い つ か ゆ う し ゃ に こ ろ さ れ る
私は気が付いた時から魔王の間に腰かけていた。私は生まれながらにして魔王なのだ。そのことは疑いようもない。
ある時から私の生きる世界には奇妙なことがおこるようになった。不意に意識が途絶えたかと思うと、意識が戻った時には、時間が巻き戻っているのだ。
部下たちに聞いても、彼らは時が巻き戻ったことすら知らない。私はその時から、言いようのない不安を感じ続けてきた。
ある時、勇者と名乗るものが私を倒しにやってきた。私はそいつと戦い、勝った。だが、私が勝ったと思った瞬間、時が巻き戻っていたのだ。
そうしてまた勇者がやって来て、私たちは戦い、私が勝利した。するとまた時が巻き戻る。そうなると私は悟ってしまった。この勇者というものは私を殺すまで何度でも時を巻き戻すことができるのだ。
二度の戦いの後、勇者はどこかに去ってしまった。何をしているのか。どこかで私を倒すための準備をしているのだろう。
ああ、あの勇者が私を倒すことを諦めてはくれないだろうか。私と戦うことに飽きて、どこかで別のことをしていてくれないだろうか。でなければ私は。
い つ か ゆ う し ゃ に こ ろ さ れ る