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転生したら幽霊だったのだが  作者: 白乃兎
一章 邪神族の墓地編
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邪神族の墓地

うーん、この話はなくても良かったような気がしなくもありません。

それでも読んでくれるのであれば嬉しいです。

 ここはどこだろうか?


 真っ暗闇。明かりがなくなにもにも見えない。

 俺は何をしていたのだろうか?

 なぜここにいるのだろうか?

 思い出せない。


 ガァッ!


 頭が痛い。何かが頭の中に流れ込んでくる。



 ・・・・・これは誰だ?







 ♦︎




 魔王の息子だの何だの言われてもてはやされた。

 誰もが俺に頭を下げ俺に取り入ろうとしてきた。

 全て上辺だけで心など微塵も感じないような奴らばかりだった。

 強い者に付き従い弱いものを威嚇する。

 そんなクズ共ばかりだった。


 それでも俺は父から魔王の座を受け継いだ。

 周りがそう言ったから?

 いやたぶん違う。

 でも理由は分からない。

 俺は何を欲しているのだろうか?


 魔王となってからはとても忙しくなった。

 なにやら魔族間の抗争や、人間達の侵略やらをどうにかしなければいけなかった。

 正直俺にはどうでもいいことだった。

 どうせ、俺を利用するような奴らばかりだ。

 でも魔王としてやらなければいけなかった。

 一人のメイドだけは何か他とは違う感じがしたが。


 次は結婚だのなんだのと臣下が口うるさく言ってきた。

 俺は嫁など取る気はないと何度も言ったらのだが聞かなかった。

 魔族の貴族の女が集められ、その女ども全員が俺に媚びてきた。

 ・・・・・どうせこいつらも俺を利用するだけの奴らだろう。

 そんな奴らと結婚などするつもりはこれっぽっちも無かった。


 結婚は魔王城で働いているメイドを見繕った。

 他とは違う感じのメイドだ。

 メイドは自分など勿体無いなどと言っていたが、その辺の媚びてくるだけの女どもより断然マシだった。

 臣下どももなぜそんな下賎なメイドなどと言っていたが無理やり黙らせた。


 そのうち、俺の周りには誰もいなくなった。

 いや、誰も来れなくなったと言うべきか。

 そばにいるのはメイドだけ。


 魔王として働きすぎたのか、他の魔族達から信仰され、魔王から邪神へと昇華したのだ。

 そばにいるのは嫁にしたメイドだけ。

 静かになってよかった。

 だが、邪神とはなんなのだろうか?

 魔王よりもさらに偉くなっても別に何か良いことがあるわけでもないというのに。


 邪神になったはいいが特にやることがない。

 最近は戦うことも少なくなって、メイドと二人いるだけだ。

 メイドは常にそばにいてくれる。

 何かするわけでもない。

 だが、この空間がどこか心地いい。


 メイドが死んだ。寿命だった。

 薄暗く日の光も差さない所に墓を作ってやった。

 涙はでないが、心にポッカリ穴が空いたようだ。

 こんな気持ちは初めてだ。

 胸が痛い。


 勇者とやらが殺しに来た。

 別に殺されてもよかった。

 でも、死ななかった。死ねなかった。

 勇者を殺した。

 だが、メイドが死んだ時のような気持ちにはならない。

 どうしてしまったのだろうか?


 他の邪神達がたくさん出てきた。

 邪神達で同盟を組んで、神々を打ち滅ぼしたいのだとか。

 どうでもいい。

 他の邪神たちは必死に魔力を高めたり、修行らしきことをしているが、俺はしない。

 神々の戦争など興味はないのだから。


 戦争とやらが始まった。

 邪神が次々と死んでいく。

 だが、なにも思うところはない。

 戦場に引っ張り出されたので戦う。

 魔王の頃よりも弱くなっていた。

 これなら死ねる。そう思ったが、死ねなかった。

 邪神達が禁忌の術に手を出したとかで戦況をひっくり返したらしい。


 戦争は邪神たちの敗北で終わった。

 結局俺は死ねなかった。

 邪神たちは大半が死んだ。

 メイドの墓を中心として、邪神達の墓を作ってやった。

 そこを邪神族の墓地と名付けた。

 メイドの墓と見分けがつくようにメイドの墓にだけ少し聖なる力を付与した十字架を建てた。


 また静かな日々が訪れた。

 何もする事はなく、興味ややる気も出ない。

 誰が俺を殺してはくれないだろうか?


