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『バックオーライ ケッカオーライ』10秒だけ時間を戻せる新米刑事。倫理観ゆるめでサーセンね。  作者: 団田図


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第18話 ギンギラの銀 ④

「雨とか、マジ勘弁してほしいっすわ。靴濡れるし」

 正午過ぎの海果月みかづき市。鉛色の空から降り注ぐ冷たい雨が、俺のやる気と、おろしたてのスニーカーをじわじわと侵食していく。

 傘を差して路地裏に突っ立っている俺の横で、杵塚きねづか先輩は今日も無駄に姿勢がいい。ビニール傘を持つ手つきすら、剣道の竹刀を構えるかのように決まっている。

兎木緒ときお君、愚痴をこぼすな。雨音は周囲の雑音を遮断してくれる。密会にはおあつらえ向きじゃないか」

「ポジティブっすねぇ。勉強になりやすっ」

 俺は棒読みで返した。この人は、台風が来ても「風が街の埃を吹き飛ばしてくれる」とか言い出しそうだ。

 そんな軽口を叩いていると、薄暗い路地の陰から猫背の男が現れた。組対4課が手配した情報屋だ。

 目深に被った帽子の下から、ギョロリとした目が俺たちを値踏みするように一瞥する。

 言葉はない。目配せ一つで案内が始まった。

 俺たちは無言のまま、彼の背中を追う。靴音が雨音にかき消される。

 そのまま連れて行かれたのは、雑居ビルの裏手にある錆びついた業務用エレベーターだった。

「紹介ってことになってるからよ。ヘマすんなよ」

 情報屋はしわがれた声でそう言い残すと、エレベーターの扉が閉まる前に闇の中へと消えていった。

 ガタガタと不安な音を立てて、箱は地下へと沈んでいく。


 地下二階。

 開いた扉の先には、無機質なコンクリートの通路と、その奥を塞ぐ重厚な鉄扉。そして天井の隅には赤く光る監視カメラ。扉の脇には、見張り役の男が仁王立ちしていた。

 筋肉の鎧を着たような巨漢だ。耳にはインカム、腰には警棒らしき膨らみが見える。

「……紹介してもらった相沢と高橋だ」

 杵塚先輩が少し硬い声で告げ、例の偽造免許証を差し出した。

 見張りは無言のままそれを受け取り、ジロジロと顔写真と実物を交互に眺めた。数秒の沈黙が、永遠のように感じる。

 やがて男はインカムで何やらボソボソと確認すると、腰のカードキーをリーダーにかざした。

 カチャリ、と電子ロックが解除される音が響く。

「どうぞ」

 低く唸るような声。俺たちは顔を見合わせ、その「魔窟」へと足を踏み入れた。


 中に入ると、すぐに小さなカウンターがあった。ホテルのフロントのようだが、照明は薄暗く、黒服の男たちが鋭い視線を送ってくる。

「いらっしゃいませ。初回のお客様には、こちらの誓約書にサインをお願いしております」

 黒服の男が無表情で一枚の紙とペンを差し出してきた。

 内容はありきたりな免責事項だ。

 『店内の秘密を口外しない』『警察への通報禁止』。

 そして一番下に、『客同士のトラブル、金銭の紛失、及び身体的損傷等は全て自己責任とする』という不穏な一文があった。

 自己責任ねぇ。刺されても文句言うなってことかよ。

 俺は内心で毒づきながら、ペンを取った。

 普段の自分の字とは違う、少し丸みを帯びた筆跡を意識して、ミミズがのたうったような字で『相沢 健』とサインした。

 隣では杵塚先輩が、『高橋 誠』という署名を、まるで書道の師範代のような達筆で書き上げていた。……先輩、文字に性格が出すぎです。もっと適当に書いてくださいよ。

「続いて、携帯電話をお預かりします」

 黒服がカゴを差し出した。

「えっ、マジっすか」

「店内での撮影・録音防止のためです。ご協力ください」

 俺は思わず顔をしかめた。

 俺の命より大事なスマホが没収される。これで暇つぶしのゲームもできないし、気になることを検索することもできない。何より、緊急時に外部と連絡を取る手段が絶たれるのは痛い。

