目覚め
朝、ローザモンドはベッドで目を覚ました。
しかし、彼女に昨晩ベッドで寝た記憶は無い。何故なら、ベッドはクールベアトと名乗る男に譲ったから。では、そのクールベアトはどこに?
違和感に気づいたローザモンドは慌てて飛び起き、部屋の扉を開けた。
「あ、おはよう。寝れた?」
慌てたローザモンドと対象的に呑気に台所に立つクールベアトは、フライパン片手に料理をしていた。振り返って挨拶をすると、すぐに元に戻る。
「いっぱい寝たからかな、早く目が覚めちゃって。取り敢えず部屋から出てみたらローザモンドが床で倒れててさ。びっくりしちゃったけど寝てたみたいだったからベッドに運んじゃったんだ。大丈夫だった?」
「・・・余計なお世話よ」
「確かに、そうかもね。でも、いくら魔女だって言ったって身体は大事にしないとだめだよ?」
「だから、余計なお世話なのよ!!」
寝起きで叫んだからか、しゃがみこみ咳き込むローザモンドを見て慌ててフライパンを火から降ろし駆け寄り、背中を擦ろうとするクールベアトを、彼女は振り払った。そのままキッと睨んだローザモンドは、何かを思い出したように頭を抑える。寝癖のついた髪を覆うフードが、無い。
慌てた様子でフードを被るが、おそらくクールベアトは見ただろう。
「・・・見た?」
震えた声を振り絞るローザモンドに、クールベアトは少し微笑んで頷く。
「忘れて欲しい」
「うん。ローザモンドがそういうのなら。・・・朝ごはん作ったんだ。一緒に食べよう。」
しゃがみこんだままのローザモンドに差し出された手を、彼女は下を向いたまま取った。その手は、あまりにも細く、白かった。