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俺、知ってる!

※このページのみ海堂視点。





「ん…」


ぱちっと目が覚めてた。

飛び込んできたのは天井。


「あれ、ここ家だ」


どうやらベッドで寝てたみたいだ。

上半身を起こして、自分が何やってたかを思い出そうとした。


「俺、何してたっけ。えーっと海に行って、スケッチして、それで…」


そこまで思い出した。でもそれからどうしてたっけ?


何気なく周りを見渡す。

棚の上に見覚えのないものがあった。


「…日本のお城?」


立派なお城の模型が飾ってある。細かい部分までしっかり作りこまれていた。

どこのお城だろう。俺あまり詳しくないからなぁー。


「あれ、というか、あんなの、俺ん家にあったっけ…?」


……。

……。

……。


ここまできてようやく気が付いた。

そして血の気が引く。


「…どこ?」


ここどこ!?俺の家じゃない…!


よく見たら全然違う!

布団の色も、家具の配置も、なにもかも!!


(え、何があったんだっけ!?やばい、本当に覚えてない!!)


「とりあえず布団から出よ…」


とにかく逃げなきゃ…。

俺はきっとよく漫画であるような脱出ゲームに巻き込まれたんだ!

きっとそうだ!

…あれ、それならむしろ楽しそ

「お、目覚めた?」


と、がちゃっとドアが開く。

そして、若いお兄さんが現れた。


「だ、だ、」


誰!?





――――――――――――――――――――――――――――――――――……




「あ、あの、その」


ごくんと、喉から飲み込む音が聞こえた。


「すみませんでした!!ご飯まで出していただいて…。」


口元にご飯粒をつけて、目の前の人はバッと頭を下げた。

大変申し訳なさそうな顔をしている。


机の上にはたくさんのコンビニ食。

カレーやらパスタやら、デザートやら。

何が食べられるかわからないから色々買ってみた。

残ったら明日のご飯にすればいいし。


「いやいや、全然いいんだけどさ、まさか人が倒れてるとは思わなかったわー」


俺は、紙パックの牛乳を開けながらそう言う。


「あ、コンビニ食で悪いな。こんな時間だとスーパーやってなくてさ」


相手は、うっ。と罪悪感にかられる顔をする。


「い、いえ全然…。むしろ本当にすみません…」


そう言いながらご飯をかき込んでいる。

よほどおなかがすいていたみたいだ。


そんな様子を見ながら、気になったことを聞いた。


「で、なんで倒れてたんだ」

「えっ」


あんな時間にあんな場所で。

下手したら誰も気が付かずに時間が経っていたかもしれない。

一瞬自殺…とかよぎったが、こいつの顔を見る限りそういう感じじゃなさそうだ。


「い、いや、その…」


ご飯を食べてた手が止まる。

そしてうつむいて、ためらいながらゆっくりと話し始めた。


「ふと海を描きたくなってあの場所へ行ったんですけど…」

「うん」

「俺、夢中になると集中しすぎちゃうみたいで…」

「それで?」

「今日の日付見る限り3日ぶっ通しで書いてたみたいですね…。食べず寝ずで」


あはは…。と弱弱しく笑いながら、目を泳がせつつそう答える。


「ほう………」


3日、ぶっ通しで、書いてた…?

その間、食べず寝ずで!?


そんなことありえるのか?

