俺の恋は報われない
ちゅんちゅん…
「ん…」
雀の鳴く声がする。
朝………
寝ぼけた顔で上半身を起こす。
大あくびを1つすると、ぽりぽりと頭をかいた。
えぇっと、なんだっけ、どうなったんだっけ。
昨日は確か。
海堂が家に来て、シャワー浴びて、泣いて、キスして、抱きしめて、思いを伝えて…
それから……お互いのぬくもりを感じて…。
床を見ると俺の服が散らばっていた。
拾い上げて服を着る。
がたっ
その時、部屋の隅から物音がした。
無意識にその方向を見る。
「…!海堂!」
視界に入った人物を見て一気に目が覚めた。
ぱあぁっと表情も明るくなる。
そして、
「おはよう!」
と元気よく挨拶をした。
「…っ!」
声が大きかったのか、びくっと反応する。
海堂はすでに服を着ていて、なぜか部屋の隅っこで体育座りをしていた。
自分の体を小さく見せようとしているようだった。
そんなことを気にも留めずカーテンをシャッと開ける。
嵐は去ったようで、まぶしい朝日が部屋に降り注いだ。
「おっ?服乾いたか?雨も上がってるっぽいしよかった」
外を眺めながらそう言う。
海堂は黙ったままだった。
次に海堂のもとへ歩み寄る。
そして、俺もしゃがむと海堂の顔を愛おしげに見つめる。
「てか、その……腰とか大丈夫か?わりぃ、あんま手加減とかできなくて…」
へへっと照れ笑いをして、そっと彼の頬に手を伸ばして…
「…っさ…触るなぁ!!」
海堂が叫んだ。
「へっ?」
あまりに突然、大声で叫ばれて思わず手を引っ込める。
頭が混乱する。
触るなって、今そう言ったのか!?
「…なんで、なんであんなことしたんだよ…」
海堂はゆっくりと立ち上がる。
そして俺を見下ろしてキッと睨みつけた。
俺の額から汗が垂れる。
「お、俺、他人に裸見せるの初めてだったのに…っあずさともそういうことしたことなかったのに…!」
怖い顔をしているのに、涙がぼろぼろと零れ落ちる。
顔が真っ赤だ。
「かいど…」
「男同士でこんなことになるなんて思ってなかった!!しかも好きだなんて同性に使う言葉じゃないじゃん!!」
「な、何言って…」
何言ってるんだよ、海堂…?
「藤森のこと、本気で信頼してたからここに来たのに…」
嗚咽で言葉がいったん途切れる。
少し過呼吸気味にもなっているのか、時折苦しそうな顔をする。
それでも、大きく息を吸い込むと、
「からかうなんて…ひどいよ!」
そう、部屋に響かせた。
「なっ…!!」
あまりの予想していなかった展開にショックで言葉が出ない。
頭がパニックを起こしてどうしたらいいのかわからなくなった。
でも、違う、そうじゃない!そうじゃないんだよ!!
「か、からかってなんかねーよ!!俺は本当にお前のこと…」
俺も勢いよく立ち上がる。
そして海堂の肩を掴んで、視線を奪う。
「!!」
海堂は恐怖に支配された表情をしていた。
涙がとめどなく溢れている。
「や、やめて…」
ぐいっ!
胸のあたりを力いっぱい押された。
そして…
パシンっ
乾いた音が部屋に響き渡った…。
一瞬何が起こったのかわからなかった。
でも、徐々に頬がじんじんと痛んでくる。
震える手でその場所に触れた。
「ご、ごめん…っ」
海堂の声も震えている。
「でも、でも!藤森なんか、藤森なんか…っ
大っ嫌いだ!!」
そう吐き捨てて、海堂は家を走って出て行った。
遠くでばたんと聞こえて、何も聞こえなくなった。
「は、はは…」
口から勝手に声が漏れた。
あぁ、俺なにやってんだろ。
今なら想いが通じるなんて思って。
その結果、さらに傷つけて。
「はは、バカじゃん…」
壁にゆっくりもたれかかり、ずるりとそのまま崩れ落ちた。
「俺、まじでただの大バカ野郎じゃん…」
結局。
俺の恋は報われない。
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