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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界転生・転移の文芸・SF・その他関係

異世界転生した先で高い税金をぶんどられるので、対抗していく事にした

「高いねえ」

 さっ引かれる税金の多さに呆れる。

 もはや憤りなど通り越して笑うしかない。



 地下迷宮と怪物のはびこる、産業革命前のような世界。

 そんな世界に転生してきた男は、生きるために迷宮に挑んでいる。

 探索者と呼ばれるこの職業について10年。

 大きな成功を求めず、安全第一でやってきた。

 おかげでそこそこの生活が出来るようになった。

 なのだが。



「こうも色々引かれるとなあ」

 税金の大きさには辟易するしかない。

 なにせ、税率50パーセント。

 稼ぎの半分が強奪される。

 怪物から国土防衛をするためだとか、生活基盤をととのえるためだとか。

 理由は色々だが、それらが実施されてる気配はない。

 少なくとも、それとわかるほどの効果は感じない。



 どれだけ稼いでも出費が大きくなるだけだ。

 働くのが馬鹿馬鹿しくなる。

 食っていくためには、働いて稼がねばならないのはわかってるが。



 10年前はこうではなかった。

 稼ぎの30パーセントが税金だった。

 これはこれで高いと思ったが、まだ生きていけた。

 しかし、今はかなり厳しくなっている。



 さすがにやっていけない。

 そう思った転生者は生き残るために出来る事を始める事にした。



 ようは帳簿に残らない取引を行えば良いのだ。

 その為の伝手を作っていく。

 商人に農家に工房。

 これらの中で話にのる者達を探していく。



 話を付けた者達とは、迷宮で手に入れた魔力結晶で買い物をする。

 怪物を倒すと手に入る魔力の塊。

 これを売却する事で探索者は稼ぎを得ている。



 だが、そもそも金銭に換金するのが手間だ。

 そんな事をするより、魔力結晶そのものを通貨として扱った方が楽。



 だいたい、換金する時に税金が差し引かれるのだ。

 これでは金銭にする意味がない。

 直接取引出来た方が利益は大きい。

 そうしなかったのは、世界各国に出回ってる通貨が便利だったからだ。

 世界のどこに行っても使える、支払えば商品が手に入る。

 そんな通貨はなんだかんだで便利な道具だ。



 なのだが、そうも言ってられなくなった。

 とられる税金が多くなれば、稼ぎがその分減る。

 生活に関わってくる。

 もう便利だなんだと言ってられない。

 通貨がそもそも不便なものになってきてるのだから。



 そんなわけで、金銭のかわりに魔力結晶を直接持ち込んで取引するようにした。

 換金可能な物なので、取引相手も悪い顔はしない。

 だが、多少は割高での取引になる。

 だいたい1割くらいは値段に上乗せだ。

 それでも構わなかった。

 税金としてとられる50パーセントがないのだ。

 手元に残る金(というか資産か?)は以前よりはるかに多くなる。



 こうした取引を続けていく事で、転生者の暮らしぶりは良くなった。

 どうしても金銭が必要な場面もあるので、多少は換金しなくてはならないが。

 それでも、手元に残す魔力結晶は今までより多くなった。

 実質的な金銭が増えた事で、転生者の暮らしぶりは以前より良くなった。



 それを見て真似する探索者も出て来る。

 そういう者達に転生者は快く真相を話していった。

 もちろん、口の堅い者を選んで。

 露見したら面倒になる。



 その条件を満たしているなら、誰にでも分け隔て無く何をしてるかを伝えていった。

 共犯者を増やすためである。

 ばれたらただでは済まない。

 何せ、脱税なのだ。

 王侯貴族などの支配者からすれば、自分の収入を無くすようなものだ。

 他のあらゆる事を見逃しても、脱税を絶対にみとめない・許さないのが統治者である。

 それでも脱税に走れば、嫌でも共犯者になる。

 転生者からすれば、仲間が増える事になる。



 そんな取引は他の業者も真似するようになる。

 どこも税金が大きくて大変な事になってるのだ。