 あれからどれくらいの時間が経っただろうか?

 一人の女が俺の前に現れた。

 俺を殺してくれるらしい。

 なんでも、邪神族の墓地に面白い存在が現れたので、そこで、死霊として少しの間いてくれればいいと言ってくれた。


 次、女が来た時はそれからかなり時間がたってからだった。

 女は俺の腹を素手で貫いた。

 その程度で死ぬ俺ではないが体力や魔力等は俺が魔王になる前くらいまで弱った。

 女は言った。


「もうすぐ私の弟子が来て、あなたを殺してくれるわ。少し体力を回復してくれないかしら?あなたを弟子の最初の大きな壁にしたいの」


 殺してくれるならばどうでもよかった。

 おれは墓地に霧散している魔力を少しずつ集め始めた。

 壁にする。つまりは戦って欲しいということだろう。

 最後くらい戦ってもいいかなと、それに備え少しずつ回復をする。


 一人の死霊が俺の前に現れた。

 最初はなんとなく戦って負けようとしたが、戦闘中に脳内に声が響いた。


『もう少し本気を出してくれないかしら?そうしたら、死んだ後であなたの大切な人の所に連れて行ってあげるわ』


 その声を聞いて俺は柄にもなくすこしやる気を出してしまった。

 メイドに会える、そう思ってしまった。

 それでもなかなか死霊は喰いついてきた。

 執念といったところなのだろうか?

 こいつにも何かあるのだろうか?


 そして死霊が俺の体に入ってきた。




 ♦︎




 ・・・・・そうだ、俺は邪神族の墓地の主と戦っていた。

 今見たのはおそらく俺が憑依しようとした主の記憶。

 こいつは元々魔王で邪神へと成り上がったのだろう。

 中々に辛い記憶。

 愛を知らなかった、失ってから初めて気付いた大切な物。

 生きる意味を失って殺してくれるやつを探していた。


 俺がこいつと戦ったのは元々カナに仕組まれていたということだろう。

 そうでなければ、そもそもカナがこんな墓地に来るはずがなかった。

 面白い存在?俺が?よくわからない。

 とりあえず憑依を成功させなければ。


『早く、殺せ』


 声が響いてきた。

 中性的でどちらかと言えば男の声、そんな感じの声だ。

 おそらく主の声だろう。

 すると突然主の体が俺の目の前に現れた。


『お前は俺を殺したいのだろう?それともこの体が欲しいのか?くれてやる』

『お前は後悔しているのか?』

『何にだ』

『メイドといる時間が幸せだったと気付かなかった事に』


 主の顔がピクリと動いた。


『フン、確かにあの時間が一番満ち足りていた』

『他の幸せを探そうとは?』

『思わない』


 ならばせめて、メイドの墓の前で殺してやるべきだろう。


『体、もらうぞ』

『好きにしろ、殺してくれるのならそれでいい』





 視界が切り替わる。

 さっきまで戦っていた場所だ。


 完全に憑依していないので足取りが重い。

 だが、それでも十字架を持って、これの刺さっていた墓まで歩く。


 主は幸せを知らなかった。

 だからこそ後悔している。

 殺してくれる相手を探していた。

 やり直すことは出来ないのだろうか?


 今まで沢山の死霊達を狩ってきた俺に情が芽生えてしまった。

 同情してしまった。


 でも、主がメイド以外を望んでいないのなら、せめて、メイドの墓で殺してやるべきだ。


 そして、十字架を拾った場所についた。

 そこに、再び十字架を刺す。





 視界が切り替わる


『いいんだな、殺すぞ』

『あぁ、ここで死ねるのなら』


 俺は剣にして主の胸へ一突き。


『ガフッ、お前の名前は?』

『ロキア、お前は?』

『名乗るのなんて久しい、クレストだ。お前の記憶を覗かせて貰ったが、あの女の言うとうり面白い奴だ。お前もせめて後悔しないようにーー』


 クレストの姿が消えた。

 これで憑依は完了。

 この体はもう俺のものだ。





再び視界が切り替わる。


「終わった」


 これでしばらく幽霊ボディともお別れだろう。

 とりあえずはこの肉体に慣れて、戦えるようになろう。

 主の身体能力を受け継げればよかったのだが、流石にそこまで上手くは行かないようだ。


 とりあえず、肉体を使いこなせるようにならなければ。





感想と評価、物凄く首を長くして待ってます。

なんなら長すぎてビビるレベルです。

誤字脱字等ありましたらご報告ください。

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