 俺は渋々ポケットからスマホを取り出し、電源を切ってカゴに入れた。

 俺のテンションは爆落ちして、とうとう底をついた。帰りたい。


 次はチップの購入だ。

 警察の裏金……もとい、捜査費として預かった茶封筒から五万円を取り出し、カウンターに置く。

「チップに換えてくれ」

「かしこまりました。初回サービスで一割、五千円分つけておきますね。ごゆっくりどうぞ」

「お、ラッキー。サンキュ」

 俺はチャラく言葉を返したが、横にいる杵塚先輩は「国民の血税が……」と小声で唸りながら、まるで汚い物でも見るような目でプラスチックのチップを受け取った。

 その顔、完全に「正義感」が漏れてますよ。


 二重の防音扉を抜けると、そこは地上の雨模様とは無縁の別世界だった。

 鼓膜を揺らすジャズのBGM。紫煙を含んだ重たい空気。高価な香水の匂い。そして、欲望に目を血走らせた男たちの熱気。

 カジノ『バビロン』。

 フロアにはルーレット、ブラックジャック、バカラ、ポーカーといったテーブルが並び、チップが飛び交い、こすれる乾いた音が絶え間なく鳴り響いている。

 ここにいる全員が共犯者。法治国家日本の地下に広がる、無法地帯だ。


「よし、兎木緒君。僕は手始めにルーレットのテーブルにつく。君は背後で状況を見ていてくれ」

 杵塚先輩が小声で指示を出した。

「了解っす。負けないでくださいよ、マコトさん」

 先輩は頷き、ルーレットの台に向かった。

 俺は少し離れた場所から、カクテル(中身はただのジンジャーエールだ)を片手に先輩の様子を伺った。

 ……ダメだ。

 杵塚先輩、背筋が伸びすぎていて完全に浮いている。

 椅子に浅く腰掛け、両手を膝の上に置く姿は、これから面接でも受ける就活生のようだ。

「く、黒で」

 チップを賭ける手つきもぎこちない。指先が震えているのが遠目にも分かる。

 あれじゃあ『僕はカモの素人です』って看板を背負って歩いているようなもんだ。

 案の定、ディーラーの女が冷ややかな笑みを浮かべながらウィールを回している。

 まあいい。先輩が目立つカモとして囮になっている間に、俺は本来の仕事をする。


 俺はダルそうにグラスを揺らしながら、鋭い視線で店内をスキャンした。

 ホールスタッフの動き、客層、そして金の流れ。

 出口付近にあるカウンターでは、チップを特殊景品(金の延べ棒の小片だろうか)に交換している客と、それを裏口で現金化する手はずを整えている従業員の姿を確認した。

 これで賭博開帳図利罪の構成要件は満たした。現行犯逮捕は可能だ。

 だが、今回のミッションには続きがある。

 『VIPルームへの経路特定』。

 暴力団幹部が出入りし、さらなる巨額が動くという隠し部屋。そこを見つけなければ、トカゲの尻尾切りで終わってしまう。


 俺は壁際を重点的に観察した。

 壁には豪奢な絵画や装飾品が飾られているが、一か所だけ、違和感を覚える場所があった。

 入り口近くの壁際にある、大きな姿見の鏡だ。

 アンティーク調の重厚な枠に縁取られたその鏡は、客が身だしなみを整えるために置かれているように見える。

 だが、特定の店員だけが、その前で一瞬立ち止まるのだ。

 俺は目を凝らした。

