旅の始まり
あのようなあらすじで開いていただきありがとうございます。
さてさて彼はどのように旅をしていくのかどうぞ長い目で見守ってやってください。
見渡す限りの草原、馬車に揺られる中ぬるい風が頬を撫でていく、特に変わったこともなく流れていく風景。
そこに目新しさや発見はなかったが、おれは権利としての自由と責任としての自由だけは手に入れた。
それだけが旅の始まりにおれが手にしたものだった。
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中規模農家の長男坊、喰うには困らずされど裕福ではなく、日々を農耕に費やしていく。
うちは平凡ではあるが幸せな家庭ではあったのだと思う。喰うに困らず、家族仲は良くとりたてて問題は無かったんじゃないかと思う。ただ両親が礼節に厳しく融通の利かないところがあったので喧嘩・・・というか叱られることは多かったような気がするけれど。
まぁ、一般家庭の小さな幸せ程度には恵まれていたのは確かだ。今となっては冗談にもならないが、おれ自身も小さなころは真面目でよく気の利くお子さんで通っていて本当に真面目なお宅の長男を地で行っていた。
ただし、成長していく中で思ってしまったのだ、「お前の人生これでいいのか?」と・・・
確かに食うに困る生活はしていないし長男だからよっぽどの事がない限りは家を継こともできたと思う。特に困ることもなく生活もできたはずだ。
ただ、そうやって生きることに何の意味があるかが分からなくなった。
別に領主の騎士に憧れたわけではないし、宮廷の魔導師になりたかったわけでもない、ただ村で生きて、死んでいくことの意味に疑問を抱いてしまった。
つつがなく生きて、行く先の見えた人生、それをつまらないと思ってしまったときに世界は変わってしまった。何をやっていても面白くなくて、やりたい事もない、とにかく逃げ出してしまいたくなった。
そんな感じで旅に出た、旅に出て何かが変わるわけではないかもしれないが少しの間でも先の分かった人生では無くなると思ったのだ。
何の当てもなく始めてしまった旅だがこれからどうなるのやら。未知だけが希望とは分の悪いかけだがそれはそれで面白いだろう。
さてさて我の行く道に光有れ。
次回5/29(木)17:00更新予定