表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/39

知らない世界を覗き見る

「えーっと、ここ、かぁ……………」



ホコリのついてない壁。

しっかり手入れのされた花壇。

鏡のように磨かれた床。


俺は今、メモに書かれた住所の建物の前にいる。


が。


「え、まじであいつここに住んでるの?」


そこは、非常にきれいなマンションだった。家賃も高そうだ。

俺のボロアパートと比較してしまい、頭痛を起こした。


「お坊ちゃまかよ…」


ちょっと嫌みったらしく口に出してみる。


そりゃ、こんな場所に住んでたら俺のアパート見た感想はああなるわな。

ぶっちゃけ、俺以上にボロアパートに住んでたら面白かったのに。



自動ドアをくぐり、部屋番号をインターホンに入力する。


「………」


が、出ない。


「えぇーどうすんだよ。俺、LINEも電話番号も知らねーぞ」


もう帰ろうかと思ったが、連れてかなかったらあの先生が俺を恨む未来が見える。

…単位もらえなかったらまじで困る。



その時、マンションから他の住人が出てくる。


(お、ラッキー!)


俺はついてるとばかりに、何食わぬ顔でエントランスへ進むのだった。




―――――――――――――――――――――――――……





エレベーターに乗って、目的地のある階で降りる。

そして、ようやく扉の前まで着いた。


「あとは、あいつが応答してくれるかどうかだな…」


さっき下で呼び出しても出なかったから、もしかしたら留守中だったかも。

それでも、とりあえず鳴らしてみるかと、インターホンに手を伸ばす。


ボタンに指が触れ、少し力を入れた。


その時。




ガタッ!!


大きな音が中から聞こえた。

それに続いて、何か声も。


なんだろう、何言ってるか全然わからないけど……言い争っているような声…に聞こえる?


「?」


思わず扉に近づいて耳をすます。



(俺、今日そう気分じゃないんだけど!)

(お前の気分で振り回すんじゃねぇ!)


ところどころ聞こえにくいが、そんな感じのやり取りが聞こえる。

1人は市ノ宮っぽい。

もう1人は…?

なんか、すごく怒ってるみたいだ…。



そしてもう一度、ドサッと大きな音がした。



(…まずい!)



とっさにそう思う。

額から汗が垂れる。

無意識のうちに脳が冴え渡った。



俺はノックもせずにドアノブを回していきよく開けた。



「市ノ宮くん!」



走って部屋の中に入る。

不法侵入とか気にしている場合じゃなかった。


(もし、もし何かあってからじゃ…!)


そんな思いで必死だった。




「市ノ宮くん!大丈夫か!助けに来たぞ!」



そう叫びながら、リビングへ続くドアを開いた。

だけど、そこで見たものは…。




「…………へ?」




ベッドの上にいるスーツを着た会社員っぽい男と、


「…!」


その男に覆いかぶさられてキスをされている市ノ宮くんの姿だった。


掴まれた両手首は顔の横辺りで男に押し付けられていて、動けない状態になっている。


市ノ宮くんが瞳だけをこちらに動かし俺を捕らえると、驚いたように目を見開いた。



「あ!?だ、誰だよてめぇ!」


それから男も、突然した俺の声にびっくりしてそう言葉を発した。



「…………え………と…」


更に市ノ宮くんが着ていたであろうシャツは床へ無造作に脱ぎ捨てられていて、ボタンは引きちぎられたのかあちこちに散らばっていた。

白い体が露わになっている。

それにズボンはベルトが外されてチャックも全開。


男の方はなんかめっちゃ息荒いし、唇にむさぼりついてた最中だったから、2人の顔が以上に近い。


わけのわからない状況に頭が固まる。









「は……は………はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」



そして次の瞬間、全力で叫んでいた。



だってそうだろ!?

あれだけ、怒った声聞こえてきたらなんか、もっと暴力的な現場を想像するじゃん!

なのに、実際にはベッドの上でそんなことが繰り広げられているんだから!!



(え?え!?あれ…なにこれ!?

てか、こういうの、あれで見たことあるけど…ほら、アダルトな…ビデオというか…でも、2人とも男だよな!?…えっと……!)



そんなパニクってる俺を見てか、


「はあーーーー…」


と市ノ宮が長いため息をついた。



「おい、無視すんなや!!てめーは誰だっつってんだよ!」


その時、男がもう一度叫んだ。

さっきはだいぶ焦った顔をしていたが、少し時間が経ったせいか、今度は俺を睨んでくる。


「お、俺は…い、市ノ宮の友達だ!」


はっと我に返って思わず問いに答える。


「…」

「…」

「…」


だけど、そう言った途端、なぜかしーんとする。


「………???」









「ぷっあ、あっはははははっは!」

「!?」


男が突然大声で笑いだした。


「な、なにがおかしいんだよ!!」


更にわけわかんなくて戸惑う。

俺、何か変なこと言ったか!?