聞いていて訳がわからなかったが、こんなに言いたくなかったという表情をしているんだ。

きっと本当なんだろう。にわかに信じがたいが。


「ってそんな顔しないでください!!自分でもおかしいってわかってるんですからー!」


相手の男は、困ったような恥ずかしいような声色で、慌ててそう付け足す。


「いや、別にいいんだけどさ。ヘーソーナンダーって感じで…」

「あぁぁぁぁ。すみませんん…!」


ついには手で顔を覆ってしまった。


世の中いろんな人がいるんだなぁ…。



しゅん……。


手をはずしてもその顔はひどく落ち込んでいた。


あ…やべ。

さすがに傷つけちゃったか!?と焦った俺は話題を変えることにした。


「そ、そういやさ、名前なんて言うんだ?見た感じ歳近そうだけど…」

「え、名前ですか?」


男は若く見える。

それこそ20代前半から中盤と言ったところだろうか。


「俺、藤森っていうんだ」


よろしくと自己紹介を先にする。


「海堂…と言います」

「海堂さんね!持ってたそれ、スケッチブックだよな?よく絵を描くのか?」


海堂さんを連れて帰るとき、握りしめてたものだ。

さっきスケッチしてたって言ってたからきっとそれがその紙なんだろう。


「は、はい。大学も美術系の学部に行ってまして…」

「美術?」


ごちそうさまでした。

そう言って律儀に手を合わせる。

育ちがよさそう。そう思った。


「え、えぇ。昔から絵を描くのが好きだったので…」

「そうなんだ!……あれ」


ふと通っていた大学を思い出す。

唇に手を当ててしばらく考えた後、


「なぁ、もしかして下の名前『修司』だったりする?」


そう聞いてみた。


「え!?」

「あ、いや、間違ってたら悪いんだけど、俺が通ってた大学のホールにさ、花の絵が飾ってあってその作者が『海堂修司』だったんだよな。

確か同じ学年だったかな?」


そう、あれは何の花だっただろうか。

俺、花には詳しくないからわかんねーけど、色の使い方がとてもきれいで、本当に香ってきそうな、そんな透明感がある絵だった。


「俺、あんま芸術とかわかんねーけどその絵だけはなんか印象に残ってて。

同じ苗字だしまさかと思ってさ。ってそんなわけねーよな!」


ははっと笑う。

自分でも何言ってるんだと思った。

だって、そんな偶然…


「…そ、それ、書いたの俺です!」


でもまさかの回答だった。

相手も驚いた表情で自分を指さす。


「へ?ま、まじ?あってんの?てか作者!?」

「あの、桔梗の花ですよね?」

「ききょー?」


海堂がスマホを取り出し、検索した画像を見せてくれた。

紫と白の、まさにこの形の花だった。


「そうそう、これこれ!あれ、…てことは」


ここである事実に気が付く。

海堂もはっとしたようだった。


そして、お互いに指を指しあって、


「「同じ大学!?」」


声が重なった。


「は、はは…!こんなことあるんだなー!まじか!」


驚きと嬉しさとでつい声のトーンが上がる。

それは海堂も同じだったようでどんどん瞳がきらきらと輝きだした。


「確かにマンモス校だったけど、こんなことってあるんだな!」

「俺もびっくりしました!まさか同じ大学の同じ学年の人に会えるなんて」


きゃいきゃいとはしゃぐ俺たち。

一瞬じっと見つめあって。


「な!」


2人そろって照れくさそうに笑った。




それから俺たちはいろいろ話した。


それぞれの学部のこと、あの先生がどうだったとか。

それに、趣味の話など初対面とは思えないくらい、時間を忘れてたくさん話した。



「あ、もうこんな時間か」


ふと時計を見る。時刻は午前1時を指そうとしていた。

そっか、そんな時間が経ってたんだな…、


「わ!すみません、長居してしまって…」

「俺は大丈夫だけど…」


なんか、名残惜しいな。

それは相手も思っていたのか、お互いなかなか立ち上がろうとしなかった。


「あ、そうだ。よければさっき言ってた展覧会一緒に見に行かねーか?」


盛り上がって話題に上がった展覧会の話を持ち出す。

海堂さんはそういう場所に行くのが好きで、気になっていたと話していた。


「え、いいんですか?」

「おう!俺もCMで気になってたし、こうやって出会えたのも何かの縁だろ。

それにせっかく同じ大学の人と知り合えたし、友達になりてーし!」


LINE教えて!とスマホを取り出す。


ぱあぁぁぁぁぁぁっ。

分かりやすいくらいに海堂の周りに花が咲いた。

あわあわとスマホを探し始める。


「こ、こちらこそよろしくお願いしま…あれ、スマホどこだっけ!?」

「机に置いてるぞ」

「あ、ほんとだ」


恥ずかしそうにスマホを手に持つと、照れながら俺を見た。


くすくす。

そんな様子を微笑ましく見ていた。


玄関に向かい、海堂が靴を履く。

真っ白なスニーカーは砂が付いていたが、そんなにじゃりじゃりしてなかったようで安心する。


「今日は本当にありがとうございました」


ぺこりと、深くお辞儀をされる。

やっぱり所作がきれいだなって思った。


「いやいや、俺も知り合えてよかったわ。てかため口でいいし」


同じ年なんだし。俺もそう返す。


「あの、今度お礼を…」


と、海堂がかしこまった顔をしてそう言った。

やっぱり申し訳ないという感じだ。


「いいって!あ、あれなら一緒に遊びに行ってくれるのがお礼でいいし!」

「でも…」

「どこか行けるの、楽しみにしてるな」


実際問題、正直俺は気にしてないし、誰かの手助けができたのならもうそれで十分なんだ。

見返りなんて全然求めてない。

だから、思いっきり笑顔でそう返した。



「うん!俺も楽しみにしてるね!」


そうしたら、海堂も今日一番の笑顔を俺に向けてくれた。



「…………………………………………………おう」



どきん。

なぜだろうか。その笑顔を見た途端、心が跳ねた気がした。


「???」


でも……。

なんか、すげー純粋そう…。

読んでいただきありがとうございます!




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