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谷底の恐怖

 真っ逆さまに谷底へと落ちていく途中、ふいに腕を強くつかまれ、誰かに引き寄せられた。

 硬い胸元と両腕に、がっちり頭を抱えられる中、ヴィクトリアはもごもごと呪文を詠唱する。

 すると、下から猛烈な風が吹き上げて、落ちるスピードを和らげた。

 ヴィクトリアを抱えた誰かも浮遊魔法を唱えたようで、二人とも地面にたたきつけられることなく、ふわりと着地することができた。



「大丈夫ですか?」



 頭の上から気遣う声が聞こえて顔を上げる。

 暗がりになれてきたヴィクトリアの目は、無表情のロイドを映し出した。


「あ、ありがとうございます。ロイド様」


 ロイドは頷くと、体を離して上を見上げた。



「かなり落ちましたね」

「ごめんなさい、私のせいで」

「いえ」

「登れるでしょうか」

「どうでしょう」言いながら、ロイドは魔法炎を焚く。


 真上にあるはずのつり橋が、ここからでは全く見えない。


「浮遊魔法を使ってもこの高さは厳しいと思います。それよりも、この広い谷底を探ってみましょう。どこかにつながっているかもしれません」


 ロイドの提案にヴィクトリアも頷いた。


「おーい! おまえら」


 歩きかけた時、頭上からレイモンドの声が響いた。


 レイモンドもつり橋から飛び降りたようだった。

 浮遊魔法を使って二人の目の前に着地した途端、ヴィクトリアに向かって怒鳴った。


「このばか! 不注意にもほどがある!」

「ごめんなさい。つい」

「怪我がなけりゃいいけどよ。全く、胆が冷えたぜ」 


 レイモンドはぶつぶつと文句を言いつつ、ヴィクトリアの頭をポンポンと叩いた。



 谷底を少し歩くと、水の湧き出る場所についた。

 ぷくり、ぷくりと岩の隙間から水が湧きだし、ちょろりちょろりと、か細い小川になって流れていく。

 三人は立ち止まり、小川で喉を潤した。



 ふいに右手の袖をつかまれて、ヴィクトリアは隣に立つレイモンドを見上げた。


「レイ? 怖いの?」

「は? 何言ってんだ、お前」

「だって、私の服の袖をつかんでるでしょ?」

「袖?」


 レイモンドは両手をヴィクトリアの前に揚げてみせる。

 ロイドは、目の前に背中を向けて立っている。



「じゃあ、この手は……」



 ヴィクトリアは恐る恐る振り返り、短く悲鳴を上げた。



「ひっ! ケガレ人!!」

「ケガレ人だと!?」



 レイモンドも同時に叫ぶ。 


 ヴィクトリアはとっさに手を振り払い、レイモンドが退魔法を放った。

 轟音とともに、ケガレ人は近くの岩に叩きつけられた。

 轟音が収まると、土埃の向こうに、きらりといくつもの赤い何かが光るのが見えた。

 

「うそだろ、おい……!」

「あれって! 数十人はいるわ!」


 赤い光はケガレ人の目だった。 

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

ブクマ、評価などもありがとうございます!

今後もお暇なときがあれば、お付き合いくださいませ。

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