危ないつり橋
その岩谷には、つり橋がかかっていた。
ロープのみで作られたそれは、ずいぶん心もとなく、人一人分の体重さえも支えられなさそうに思えた。
ヴィクトリアが無言で眺めていると、ロイドが言った。
「前回もこの場所を通りましたが、このつり橋は男三人が同時に乗っても問題なく渡れます」
「そんな頑丈にはとても見えないけれど。あなたの言うことは信じるわ」
ヴィクトリアはにっこりと笑って答えた。
レイモンドは跪き、足元を検証している。
「ここにはもう轍の跡は残されていないな。もっとも、途中からずっと硬い岩肌を通ってきたから。足跡なんか残らないだろうが」
「ずっと一本道だったわ。必ずここにたどり着いているはずよ」
「何らかの魔方陣で発動する仕掛けが施された抜け道や、結界かなんかで隠されていた脇道なんかがある可能性も否定できないぜ。俺らが発見できないような高度な魔法がかけられていたとか」
「そうね」
そういいながらも、内心ヴィクトリアはその可能性を否定していた。
魔法や結界というものは、どんな達人が施したところで、必ず何らかの痕跡が残る。その痕跡は、そうやっても決して消せない。
そのわずかな違和感を掬い取ること。
これはヴィクトリアの特技の一つだ。
轍の跡を見つけてから、この岩谷までの道のりで魔法の痕跡は見当たらなかったと断言できる。
ギシ……。
ロープがきしむ音がして、顔を上げると、ロイドがつり橋に足を乗せたところだった。
ロイドはうまくバランスとりながらつり橋の上を歩いてゆくが、彼が歩を進めるたび、大きく揺れている。
「俺らも行くぞ」
レイモンドがヴィクトリアに先に進みように顎で促した。
ヴィクトリアは意を決して、つり橋に足をかけた。
恐る恐る2,3歩歩いてみると、両手で手すり代わりのロープをつかんでさえいれば、意外にも安全に渡りきれるような気がしてきた。
次第につり橋の高さに慣れてきたヴィクトリアは岩肌を見渡して祝福の花を探してみる。
ちょうどつり橋の中央付近まで来た頃だった。
「ねえ、見て! 祝福の花よ!」
左側の断崖のかすかに隆起した場所に、目当ての花を見つけて、ヴィクトリアはとっさに声を上げて指さした。
「ばか! 手を離すな!」
。
レイモンドの注意も、一瞬のとき遅し。
ヴィクトリアはバランスを崩し、声も出せぬまま谷底に落ちた。
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主人公、絞首台に引き続きつり橋からも落ちるとは……。
まだまだお話は続きます。
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