出会い
10年前。藤森25歳
「う゛ー-------…」
手で口元を抑える。
ワイシャツ一番上のボタンをはずし、ふらふらと道を歩いていた。
周りは真っ暗。
そりゃ、もう21時だから当たり前か。
「飲みすぎた…まじで吐きそう」
今日は先生方との飲み会だった。
俺は若いのとノリがいいこともあり、お酒をいっぱい飲んでしまう。
しかも悪いことに強いのだ、顔にも出ない。酔ってないと思われる。
そして周りがもっと飲みな!と勝手に注文してくる。
「ちょっと調子に乗りすぎたな…まじで気を付けねぇと…」
俺が上の立場になったときは後輩に無理に飲ませるようなことはやめよう。
ぐらぐらする頭でそう誓った。
「って」
ふと、鼻に潮風のにおいを感じた。
横を見るとそこには海岸。海が波の音を立てていた。
「おー海じゃん!!家の近くにこんな場所あったんだ!」
一気にテンションが上がり、酔っていることも忘れて駆け寄った。
実は最近引っ越したばかりでまだ近所を散策しきれてなかったのだ。
砂を踏む。革靴なんてことも忘れてどんどん波際に近づいた。
「ちょっと涼んでくか!」
どさっと座る。
スーツが砂まみれ?そんなもんクリーニング出せば全部解決!
「海っていいよなー。なんか無心になれるっていうか」
風を感じる。ふわっと香る磯の香りに落ち着く。
「心が洗われる感じがする………」
…と、ここで、視界の端に何かをとらえた。
…………ん?
なんか大きな影が横たわっている。
真っ暗なせいで何かよくわからなかった。
でも、好奇心でおそるおそる近づく。
そして、だいぶ近づいたところで気が付いた。
「ひ……」
人が倒れてるー---!!!
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
心の中で全力で叫ぶ。
雲がはけて月明かりが照らした。
その人はうつぶせで倒れてた。
その横をカニがのんきに歩いている。
「ちょ、ちょ、あの、大丈夫ですか!」
さっきまであんなにひどかった酔いはどこへやら。
焦りとパニックで支配される。
てか、生きてる?死んでる?
どっち、どっち!?
「うぅーん…」
その時、何かうめき声を発した。
それを聞いて最悪な事態は避けていたのだとホッとする。
「よかった、死んでない…」
ぐううううううう
みたいだ…?
なんの音だ…?
おなか、の音…?
ぐうううううう
もう一度鳴る。
俺はあきれた顔でその人を見る。
「……」
これ、家に連れて帰っても誘拐にはならねぇよな……?
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