なのに、相手は苦しそうにまだ笑っていて。

そして市ノ宮くんの髪をぐしゃぐしゃと撫でた。


「あはっはー…和樹まじ?お前友達いたのかよ。ぷっくく…っ」

「余計なことを…」


ぼそっと市ノ宮がそういったのが聞こえた。

その表情はめんどくささMAXって感じだった。


「だ、だから何が…!」

「あのさぁ、和樹のお友達さん。和樹がどんな子か知ってんの?」

「え?ど、どんな子って…」


そんな質問をされるとは思わず、えーっと、と考える。


「み、未成年のくせにたばこ吸う…。学校さぼってる…。あとは…」


そうやって、指を折りながら知っている情報を並べるも、また笑われる。


「そーんなこと聞いてんじゃねぇよ。

ていうかさ、今何してるか見てわかんないかなぁ?」


そういうと男は市ノ宮を背中から抱きかかえる。

細身の市ノ宮は男の腕の中にすとんと納まって。



そして、ズボンの中に手を入れた。



「ちょ、ちょっと…!………ぅっ」


さすがの市ノ宮くんもそれは予想していなかったようだ。

小さく体を跳ねさせると声を漏らした。


「…は、……は?」


お、男同士でまじでなにやってんだよ…。

目の前で行われている行為にクラっと来る。


「和樹さぁ、ちょー頭いい子なのにド淫乱なんだよねぇ。

ねー?和樹ちゃん、エッチ大好きだもんねー」

「え」

「や、やめ…あっ」


強めに握られたのか、甘くて大きい声を上げた。

そんな声が聞こえるたびに俺の脳がガンと殴られる感覚に陥る。


「俺とも、もういっぱいしてるもんねー」


男は楽しそうに市ノ宮くんの余裕のない顔を楽しそうに眺めている。


「ん?てか和樹、ガン勃ちじゃん!」


嬉しそうな、高いテンションでそう叫んだ。

市ノ宮が動揺する。本当に恥ずかしいみたいだ。

視線を斜め下に落として、手の甲で口元を隠す。

顔は赤く染まっていた。


「…!」


そんな様子を見て、男はさらに興奮する。


「そっかそっかぁ!和樹こういうプレイが好きだったのかよー。

お前、ほんと、強引に責められるのも好きだしお友達に見られても勃起しちゃうなんて、ほんとドMだよなぁー」

「ち、ちが…ッ」

「ん-?どの口がいうのかなぁ?」

「あっ、あぁ…っ」


ズボン越しでも、何やってるかわかる行為。

ぐちゅっと音がすると、市ノ宮の体がびくんと跳ねた。


「ね、お友達さん。和樹君はこんな子なんだよ。

びっくりした?あ、ちょっとお子ちゃまには刺激強かったかな?」

「………えと…」

「やっ…」


市ノ宮が男の腕を掴んで抵抗する。

が、あまり力は入らないようで、全く歯が立っていない。


「あっ、はぁ…っ」


顔は熱っぽくもなって、汗が首筋まで垂れていた。

それを男が舐めとる。


「ん…っ」


くすぐったそうに体をよじる。

鼻では間に合わないのか、口で呼吸し始める。

そんな彼をにやりと満足そうに眺める男。


「ね、ねぇ…っほ、本当にやめ…っ」


手は同じ速度で動き続け、市ノ宮君はそれに合わせて息が荒くなって、声が漏れ続けた。

いやらしい音が響く。


「たまには公開処刑ってのもいいなぁ。

ん?このままお友達に向けて発射しちゃおうかー」


男の方は本当に楽しそうだ。全くやめる気がしない。

それどころか触っている手はどんどん動きが早くなって。


「あ、あ、あ、あ、あっ」


市ノ宮君は男の手を掴んだまま抵抗できずに体を快感で震わせていた。




……俺はというと、そんな友人?の乱れた姿を前に顔を真っ赤にして、ずっと固まってしまっていた。

たぶん、脳内処理が追いついてなかったんだと思う。



何もしてこない俺を見て、男はずっと弱弱しく嫌がる市ノ宮の顔を無理やり上に向けて男はキスまでしてくる。


「!…や……っ」


空いてる腕で市ノ宮くんをぎゅっと抱きしめて、暴れられないようにすると、舌まで入れて、絡み合う姿まで見せつけられる。


ちゅっと何度も吸われる音が響く。


「ふっ…うぅ…」


市ノ宮くんの口の端から透明な液が垂れる。




そして、男は俺を見てふっと笑った。




「……………っ!」



それを見た瞬間、俺の金縛りが解けた。


なんか、こいつの笑い方、めっちゃむかつく!!

