表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

あれ?

作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
掲載日:2026/08/10

日常のほんの小さな違和感。

そこから、逃れられない悪夢が始まります。

※短編ですので、ぜひ最後までお楽しみください。


━━あれ?このお部屋のコンセントってこんな所にあったかしら?

 わたしはふと手を止めた。ドライヤーのプラグをコンセントにそうとしていたのだ。

 ところが、そんな違和感を感じてつと手を止めてしまったのだ。

 改めて部屋を見回した。まぎれもなく、わたしのお部屋のようではあった。ただし、何処かにたまらない違和感を感じてならないのだ。

 例えば窓の位置。窓は南側に一カ所あるだけだったはずだ。ひとつしかないのは間違っていないけれど。

 ただ、今正午なのだが、その窓から直に照りつけてるはずの太陽が見えてさえないのだ。雲が立ち込めて 太陽の光をふさいでいるというわけではない。実際、雲一つない快晴の天気なのに違いはなかったのだ。

━━するとこのお部屋は?わたしが入るべき お部屋を間違えたとか……?賃貸マンションのお部屋の間取り なんて、どこもほとんど変わりないのかもしれない。それに加え、趣味がたまたま同じで同じような強度を揃えたりすれば、他のお部屋と区別がつかなくなるのかもしれない。

 こんなことを考えた時だった……。

玄関のドアノブが、ガチャガチャと荒々しく回された。

「誰……?」

 思わず身をすくめる。施錠されているはずのドアがゆっくりと開き、入ってきたのは見知らぬ若い男だった。男は手にした買い物袋をテーブルに置くと、わたしの方など見向きもせず、親しげに声をかけてきた。

「ただいま。外、急に晴れてきたよ」

 男の言葉に、心臓が跳ね上がる。

 ……外が晴れてきた? わたしはさっき、窓の外が「雲一つない快晴」なのを確認したばかりだ。なのに、なぜ?

 恐る恐る、もう一度窓の外へ視線を向けた。

 青空だと思っていたものは、よく見ると青いペンキで塗られたただの壁だった。太陽だと思っていた光は、天井の隅から照射されている強い照明に過ぎない。

 ここは、部屋ではない。部屋を模した「箱」の中だ。

「ねえ、聞いてる? 昨日のドラマの続き、見ようよ」

 男が笑顔でこちらに振り向く。その瞳には、わたしの姿など映っていないようだった。男が見つめているのは、わたしが立つ位置の少し右側——そこには、部屋のセットを撮影するための大型カメラが設置されていた。

 頭の中に、忘れていた記憶が濁流のように流れ込んでくる。

 わたしは住人ではない。

 一か月前、この密室型連続殺人事件のセットで命を落とした、最初の被害者だ。

「さて、今日の撮影も始めるか」

 男がポケットから取り出したのは、血に染まったドライヤーのコードだった。わたしが手をつけていたコンセントの横には、今もあの日と同じ、わたしの遺体が横たわっている。

 わたしは部屋を間違えたのではない。

 死んだ自覚のないまま、自分の殺害現場を永遠にループ再現させられていただけだったのだ。


     【了】

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

日常の些細な違和感から始まる恐怖を描いた短編ですが、いかがでしたでしょうか。ラストの展開にぞくっとしていただけたら嬉しいです。

面白いと思ってくださったら、ぜひ評価やブックマーク、感想などをいただけると執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