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当たり前になっていたのに

あまりに衝撃的な発言に思わず固まる。

え、俺の聞き間違いか?

なに、なんで、今別れたいって言ったのか、本当に?


頭の中が一気に混乱する。


「あ……。

あー。珍しくお前から食事のお誘いだと思ったら」


いや、落ち着け。

何とか冷静でいろ、俺。


「何それ」


海堂を見る。

笑ってはいない。冗談…ではなさそうだ。

まぁ、こいつがこんな場面で冗談言えるやつとは思えないが。


「ごめん…」


ぽつりと、本当に小さい声で呟く。

あぁ、やっぱり冗談じゃなかった。


「…理由は?」


そうなったら、とことん話し合うしかねぇ。

そう思い、理由を聞いてみる。


「え?」


なのに、え?だぁ?

まるで聞かれることを予想してなかったかの反応。

まさか、そこまで考えてきてなかったのかこいつ。


「別れたい理由は?」

「あ、あぁ、理由ね。えぇっと、いや、それは…」


数秒後、そうだよね。という表情をする。

でも、なんだ。

めちゃくちゃ歯切れが悪い。


「他に好きな子でもできたか?今度は女の子?」


仕方無しに俺から聞いてみる。

が、海堂はブンブンと思いっきり顔を横にふった。


「じゃああれか?俺の態度が気に食わないとか」


これも同じリアクション。

流石にもうそろそろイライラし始めるぞ。


「じゃあなんだよ」

「え。大した意味は、別に、その、あはは…」


目が泳ぐ。

あまりにもはぐらかすその態度にイライラゲージがどんどん貯まる。


「あのさぁ、海堂よぉ…」


はぁーっと大きな溜息を吐き出す。


「俺たち一体何年一緒にいると思ってんの。

理由も聞かずに「はい、さよなら」ってわけにいかねーだろ」


そうだ。

俺達は10年一緒になるんだ。

なのになんで、そんなに俺に言えない理由なのかよ…。

でも海堂はやっぱりだんまり。

俺も口調がきつくなっていく。


「理由は!?話はそれから…」


ガタッ!


「だ……」


と、口から出た言葉が思わず途切れる。

海道が突然立ち上がったのだ。


「え、なに?」


何かを言おうとしている。

唇が僅かに動くが声が出てない。


「だから、なに!?」

「ご…」

「ご?」




「ごちそう様!!」


そう海堂は叫ぶと千円札を2枚テーブルに叩きつけて店から走り去った。


「なになに?」

「けんか?」


その様子を見てた他の客がひそひそ話し始める。

俺はただ唖然としてしまい、開いた口が塞がらない。


そして、ハッとして心のなかで叫んだ。



(か、


帰ったー!!!)




――――――――――――――――――――――――――……




ありえねぇ。

ありえねぇ。

ありえねぇ。


家に着き、カバンをベッドに放り投げる。


ありえねぇ。

ありえねぇ。

ありえねぇ。


タバコを口に加えて火を点ける。

カチンカチンとなかなかライターが点火しなくで余計にイライラする。


「ありえねぇ!!」


そして、ついに叫んでしまった。

自分で自分の声のでかさにびっくりする。


でも、だって!!


「誘っといて先に帰るやつがあるか!!」


俺、本当に嬉しかったんだぞ!

受け身の海堂がご飯に誘ってくれたこと!

なのに、まじで意味分かんねぇよ!


ちらっと机の上の写真立てを見る。

そこにはずっと昔、付き合って2年位の時の写真が飾ってあった。

ライトアップされた遊園地をバックに2人でくっついて自撮りした写真。

そういえば、海堂が迷子になって必死に探したっけ。


今はその無邪気な笑顔に癒やされる余裕がない。

ドサッとベッドに座る。


あいつとはもう長い付き合いになるがああいうことされると本っ当に解釈に困る!


「い、いや、さっさと帰りたくなるほど俺と別れたいって考えるのが妥当か?」


その発想に、うっと青ざめる。


ていうか、なんで突然別れたいなんて言い出したんだ?

俺、何かしたか?


色々考えるがわからない。

もしかしたら俺が気づいてないだけで、海堂の中に不満が溜まってたのかもしれねぇけど…。


「にしてもなんで理由言わねぇんだよ……」


それも意味わからない。

普通なんて言うか用意してくるだろ。

なのに、あの「そんなこと聞かれると思いませんでした」って顔。

抜けてるどころの話ではない。


「あーくそ!!」


ばっと立ち上がる。

火を点けたばかりのタバコを灰皿に押し付ける。


「別れたいなら別れてやるさ!どこへでも好きな場所へ行けばいい…」


ラインを送りつけようとスマホを手に取る。

でも、


(…別れるのか、本当に?)


メッセージを入力しようとしてピタリと手が止まった。


「なんで…なんだよ……」


もうすぐ付き合って10年経つのが本当にうれしかった。

あいつがいるのが当たり前になっていた。


この先もずっと一緒にいるのが当たり前だと思ってたのに。


海堂は、初めて会った日のことを覚えてるのだろうか。


俺たちが出会った10年前のことを。

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