な感じかと思って期待しちゃったよ。


「ギルドならそこをちょっと行った所にあるぞ」

「なんだ、近いな。散々迷ったのだがこんな近く似合ったのか。さっきまでの時間は一体」


 なんかブツブツ呟いている。

 方向音痴なのか?


「ありがとう!じゃあな」


 なんかいきなり去っていった。


「なんだったのかしら?」


 俺が聞きたい。


「あんな若くて可愛い娘もギルドで働くのね。凄いわ」

「カナも十分若くて可愛いだろ。俺的にはカナの方が・・・」

「あら、お世辞でも嬉しいわ」


 お世辞ではないのだが、まあいいだろう。


「今ギルドに行っても、やりたくない仕事を押し付けられるだけなのにね」


 こんな世の中なんだものしょうがないじゃない。

 あの女の子も承知のはずだ。多分。


「デスクワークとか全くやってなかったから出来るか不安だわ」


 カナなら問題ないと思う。

 むしろ正社員にならないかとかって勧誘されるレベルだろう。

 本当ハイスペックだからな、ここまで来ると先の展開がなんとなくわかってくるのだ。


 俺の知らない間にカナが世界最強の冒険者とかなってそうで怖い。

 同時期にギルド入りしたのに圧倒的実力差とか、理不尽だなぁ。


 いや、でもカナは意外と天然なところがあるから、仕事も苦手分野があるのではないだろうか?

 やっぱり人って完璧ではないと思うんだ。

 そう思いながらふとカナの顔を見ると、俺の視線にカナは気がつき、笑顔を向けてくれた。


 ぐはっ。


 ええ!?なにこの不意打ち。なんでいきなりの笑顔?

 あーこれはあれだわ。

 仕事面でもカナは完璧なパターンだわ。

 今の笑顔で確信したね。


 やっぱり人生って理不尽の連続なんだな。

 持たざる者と持つ者の差って言うものが異世界だろうと何だろうとある。


 ここまでの天才がいると諦めがつくな。

 自分にはあのレベルにまでは辿り着けないと言われているような。


「大丈夫、あなたなら出来るわ」


 カナは俺がネガティブになりかけていたのを察したのか、俺の手をにぎり励ましてくれた。


「ありがとう」


 そうだ。

 せめて、戦いの場だけでもカナの隣に立つんだ。

 全部敵わなくてもいい。

 一つだけ、胸を張って隣に立てるものがあればそれでいい。


 そんなこんなで、仕事場までカナの手の暖かさと柔らかさを堪能していた。

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