 高そうなシャンパンタワーをワゴンに乗せた店員が、鏡の前に立つ。そして、鏡の縁の装飾に手をかけた瞬間――。

 音もなく、鏡が横にスライドした。

 一瞬だけ見えた奥の通路。そこから、仕立ての良いスーツを着た初老の男が、顔を赤らめて出てきた。

 男が出てくると、鏡はすぐに元の位置に戻り、ただの姿見に擬態した。


「ビンゴ」

 俺はニヤリと笑い、ルーレット台へ戻った。

 杵塚先輩は、手持ちのチップをすり減らし、眉間に深い皺を寄せて盤面を睨んでいた。

 俺は背後から先輩の肩をポンと叩いた。

「マコトさん、ちょっとツキ変えましょうか」

「え? い、今いい所なんだ。邪魔しないでくれ……」

 先輩が振り返る。その目は、捜査の目ではなく、負けが込んで熱くなったギャンブラーの目になりかけていた。危ない危ない。

「(本来の目的を思い出してください)」

 俺が目配せすると、先輩はハッとして我に返った。

「あ、ああ、そうだな。(どうした兎木緒君?)」

 俺は腰をかがめ、恋人同士のように顔を寄せ、先輩の耳元で囁いた。

「あそこの姿見。あれがVIPルームへの入り口っす。今、中から客が出てきました」

 杵塚先輩の目が、カッ、と見開かれる。

「でかした兎木緒君! よくやった!」

「しっー! 声デカいって!」

 周囲の客がギョッとしてこちらを見た。俺は「いやー、当たってますかー」と大声で誤魔化した。

「さて、場所は割れましたけど、どうやって中に入ります? 酔っぱらったフリして強引に行きますか?」

 俺が一歩踏み出そうとすると、杵塚先輩が俺の腕をガシッと掴んで制止させた。

「やめるんだ兎木緒君。今日は内偵調査だけだ。応援体制も無い今、下手に暴れて正体がバレたら命に関わる」

「じゃあどうするんすか? 眺めて終わりですか?」

「しかし、中の確認はしておきたいな……。そうだ! この場に合った『正攻法』で行こう」

 先輩の瞳に、謎の自信が宿った。

 嫌な予感がする。

「正攻法?」

「そうだ。VIPルームというだけあって、きっと高レートで遊んでくれる上客だけを入室させているはずだ。僕たちもチップを増やして、もっと高レートで遊びたいと申し出れば、向こうから案内してくれるに違いない」

 なるほど。確かにそれならトラブルにならず、客として自然にVIPルームへ侵入できる。

 理屈は合っている。だが、最大の問題がある。

「それじゃあ、その作戦で行きましょう。……ところで杵塚先輩、今チップの手持ちはどのくらいですか?」

 俺の問いに、杵塚先輩はバツが悪そうに視線を泳がせた。

 そして、震える手を開いて見せた。

 そこには、一番安いレートのチップが、たった一枚だけ残されていた。

「実は……残り一枚なんだ。いやね、つい熱くなってしまってね。『赤』が十回連続で出たから、次は絶対『黒』だと思って倍プッシュしたら……」

 先輩、それは「モンテカルロの誤謬」ってやつですよ。

「今日こんな任務があるんなら、勝負に強いお守りを持ってくるんだったよ」

 こんな状態でよくも正攻法とか言えましたね。

 たった一枚。数千円分の価値しかないこのプラスチック片を、VIPルームに入れるほどの巨額に増やせと?

