号砲まであと少し
『次は~九重~九重~』
目的地まであと少し。
キリのいいところまで読んだ文庫本を閉じ、何となく乗客を観察してみる。
履いている靴。
羽織っている上着。
腕に付けている時計。
肩からかけているバッグ。
背負っているリュック。
そして身体つき。
カタギは2割。残りはお仲間、といったところだろうか。
『次は~千倉~千倉~』
お仲間たちの顔つきがかわる。
居眠りから目を覚ます者。網棚の上に置いてあった荷物を降ろす者。
それぞれが思い思いに降車準備を始める。
駅に到着。お仲間たちが一斉に立ち上がり、小さな駅、一つしかない改札口に向かってぞろぞろと降り始める。
現地の方々には申し訳ないがこれといった目玉もない外れの駅。
今日ここでこの時間帯に降りるとなれば、やはり目的は同じなのだろう。
列はやがて駅の外で待つ会場へと向かうシャトルバスに吸い込まれていく。
どの人も「今日はやってやんよ!」と言わんばかりの高揚感溢れる顔をしているように見える。
つられて自分のテンションも徐々に上昇していくのを感じる。
バスの中で会場についてからやることを反芻する。
受付、着替え、トイレ、準備体操、ウォームアップ。
会場に着いた。
天気は良好。気温はほどほど。湿度は低目。
今日はいいレースができそうだ。
号砲まで、あと少し。
大会、受験、資格試験、etc...
自信の有無、結果の良し悪しに関わらず
"本番直前の空気"は私の大好物です。本番なんて、むしろオマケに過ぎません!!