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王立図書館の振子《銀星✻③✻》  作者: YUQARI
第一章 王立図書館
9/73

リルラリールの誕生は……?

 しん……と辺りが静まった。


 まさかの結論に、言ったフィーリシュカですら言葉をなくす。


「え? えぇ? ……えっと、……そう、なるんだよね……?」

 玖夜(ひさや)が混乱して、言葉を繋ぐ。

 フィーリシュカは口元に手を当て、唸る。

「そう……としか、考えられませんわ……。まぁ、本当に魔王に出会ったのが時姫であるリルラリールなら……なのだけれど……」


 その言葉に、リルラが口を挟む。

「リルラリールが、魔王に関する文献を作っていない事は間違いないわ! だって、そんなものが現れたら大事件だもの!」

「……ですわよね。(わたくし)もそう思います……」

 フィーリシュカはポツリと続ける。


「確かに、その内容が書かれたものがあるのなら、マトラ公国でも騒ぎになるはずです。けれど、そんな話は聞いたことありませんもの。……まだ()()()()()()()。……そう考えた方が、自然ですわ……」

「じゃ、じゃあ、リルラリールは()()()()()()()()()()……!?」

 玖夜(ひさや)の目が輝く。


 この大きな図書館を設立する(いしずえ)となった、リルラリール。

 本来『礎』なんて、はるか昔のものであると思っていたのに、それが覆されたのかも知れないのだ。玖夜(ひさや)が沸き立つのも、無理からぬこと。現にフィーリシュカも色めきたつ。


「ま、まぁ、その方が本当に、時姫……リルラリールであったのなら……って事ですわ。もしかしたら、全くの別人なのかも知れませんし……」

「でも! でもでも、もしも時姫なら、まだ生まれていないんだろ?」

 玖夜(ひさや)はフィーリシュカに詰め寄る。


「う。も、もしくは、生まれていたとしても今現在、どこかにいる……との推測は立てられますわね……」

 玖夜(ひさや)の勢いに押されつつ、フィーリシュカは呟く。

「今現在、()()()()()()……!?」

 玖夜(ひさや)の目が、更に輝き、フィーリシュカを見た。リルラリールに会ってみたい……! 玖夜(ひさや)の目が、そう訴えていた。


「う……」

 フィーリシュカは、口が滑った……とばかりに、自分の口を手で塞ぐ。


 玖夜(ひさや)の知的好奇心は、今始まったものではない。幼い頃から共に遊んだフィーリシュカは知っている。玖夜(ひさや)は興味を持ったものには、恐ろしいほどの集中力を見せる。


 そんな玖夜(ひさや)を見て、リルラは苦笑する。困った顔をしつつ、フィーリシュカには(なだ)めるような笑みを送る。


「もう、玖夜(ひさや)ったら……。出会うのは、無理ですよ。相手は間違いなく、()()ですからね!」

 リルラは玖夜(ひさや)に言い聞かせる。


「王……女、?」

「そう。……リルラリールは何処かの国の王女であるはずなの。歴史書にもそう書かれているもの。けれど、どこの国かは分からない。おそらく寝たきりであったリルラリール本人が、よく分からなかったのかも知れないわ。エルダナの王女なのかもしれないし、別の国の王女かもしれない。けれど時を遡る姫は何故か必ず、このエルダナに現れる……。それは何故かしら……? このエルダナの姫なのかしら……? だとしたら、今現在、エルダナには姫がいないからエルダナの姫ではない。もしくは今後エルダナに生まれる姫……?」

 リルラは首をかしげる。

 その言葉に、フィーリシュカも頭を捻る。


「うーん。エルダナに近い、隣国の姫さまとか? 交友関係が深くて、思い入れがエルダナにあるとか?」


「交友関係が深いのは、猩緋国(しょうひこく)。今現在、猩緋国での姫……と言えば……」

氷桜(ひお)姉さま!!」

 玖夜(ひさや)が叫ぶ。


「「……」」

 つい先程まで落ち込んでいて、涙まで流していたとは思えない玖夜(ひさや)の反応の素早さに、リルラもフィーリシュカも苦笑を禁じ得ない。けれど、元気になって良かった……、そうも思う。


 フィーリシュカはそんな玖夜(ひさや)をふふふと笑いながら見て、言葉を返した。


「まぁ、確かに氷桜(ひお)さまは猩緋国の正式な姫さま。……けれど氷桜(ひお)さまが寝たきりなど、想像出来ませんわ……」

 フィーリシュカは苦笑する。



 今でこそ氷桜(ひお)は皇女の(てい)をしているが、その実かなりのお転婆だった事をフィーリシュカは知っている。

 何を隠そう、玖夜(ひさや)の一人称が『俺』になったのは、あの氷桜(ひお)のせいだ。


 ナルサの森に落ちた玖夜(ひさや)を真っ先に見つけ、(かくま)ったのはセウではない。お転婆姫の氷桜(ひお)である。


 助けられた事と、その後の身の振り方を教え支えてくれた氷桜(ひお)に、玖夜(ひさや)は心の底から心酔(しんすい)した。


 心酔(しんすい)するだけなら良かったが、氷桜(ひお)のようになりたい! と思ったようで、その言動やその仕草を真似し始めた。

 正直、フィーリシュカとしては、《姫》としての氷桜(ひお)を真似て欲しかったが、残念なことに氷桜(ひお)は姫として、落第点だった……。


 玖夜(ひさや)が自分を《俺》と言う理由……それはなにも、逃げるために男になってたからではなく、()()()()を真似した結果なのである。


(いつの日にか、《俺》ではなく、《わたし》もしくは、《わたくし》と言わせなくては……)