 普通なら不可能だ。

 だが、俺にはアレがある。

 仕方ない。能力を使って、強引に運命をねじ曲げてやるか。

 雨の湿気も届かない地下の密室で、俺たちの危険なゲームが始まった。


 闇カジノのフロアには数々のゲームが用意されている。

 ルーレット、ブラックジャック、バカラ、ポーカー、スロットマシン。

 この中で、俺の「10秒だけ時間を戻せる能力」に最も適したギャンブル。

 それは、バカラだ。

 ルールは至極単純。「プレイヤー」か「バンカー」かのどちらかを選び、配られた2~3枚のカードの合計数の下一桁が「9」に近い方が勝ちとなる。

 丁半博打のようなものだ。客はカードを操作できない。ただ結果を予想して賭けるだけ。

 このゲームの醍醐味は、伏せて配られたカードをゆっくりと絞りながら(めくりながら)確認する「スクイーズ」にあると言われている。全身全霊で念を込め、カードのマークや数字を覗き見る瞬間の緊張感。それが脳内麻薬をドバドバと出させるらしい。

 だが、能力を使える俺にとっては、その緊張感こそが無駄だ。

 結果を見てから、戻って、勝つ方に賭ける。

 それだけの作業だ。必ず勝てる出来レースには何の面白みもない。

 だが、この確実性こそが今の状況には必要だ。

 これであれば、残り1枚となった瀕死のチップであっても、いともたやすく勝ち進めることができるだろう。


 俺は先輩をバカラのテーブルへと誘導した。

 テーブルには数人の客と、無表情なディーラーがついている。

 俺は先輩が自分の力で勝っていると思ってもらいたかったので、まずは自分の意志でベットさせた。

 ここでもし負けたのであれば、一度バックして先輩をああでもないこうでもないと、半ば洗脳させるかのように言いくるめ、次は勝つ方へベットさせる。

 そしてもし、10秒以内に勝負が決着しなければベットさせない。

 これを何度も繰り返し、たった1枚のチップをまたたくまに増やしていった。


 勝負を見る。戻る。賭けさせる。

 パチパチパチ バック! チップは10枚に。

 パチパチパチ バック! チップは100枚に。

 俺の目は乾き、瞼が痙攣しそうになるが、先輩の興奮は最高潮に達していた。

「すごい! 僕、神がかっているよケンちゃん! また当たりだ!」

 周囲の客たちもざわめき始める。

 連続的中の快進撃。チップの塔が積み上がっていく。

 

 バック! バック! バック!

 チップは3000枚を超えた。金額にして約300万円。

 5000円の軍資金が、わずか数十分で300万円に化けたのだ。

 それも、税務申告など必要ない、闇の資金でだ。

 (これ、仕事じゃなくてプライベートでやりてぇなぁ……)

 ふと、そんな邪な考えが頭をよぎる。スクラッチくじでちまちま稼ぐのが馬鹿らしくなる金額だ。

 いやダメだ。いつ警察のガサ入れが来るかわからないリスクがある以上、安全ではない。それに、もし俺が捕まればクビだ。何より、杵塚先輩からの信用も失ってしまう。

 今はそれが一番……嫌かもしれない。


 そんな感傷に浸っていると、異変が起きた。

 ディーラーが交代したのだ。

 新たに現れたのは、細身で神経質そうな男。目つきが鋭い。

 俺たちの勝ちすぎを警戒して、店側がエースを投入してきたのだろう。

 だが、どんな凄腕ディーラーだろうと、時間を操る俺には勝てない。

 俺は余裕の笑みを浮かべ、次の勝負を見守った。

 カードが配られる。

 プレイヤー「8」。バンカー「6」。

 プレイヤーの勝ちだ。

 よし。


 パチパチパチ バック!


 時間を戻す。


 勝ち続ける杵塚先輩は、自分の運の良さに喜ぶも、俺はだんだんと言葉での誘導が難しくなってきた。

「今マコトさんって、勝ち続けているじゃないですか、だからあえての逆を狙ったと思わせてさらにその逆、いっちゃいましょう。ってことで、、、」

 次はプレイヤーであることを知っている俺は、そちらへベットしてもらうため、色々と言って誘導しているが、これだけでもう3度はバックをしている。

 そしてようやく杵塚先輩が、思惑通りにベットしてくれた。

「いいやケンちゃん。ここはやはり「プレイヤー」だ。僕は僕を信じるよ。


 先輩は大量のチップを「プレイヤー」に置いた。

 ディーラーの男が、俺たちをチラリと見た。その口元が、微かに歪んだ気がした。

 「ノーモアベット」

 カードが配られる。

 俺は勝利を確信して腕を組んだ。さあ、プレイヤーの「8」を見せてみろ。


 一枚目、オープン。

 プレイヤーは……「2」。

 は?

