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デート(7)

月の夜の対話


カゲロウの想い

 気がついたら私達は待ち合わせ場所にしていた騎士の銅像のあるところまで来てきた。

 いつのまにか満月が浮かんでいる。

 月ってこんなに綺麗だったっけ?

 騎士の銅像の前に来るとカゲロウは私の手を離す。

 何故かそれが寂しいと感じた。

 カゲロウは、私の方を向く。

 そして鳥の巣のような髪に隠れた目で私をじっと見る。

 私は、頬が熱くなるのを感じる。

「必要だから」

「えっ?」

「うちの店にお前は必要だ。お前がいるからマダムもみんな来てくれるんだ。お前に会いたくてお前と話したくて来てるんだ・・」

 必要・・・。

 私が必要?

「本当に?」

 私の声は自分でも何で震えてるのか分からないくらいに震えていた。

「ああっ必要だ。それに・・・」

 カゲロウは、再び私の手を握る。

 自分の指と私の指を絡め私の顔の位置まで上げる。

「俺は料理人だ」

 そんなのは知ってる。

 貴方は最高の料理人。

「料理人は常に手を清潔に保つ。決して汚いものには触れない」

 知ってる。

 貴方は、仕事前、仕事中だっていつも綺麗に手を洗ってる。

「だからお前の手は穢れてない!」

 ・・・えっ?

 私は、呆然とカゲロウを見上げる。

「お前は綺麗だ。誰よりも綺麗だ。だから・・必要ないとか言うな。穢れてるとか言うな!分かったな!」

 この感情を何と表現すればいいのだろう?

 この熱く、痛く、そして心地よい感情は何?

「わ・・・」

 私は、溢れそうな感情を抑えて何とか口を開く。

「私は本当にいてもいいの?」

 あの場所に・・・貴方の所に?

 カゲロウは、小さく、そしてはっきりと頷く。

「ああっ。これからも頼むぞ。エガオ」

 私の目から一筋の涙が落ちたのが分かる。

 そして小さく、本当に小さく唇と頬が上に持ち上がったことも。

「はいっこれからもよろしくお願いします。カゲロウ」

 私は、今この瞬間の想いを、喜びを決して忘れない。

エガオの中に芽生えたものとは・・・

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