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知らない内に起きた知らない出来事

「い、市ノ宮……?」


その名前を聞いて、頭が?で埋め尽くされる。


なんで、なんであいつの名前が出てくるんだ?

だって、別に海堂と市ノ宮は接点が無いし、10年前ホテルの件以降会うことも無かったはずだ。


確かに、市ノ宮は仕事の関係でしばらく日本に滞在するとは前に聞いていたけど…。


「海堂…どういうことだ…なんで、お前、市ノ宮と会ったんだ?約束してたのか?」

「え、えと…うう、ん…偶然…かな…」


目を伏せながら、そう答える海堂。

そして、ぽつぽつと話し始めた。








―――――――数週間前



ここは街の中でも大きな本屋さん。

俺は美術関係のエリアにいた。


「えーーっと、確かこの辺りにあるって言ってたけど…」


今日はお目当ての本がこの書店にあるという情報を受けて探しに来たんだ。

でもなかなか見つからない。

確かに出版日は随分と昔だし、もともとそんなに出回っていない専門書だけど、ファンの人が教えてくれた情報だ。

だからきっと、ううん、絶対あるはず…!


「うーん…」


同じところを何度もうろうろする。

そのうちに、


(あ、あれだ!)


ようやく一番上の棚に1冊だけあるのを見つけた。


やっと見つけられた嬉しさから口元が緩む。

そして、手を伸ばして本を取ろうとした。




だけどその瞬間、もう一つ手が伸びてきてその本を掴んでしまった。


「あっ!」


思わず声が出る。

そんな、ようやく見つけた本だったのに……。


すると俺に気が付いたようで、


「あぁ、すみません。これ取ろうとしてましたか?」


すっと、本を差し出された。

そしてその時、お互いが顔を見合う。


「あ、ありがとうございま………?」

「……………………!」


俺と目が合った瞬間、相手が大きく見開いた。

そして、すぐに顔が曇る。


(あ、あれ…この人どこかで)


俺もなぜか彼を見て心がざわついた。



その人は、綺麗な黒髪、肌は色白で、すらっとした体形はスーツを着こなしていた。



そして。


「…………海堂…さん…」


少し低い声でそう呟いたのが聞こえた。


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