 二枚目……「3」。合計「5」。

 対するバンカーは「9」。ナチュラルナイン。

 バンカーの勝ち。


「えっ?!」

 俺は目を見開いた。

 間違いなく、さっきの未来ではプレイヤーが勝っていたはずだ。カードの並びが変わるはずがない。

 しかし、現実に先輩のチップは没収されていく。

 これはつまり……イカサマだ!

 ディーラーが、カードを配る瞬間に何らかの技術スライディングやセカンドディールを使って、配るカードをすり替えたのだ。

 俺たちが「プレイヤー」に大金を賭けた瞬間、店側は勝つ予定だったプレイヤーを負けさせた。

 未来が変わったんじゃない。店側が意図的に「変えた」のだ。


 俺はすかさずバックした。


 パチパチパチ バック!


 チップが戻ってくる。

 俺は焦った。どっちに賭けても、こいつらは後出しジャンケンのように結果を変えてくるかもしれない。

 俺は小声で先輩に伝えた。

「マコトさん、ヤバいです。ディーラーがイカサマしてます」

「なにっ!? 本当か!?」

「さっき、やっているのを見ました。こっちは完全にマークされてます。これ以上勝つことは厳しいっすよ」

 先輩の表情が険しくなる。

「イカサマとは許せんな……。現行犯で挙げるか?」

「いや、証拠がないっす。それに、ここで騒いだらVIPルームへの道が閉ざされます。囲まれてボコボコにされるのがオチです」

 先輩は短く唸り、冷静な判断を下した。

「……よし。潮時だな。チップはもう十分増えた。ここで深追いはせず、勝ち逃げという形で席を立とう。これだけの額を換金しようとすれば、きっと上の人間が出てくるはずだ」

 さすが先輩、引き際を心得ている。

 この時点でチップは300万円分ある。内偵調査の成果としては十分すぎるし、VIPへの切符としては申し分ない額だ。


 杵塚先輩はディーラーに向かって、鷹揚に手を挙げた。

「ふぅ、今日はツイていたな。そろそろ引き上げるとするよ」

 ディーラーの男は、表情を消して一礼した。

「かしこまりました」

 男がインカムを押さえ、ボソボソと何事かを呟く。

 俺たちの背後に、気配が忍び寄った。

 振り返ると、黒服の男たちが数人、壁を作るように立っていた。

 逃がさない、という威圧感。

 黒服の一人が、恭しく頭を下げた。

「お客様。素晴らしい勝負勘でした。これほどの勝ち額となりますと、通常のカウンターでは対応いたしかねます。……別室にて、清算と、オーナーからのささやかな粗品をお渡ししたいのですが」

 来た。

 別室。つまりVIPルームへの招待か、あるいは身ぐるみを剥ぐための拷問部屋か。

 どちらにせよ、あちらから誘ってきてくれた。

 俺と先輩は目配せをし、頷いた。

「ああ、構わないよ。案内してくれ」


 俺たちは席を立ち、黒服に先導された。

 出口の方へ向かうかと思いきや、男はフロアの隅へと歩き出した。

 向かう先は、俺が最初に見つけた、あの「大きな姿見」だ。

 やはり、ここか。

 黒服が鏡の縁に手をかけると、音もなく鏡がスライドし、黒い口を開けた。

 隠し通路だ。

 周囲の客たちはゲームに夢中で、誰もこの異変に気付いていない。

 俺と先輩は、黒服に促されるまま、その暗闇へと足を踏み入れた。

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