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校長室にて

 校舎内は静まり返っていた。


「えーっと。まずは校長室か」


 ヴィクトリアは入学案内を眺めながら呟いた。NJKCの校長室は魔法士養成コースの校舎内にあるらしい。編入生はまず校長室を訪ねるようにと指示があった。


 校内図を片手に、薄暗い長い廊下を通り過ぎて校長室にたどり着くと扉をノックする。


「失礼いたします。本日から魔法士養成コースに転入するヴィクトリア・フォーベルマンと申します」


 しばらくすると、がちゃりと扉が開く。


「ああ、フォーベルマンさん! お待ちしておりましたよ! どうぞ中へ。ささ、どうぞどうぞ」


 やたらとハイテンションな男が顔を出し、諸手を広げてヴィクトリアを室内へ招き入れた。


「あ、ありがとうございます」


 ヴィクトリアを来客用のソファに座らせると、男は立て板に水のごとくまくし立てはじめた。


「どうもどうも。ヴィクトリア・フォーベルマンさん、ようこそカルダーウッド・ジュニア・ナイト・カレッジへ。あなたのような高貴で優秀でお金持ち、いや、ご立派な家柄の方に入学していただけるなんて誠に光栄です! 私は校長のアーサー・モーズレイと申します。以後お見知りおきを。あ、ぜひお気軽にアーサーと呼んでくださいね」


「は、はあ」


 アーサー・モーズレイは、見方によっては20代とも40代ともとれるような奇妙な男であった。真っ黒な燕尾服に仮面のような笑顔を始終貼り付け、身振り手振りを交えて早口で話す。

 家庭教師からの事前情報では、この校長はこう見えてとても切れ者であるらしい。

 ヴィクトリアはあっけにとられながら、彼の大げさな演技のような話を聞いていた。


「いやー、リュクス皇国の筆頭公爵であるフォーベルマン家のご令嬢とご令息がそろってわが校へ入学されるとは! 私も鼻が高い。校長冥利に尽きるというものです。弟君も騎士養成コースでとても優秀な成績を残しておられますが、あなたも此度の入試では大変すばらしい成績でした。すでにわが校、いや、わが皇国トップクラスといっても過言ではない! フォーベルマン公爵様のお抱え家庭教師はわが校の出身とお聞きしておりますが、彼の教え方もよかったんでしょうな。ひいてはわが校の教育の賜物といってもしかるべき……」


「あの、モーズレイ校ちょ……」

 始終笑顔で長々と話し出すアーサー校長に、ヴィクトリアがたまらず声を上げると、瞬時に「ぜひ、アーサーと」とにこやかに返された。


「……アーサー校長。そろそろ授業が始まる時間ではないでしょうか?」

「え? ああ、そうですね。私は口下手なので、話が簡潔で短い方だと自負しておりますが、今日はつい話し込んでしまいました。失礼失礼。では、教室へご案内いたしましょう」


 アーサー校長が、とん、と机をたたくと、何もなかった場所から瞬時にゴールドの電話が現れた。


「私、ゴールドが好きなんですよ。いいですよねえ、ゴールド」


 アーサー校長はそういってうっとりしながら、受話器を取ると一つ咳払いをして話し出した。


「あー、あー、至急至急。2-Aロイド・マクドウェル君。校長室へ来てください。マクドウェル君、校長室へ来てください」


 どうやら校内放送のようだった。

 ヴィクトリアは、アーサー校長が口にした名前を聞いてハッと息をのんだ。


 ロイド・マクドウェル


 あの消えてしまった過去で、エザベラ皇女に従っていた男。あの職務に忠実な白銀の貴公子もこの魔法士養成コースの生徒だったんだ。

あけましておめでとうございます!

この一年も、皆様にとって素晴らしい年になりますように。

本年もよろしくお願いいたします!

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