それに!


「友達が嫌がってるだろ!離せよ!!」



歯をぎりりっと食いしばると、俺はその男を力いっぱい押した。



「……なっ!」


突然すごい力で押され、よろめいてベッドに肘をつく男。

その隙に市ノ宮くんの腕を引っ張って自分の方へ移動させた。


「………ぁっ」


でも、さっきまで快感に溺れていた彼は上手く力が入らず、俺の胸の中で崩れ落ちそうになる。


「おわ!ちょ、ちょっと…!」


慌てて抱きかかえて、そっと男と反対側の壁に寄り掛からせて座らせる。

そして俺が着ていたパーカーをバサッとかけた。


「と、とりあえずそれで隠しとけ!その…色々!」

「………!」



市ノ宮くんがかけられたパーカーを見る。


「…………」


そして、ゆっくり触れた。




その瞬間、その場に俺は崩れ落ちた。


「ぐっ!」


一瞬何が起きたかわからなかったが、すぐにじんじんと痛んで、殴られたとわかった。

上を見上げると、完全にキレてる男の姿が。


喧嘩をする時みたいに、指をボキボキ鳴らして俺を見下ろしていた。


「…てめぇ、ガキのくせに調子乗ってんじゃねーぞ!!」

「ちょ、調子乗ってんのはてめーだろ!おっさん!」


頬を抑えながら、何となく喧嘩を買ってしまった。

余計にぶちぎれた相手が俺の胸倉をつかんでくる。


「あぁ?このクソガキぃ…!

もう一発くらわねーとわかんねーみたいだな!」

「!!」


もう一度同じ場所を殴られる。

その場に倒れこんだ。床に頭を打ち付けてしまい、視界が揺れた。


「う゛っ!!」

「ふ、藤森くん…!」


動けない俺に思わず市ノ宮くんが叫ぶ。


男はその声に反応する。

そんな彼に男は近づいて、


「和樹ぃ…駄目じゃねーか。俺以外の男からそんなお洋服受け取っちゃぁ」

「!」


俺のパーカーに手を伸ばす。

でも市ノ宮くんは、パーカーを抱え込むようにぎゅっと縮こまる。


そんな様子を見た男はさらにイラっとする。


「和樹は裸になってなんぼだろが。

ほら、いい子だからベッドに戻れ。全部脱がせてたっぷりかわいがってやるから」


市ノ宮くんの細い腕を掴んで立たせようとする。











「……ふっ」


その時、市ノ宮くんの口元が笑った。

男が眉をひそめる。


「あぁ?なんか文句でも…」

「文句?そんなのいくらでもあるよこの変態が。

というか、なんであんたの言うこと聞かないといけないの。

気持ち悪いから二度と触らないでもらえる?」


そして、少し低く唸るような声が響いた。

痛む頭をゆっくり動かして彼の顔を見る。

今まで見たことないくらい、氷のように冷たい視線を向けていた。


「か…かず……?」


多分男も見たことがなかったのだろう。

動揺してるのが見て取れる。

動きが止まったのが分かった。



「……う」


まだぐらつく頭を押さえてそっと立ち上がる。

そして、勢いよく男に後ろから飛びついた。


「こ、このガキぃ…!」

「市ノ宮!逃げろ!!」


市ノ宮くんに向けてそう叫ぶ。


「でも…」


彼は驚いた顔をして俺を見た。

藤森はどうなるのか、そう言いたげだった。


「いいから俺は大丈夫だから!ってうわっ!!」


早口でそう付け足すも、意識を男から逸らしたからか、俺は勢いよく振り払われた。

すかさず男が俺の髪を掴んでくる。


「てめぇ!!ぶっ殺してやる!!!」


市ノ宮くんから馬鹿にされたこともあり、もう誰の声も耳に入らないくらい、殺意に満ちた目で俺を睨む。


「や、やれるものならやってみろよ、バーカ!!」


俺も反射的にまた喧嘩を買ってしまった。

その挑発がとどめを刺したようだ。



「言ったな、てめぇ…!後悔させてやるよ…!!」


口元を思い切りゆがめて楽しそうに笑った。

そして、拳を振り上げて。












「すみません、警察です!

隣に住んでいる方から怒鳴り声が聞こえると通報があって来たのですが…」


バンッ!!と玄関の扉が開いて、そう声が聞こえた。



「!!」


男が青ざめる。



「…くそっ!」


そして、そう吐くように叫ぶと俺から手を離す。


ドア付近にいる警察を勢いよく突き飛ばして逃げて行った。












読んでいただきありがとうございます!




この小説を読んで




「面白い!」


「続きが楽しみ!」




少しでも思ったら、↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!




ブックマークもお願いします!


あなたの応援が、作者の更新の原動力になります!




よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