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まじでどうかしてる。

「藤森ーお待たせ!」


ぱたぱたと走ってくる姿が見える。

肌寒くなってきた季節。

ニット素材のジャケットを着て海堂がそう叫んだ。


「よし、行くか!」

「うん!」


海堂と出会って早一か月。

約束していた展覧会をきっかけに、海堂とはよく遊ぶようになった。

ちなみに今日は動物園。海堂は動物も大好きらしい。


「お前両生類とか大丈夫な人?」

「結構好きだよ。爬虫類も虫も全然平気」

「まじ?お前強いな…。俺も蛇とかは大丈夫だけど虫はちょっと…」


そんな会話をしながら目的地へ向かう。

場所を調べつつ、動物園の情報もスマホで眺める。


「お、今モルモット祭りっていうイベントやってるらしいぞ」


ほら、と海堂に見せる。

そうしたらみるみる目がきらきらと輝きだした。


「え?モルモット祭り開催中!?藤森、絶対行こう!」


テンションがあがった海堂は両手でガッツポーズをしながら俺にモルモットの愛らしさを力説し始めた。





海堂といて思ったことは、海堂は少し変わっているということ。


突然しゃがみこんだと思ったら、


「この石すごくいい!持って帰ろう!」


そう言ってそこら辺の石をポケットに入れる。

…悪いが俺には違いがわからん。


他にもちょっと待ち時間があったら、


「海堂行くぞー。おーい、海堂ー?」


ずっと空を眺めていたり。

声をかけても気が付かない。

耳元でもう一度言ってようやく気が付くレベルだ。


そして極めつけは…


「わっ!」

「海堂!あぶねぇ!!」


バッと手を伸ばして海堂の体を受け止める。


…そう、海堂はよそ見をしてよくこけそうになるのだ。

しかも何もない場所で。


「ご、ごめん…」


申し訳なさそうに謝られる。


「ったく、気をつけろよー。怪我したらなかなか治らないぞ」


そんなことがしょっちゅうだからほっとけなくて、今までこんな奴と会ったことなかったから新鮮で…


「えへへ、でも藤森が助けてくれるからすごく嬉しい。ありがとう!」


そう笑顔を向けられた。


「~~~~~~~~~ッ」


でも、何よりおかしいのは…



「ちょ、」


かああああ…ッ

と顔が熱くなるのを感じる。


「ちょっとトイレ!」


そう叫ぶとダッシュで海堂のもとを離れる。


「あ、俺ここで待ってるね」


遠くからそう返事する声が聞こえた。










はあ、はあ。


背を木にくっつけて、息を整える。

心臓がうるさい、収まらない。


海堂の笑顔を思い出す。

ほわっとした癒される優しい笑顔。



何より、誰よりもおかしいのは……


「かわいい…」



なんて思う、自分…。









「………って」


俺は何を考えてるんだあぁぁぁぁぁぁっぁぁ!!


だらだらと額から汗があふれだす。

口角がぴくぴくと痙攣する。


「あいつ男!ただの友達!かわいいとかあほ!!!」


木にガンガンと額を打ち付ける。

覚ませ、目を覚ませ、俺えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!


「あーうー」

「見ちゃダメ!」


近くを通った赤ちゃん連れの母親がこっちを不審げに見ているのに気が付き、衝動を抑えた。

はたから見たら確実におかしい人間だ。


「落ちつけ、落ち着け、お前なら大丈夫だ、藤森昭夫…!」


ぜーぜー言いながら木の幹をぎりぎりと掴む。


そうだよ、あいつのどこに惹かれる部分がある?

確かに男らしくはないと思ってたけど、だからってさ!



「藤森」


その時、ぱたぱたと走ってくる人影が見えた。

海堂だ。


「なかなか戻ってこないから探してたんだけど、こんなところで何して…」


俺のそばまで寄ってきて、ぎょっとした顔をする。


「って、血出てるよ!?大丈夫!?」

「え、まじ?」


どうやら額からだらだらと血が出ていたらしい。

全く気が付かなかった…。


近くで顔を見る。

ほら、別に何とも思わねー。大丈夫、ほら大丈夫!


だからさ、かわいいなんて、絶対、


「藤森、ちょっとだけじっとしてて」

「え」


ありえな………




ぺた。

その時、海堂が俺の額に何か貼った。

細い、白い手が俺の視界に入った。


「よかった!すぐ止まりそうだよ。絆創膏も前髪で隠れるし」


そう言って俺の前髪を整える。

ちょっぴり撫でられている気分になって、ドキドキする…。


「……」

「…藤森?」


心配そうな表情で俺をのぞき込む。

俺もゆっくり視線を合わせる。


優しそうな瞳。

ゆるくウェーブがかった髪。

ふっくらした唇…。




だめだ。

かわいい。


かわいい。


かわいい。






キスしたい…っ



本当に無意識だった。


がっ!っと海堂の肩をつかむと顔を海堂の唇に近づけた…。













「…………………ッ」


だけど、あと数センチのところで理性が働く。

本能とぶつかる。

あともう少しなのに…っでも…。


だ、だめだ…。こんなこと、しちゃ…。




「ど、どうしたの?絆創膏、嫌だった…?」


海堂が恐る恐る言葉を発した。

俺はしばらく固まっていたが、


「…………あ、い、いや、」


ぱっと離れて海堂に背を向ける。


「むしろさすがだなって思って!あまりにも完璧に貼るからもっとお前に見せたほうがいいかなーって思って!」


は、はは、ははっ!!

腰に手を当てて大声で笑う。

ごまかすのに必死だった。


「?うん、喜んでもらえたならよかった」


良かったー。とのんきな声で海堂もつられて笑った。


ば、ばれてない…?

内心ほっとした。



「というか待たせちゃったな!ほら、回ろうぜ!」

「うん!あ、じゃあ早速モルモット見に行きたい!」


入り口に向かって戻り始める。

海堂も横に並んで歩き始めた。


「お、おう!じゃあそこから行くか!」

「いいの?ありがとう!」


また笑顔を振りまく。

み、見たら負けだ…。


「藤森」

「な、なに?」

「園内マップさかさま!」

「へっ」


場所を確認しようと広げたマップを見て「あっ!」て叫ぶ。

慌てて持ち直した。




…。

ヤバい。



俺、まじでどうかしてる……。

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