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【本編完結】笑い話に悪意を込めて  作者: ぽんぽこ狸


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18/48

18 母親代わり




 サンドラはその後、せっかくの可愛いお揃いの衣装を見せびらかすためにお姉さまたちの仕事や親戚つながりの貴族たちに挨拶に向かった。


 彼らの反応はいろいろあったがおおむね良好でその中でも数名、サンドラを嫁に貰いたいという男性を紹介された。


「サンドラ様が私の元に来てくださったらどれほど心強いか、ぜひご一考を!」


 年下の青年にはそう言われ。


「君のような強い女性がタイプなんだ、良ければ一曲だけでも」


 年上の見知らぬ男性にもそう言われ。


「私のような爵位継承者に声をかけてもらえたことを光栄に思うのだな!」


 と突然言われた時には多少睨みつけた。するとその男はそそくさと去っていく、その偉そうな様子に若干アントンを思い出して腹立たしくなった。


 そういえば彼を見かけないと思ったら、どうやらあれ以来社交界に参加していないらしい。


 笑いものにされたことが恥ずかしくて仕方がないのだろう。もうしばらくは引っ込んでいて欲しいと思った。



 

 後日、ケインズ男爵家の若奥方レベッカから手紙が届いたとユスティーナに呼び出されその内容を聞いた。


 あれから、意気消沈したケインズ男爵夫人をジェレミーは連れ帰り、ほかの貴族から話を聞いたレベッカも長男のジェフリーとともにケインズ男爵家のタウンハウスにやってきた。


 そこでは今まで離れて暮らしていた理由、どういった失礼なことが二人の心に傷をつけていたのか、ジェレミーがどういった思いで母を見張っていたのか、たくさんのことが話し合われたらしい。


 今まで、失礼なことを言っても多くの人はケインズ男爵夫人に対抗せずに出来るだけ流すような形にしていた。


 それは全員がまぎれもない大人で、食い下がって悪意に悪意で返しても多くの場合むきになって笑われたり、お互いに痛い目を見たりしてデメリットがある可能性があるからだ。


 だからこそ放置していた。


 そこで、いつもの通り今度はユスティーナを標的にしたケインズ男爵夫人はこっぴどく仕返しをされて、ここぞとばかりに、全員で彼女を矯正するべく対策を練り言葉を尽くしたらしい。


 そうすることができたのは、きっかけを作ってくれたカルティア公爵令嬢たちなのだと、言う言葉で締めくくられて、お礼の品とそれから、彼女を放置していたことへの謝罪も添えられていた。


 彼女たちとならユスティーナも楽しくやっていけるだろう。


「よかったですわね、ユスティーナお姉さま、わたくしお姉さまが突然帰ってきたときは婚約解消かと思いましたわ」


 つい自分がそうなると、彼女もかと考えてしまうもので、心配していたのだ。


 婚約者とは仲がよくてもうまくいかないなんて可哀想だけれどそういうこともあるかもしれないと思っていた。


 うまくまとまりそうで嬉しい。


 にっこり笑うと彼女はうっと瞳を潤ませて、そっとソファから立ち上がってぱたぱたと黒髪を揺らして駆けてくる。

 

 それからひしっとサンドラに抱き着いた。


「ああ~。わたくしのサンドラが天使ですわ! それもこれもサンドラのおかげよ、わたくしの可愛い妹!」


 いつもの調子でぎゅーと胸に抱かれてサンドラは優雅ではないその様子に仕方のない人だと思う。


 今は仕事で不在のレイラやラウラがいたら、二人はずるいずるいとサンドラのことを取り合ったに違いない。


「サンドラは昔から利発で賢い子だとは思っていたけれど、ついにサンドラに助けられる日が来るとはね。なんだかお姉さまは胸がいっぱいですわ」


 笑みを浮かべて彼女はサンドラの頭をなでる。


 その様子は見慣れたもので、物心ついた時から母のいなかったサンドラにとってこうして愛情を与えてくれる相手は、いつも彼女たちだった。


 母のように感動する彼女の気持ちも大袈裟なものではない。


 けれどもこの程度で感動されては困るのだ。サンドラはこれからまだまだどんどんステップを踏んで大人になって立派になる予定だ。


 そうしたらサンドラを支えてくれた彼女たちをサンドラも支えて行く。


「あら、まだまだその程度で感動されては困りますわ。わたくしは今後、お姉さまたちを余裕で助けられるぐらいの大物になりますもの」


 そう言うとユスティーナはさらにきつくサンドラを抱きしめて、そろそろ、苦しくて抜け出したくなったが、今回ばかりは仕方ないと受け入れる。


 それから自分も早く有言実行できるように良い相手を探さなければなと思ったのだった。




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