 納税する必要がないなら、喜んでその方法を使う。



 納税の義務など知ったことではなかった。

 国を支えるためだとかいうが、そんな事どうでもいい。

 まずは自分の命が、生活が大事である。

 それを損なうような税金なぞ、支払う理由は無い。



 金銭は社会で生きていくために必要なもの。

 水や食糧と同じくらいの価値がある。

 金銭を使って生活の糧を手に入れるからだ。



 そんな金銭を奪っていく者は強盗の類いでしかない。

 国を名乗るか、盗賊を名乗るかの違いしかない。



 そういった者達から身を守るためだ。

 国よりもまず自分の命と生活である。

 脅かすというなら、対抗するだけの事。



 そんな通貨の代わりになるものがあるなら、それを流通させるだけ。

 魔力結晶という価値のあるものを使って取引していく事になる。



 もちろん、貴族や領主はこの事に気付いていく。

 納税額が一気に減ったからだ。

 何かがあると思って捜査に乗り出す。

 理由はすぐに見つかった。



 ただちに貴族・領主達は取り立てようとした。

 金銭の代わりに魔力結晶を使ってるなら、支払った魔力結晶の数と質をもとにして納税額を計算するだけ。

 金銭とは別の形で徴収するだけである。



 しかし、そんな事をした貴族や領主は、全て殲滅されていった。

 探索者達がこれらに襲いかかり、居城を破壊、一族郎党を皆殺しにした。

 とんでもない事である。

 露見したら騎士団などの軍勢が動く。

 しかし、この襲撃を指揮した転生者は分かりやすい言い分けをでっち上げた。



「迷宮の大暴走が発生しました!」

 近隣の貴族や領主にそう伝えていった。

 迷宮の大暴走とは、怪物が迷宮から大量にあふれ出てくる事だ。

 滅多に起こらないが、発生すると近隣に甚大な被害をもたらす。



 迷宮に入って怪物を倒してるのはこれの対策でもある。

 間引きをして数を減らし、大暴走が起こる可能性を減らしているのだ。

 それでも完全に防ぎきる事は難しいが。



 この大暴走のせいにして、貴族や領主への襲撃をうやむやにした。

 跡形もないほど徹底した破壊をされてしまえば、証拠も消える。

 調査しようにも真相解明など出来るわけがない。



 念入りにも、貴族・領主の館・居城だけを襲ったのではない。

 迷宮周辺の地域も徹底的に破壊した。

 もちろん、住人は全員避難させていた。

 破壊したのは建物だけだ。



 もちろん復旧は大変だ。

 しかし、余計な調査をされないようにするにはこうするしかない。

 しばらくは再建のために多大な出費をする事になる。

 それでも、貴族や領主、ひいては騎士団などの軍隊との衝突よりは良い。



 同じような事を、他の迷宮周辺でも起こしておく。

 魔力結晶による直接取引はそれなりに広まってきている。

 あちこちの貴族や領主が調査して対応をしようとしていた。

 それらを可能な限り殲滅する。

 大暴走で全てが破壊されれば、調査どころではない。



 各地で転生者に賛同する探索者が合流してくる。

 それらと共に貴族・領主を殲滅していった。

 迷宮で怪物と戦い、レベルを上げた探索者は強い。

 貴族や領主であっても、守備兵だけで対抗は出来ない。



 こうして邪魔する連中を根絶やしにして、転生者達は納税という強奪を粉砕していった。

 さすがに国もこれらに下手に手を出せなくなった。

 下手に動き出したら、あちこちの町や都市が破壊される。

 さすがにそれは避けたかった。



 とはいえ何もしないわけにはいかない。

 事の次第を調べ、真相を少しでも調べていく。

 頻発する迷宮の大暴動が、本当に怪物によるものだとは誰も思ってない。

 何か裏があると統治者達は考えていた。



 そして、状況証拠から何が原因なのか、誰が首謀者なのかも把握していく。

 転生者が中心人物だと判明するのに、それほど時間はかからなかった。

 それを見て、交渉のための使者が派遣された。

 なんとか手を打つために。

 納税は無理でも、せめてこれ以上の騒動をやめてもらうために。



「なるほどね」

 転生者は言いたいことを理解した。

「じゃあ、死ね」

 使者の首を全員切り落とした。



 ここで何もしないと言えば、その間に国は準備をととえる。

 転生者達に向けて軍勢を送ってくる。

 たいていの和平交渉とは次の侵攻の為の時間稼ぎだ。

 しかも、相手に何もさせないよう、軍備をととのえさせないようにするための。

 そういった意図を読み取った転生者は即座に行動に移った。



 さすがに王都に直接攻撃をしかけるわけにはいかない。

 その周辺の城塞や主要都市から破壊していく。

 国力を下げるためだ。

 短期的にはさほど効果はないが、長期にわたって継続的な損害を与えることが出来る。

 その為に、主要な政府施設を次々に襲撃していった。



「わかった、わかったから!」

 再度、政府の使者が送り込まれる。

「そちらの要望を聞く。

 税金も下げる。

 だから、止まってくれ」

「うるせえ」

 再び首を切り落とした。



 もう遅いのだ。

 税金を元に戻しても。

 一度動いた転生者達を統治者達は決して見逃しはしない。

 時期を見て必ず攻撃を仕掛けてくる。

 それがわかってるのに和平を結んでどうするのか?

 もう統治者を根絶やしにするしかないのだ。



 そもそも、税金を簡単に上げるような連中である。

 納税する者達の負担など考えてるわけがない。

 そんな連中が今更殊勝な事をするだろうか?

 するわけがない。



「良い機会だ」

 人々の生活を無視して負担を強いる連中。

 そんなのは消えた方がよっぽど良い。

「この機会に皆殺しにしよう」



 その後、多少の時間はかかったが、転生者は王侯貴族を皆殺しにした。

 その側近達も同じように殲滅した。

 関係者が残っていると、後で復活する可能性がある。

 そうならないように徹底的に殲滅した。

 飼っていた犬や猫、馬まで処分対象にする程に。



 そうまでしないと後に禍根を残す。

 これまた前世で学んだ事である。

 やるからには徹底しないといけない。

 下手な情けは大きな災害となって返ってくるのだから。



 この甲斐あってか、問題は完全に根絶やしに出来た。

 高い税金に根を上げる事はなくなった。

 税金をとりたてる者が消えたのだから。



 ただ、政府がないとそれはそれで不便だ。

 しょうがないので、転生者は臨時の政府代表として、制圧した地域を統治していく事にした。

 代わりが見つかるまでの暫定措置として。

 権力には興味がないし、自分が統治者の器だとも思ってない。

 なので、当面の間だけ政府の真似事をする事にした。

 幸いにも、レベルの高い人材がいるので、立ち上げに苦労はしなかった。



 そうして仮政府を作って運営してみてわかった事がある。

「税金、50パーセントもいらないじゃねえか」



 どう計算しても、30パーセントあれば充分だった。

 莫大なお釣りがくる。

 必要な事をやるだけなら、税率20パーセントで良い。

 これでもそれなりのお釣りが出て来る。

 もっとも、ギリギリで運営してると、緊急の出費があった時に困る。

 余裕はあった方が良い。



 それでも、30パーセントでも取り過ぎに思えた。

 こうなると不思議に思えてくる。

「いったい何に使ってたんだ?」

 足りない足りないといって税率をあげたはずである。

 その分はどこに消えたのか?

 今となっては謎である。



 だが、仮政府はとりあえず動いてる。

 それで充分だった。

 あとは人を育ててさっさと仕事を丸投げするだけ。

 その為にも、後継者候補達を迷宮に放り込んでレベル上げにはげませている。

 必要な能力を獲得させるために。



「早く成長してくれ……」

 やってみてあらためて思う、自分にこの仕事は向かないと。

 片付ける事はできるが苦痛しか感じない。

 それを受け継ぐ者が一秒でも早く成長するよう願いながら、転生者は作業を進めていく。

 やっちまったんだから、最後まで責任をとらないと、と思いつつ。

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あと、異世界転生・異世界転移のランキングはこちら

知らない人もいるかも知れないので↓


https://yomou.syosetu.com/rank/isekaitop/

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