 フィーリシュカは密かに、計画を立てている。


 けれど《わたし》もしくは《わたくし》と言う玖夜(ひさや)が想像できず、女の子に戻ってほぼ一年経つというのに、未だに実行に移せていない自分に、ほとほと愛想を尽かしていた。


(……リルラにも手伝ってもらいましょう)

 そんな風にも思っている。



 そんな調子なので、リルラの言う時姫のイメージ……寝たきりで、儚げな姫……に氷桜(ひお)は決して当てはまらない。断じて違うと、胸を張って断言出来た。



 玖夜(ひさや)は唸る。


「うーん。そうだよねぇ。あの氷桜(ひお)さまが寝たきりとか……世の中の人みんな、()んでそうだよね……」

 と玖夜(ひさや)は苦笑いをする。


 氷桜(ひお)さまが寝たきりになるような世の中に、生物なんて存在しませんわ……とフィーリシュカは心の奥底で悪態つきながら、玖夜(ひさや)に微笑み掛ける。

「ほ、ほほほほほ……そう、ですわね。絶対、有り得ませんわね!」

 語尾に妙な力が入った。


「んー、でも……」

 とリルラが続ける。


氷桜(ひお)さまには、お子さまがいらっしゃるのでしょ?」

 その言葉に、玖夜(ひさや)は目を見張る。

「え!? 知らない!? なに? 子どもがいるの!? ……姉さま、自分の白竜と結婚したとは言っていたけれど、そんな事知らない……!」

 言って、手を口元に当て眉間に皺を寄せつつ考えた。


「あ。……でも、その後から、姉さま……うちに来なくなったから……」

「……」

 フィーリシュカは思う。おそらくそこで、自由がきかなくなったのだろうと。


 竜人……いや、猩緋国の世代交代は普通のものとは異なる。


 元々国を治めたいと思っていない竜人は、早々に次の代へと交代したがる傾向にある。次期皇帝が決まり、その後継が婚姻ともなれば、世代交代への準備に取り掛かったのに違いない。


 氷桜(ひお)は、ああ見えて次期皇帝。赤竜なのである。



 フィーリシュカは小さく溜め息をついて、言葉を繋ぐ。

玖夜(ひさや)さまは随分長い事、俗世を離れていたのですもの。知らなくて当たり前ですわ」


 一年前のあの事件の後、マトラ公国から戻って来た玖夜(ひさや)氷桜(ひお)に会うことは出来なかった。事後処理で騒然としていたあの状況の中で、例え出会えたとしても、世間話をする余裕など微塵もなかった。


「でも、氷桜(ひお)さまのお子さまでもありませんわ。そもそもそのリルラリールさまは、竜人ですの?」

「……あ」

 玖夜(ひさや)の反応に、フィーリシュカは苦笑する。


「おそらく、リルラリールさまは《人》。なので、マトラ公国も違いますわね……」


 その言葉に、リルラは考える。

「……では、どこの姫なのかしら」


 リルラの呟きは、広い図書館の中へと響き、消えて行った。

 リルラリールに関して、分かったことは二つだけ。


 時姫リルラリールは、現代にいる……かもしくは、まだ生まれていない……。そしてそれはエルダナではないのかも知れないという事。


 そういう結論に達した。


「歴史の課題、リルラリールにしてみよう……?」

 そんな無邪気な玖夜(ひさや)の声に、二人は苦笑しつつも頷いた。


 図書館の柱が虹色の光りを出しながら、クルクルとゆっくり回る。キラキラと柔らかい光りを撒くその光景は、とても綺麗で心が穏やかになる。


 それは、三人以外に誰がが来た……という事を示していた。


 同じ課題を受けた、学生かも知れない……と、玖夜(ひさや)は思って、図書館の入口を見たのだった。


意味が分かりづらいなぁ……と私も思ってます。

説明だらけなんですよね。ここ( ̄▽ ̄;)

……まぁ、しょうがねぇ。

分かりやすくすると、長くなるもん。

……と、諦めてます。

文章上手くなってから、書き直すよ。きっと。。。


次回更新は金曜日。

『銀星』は火曜と金曜の0時更新です。はい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 9/15 ・やっぱりリルリルしてますね。リルリルしててかえって分かりやすいかも [気になる点] ひさやの男装を見てみたい。いやもう見たのか
[良い点] 時姫リルラリールというのは? ・輪廻転生を繰り返している ・「勇者」のようなクラス名である=記憶を引き継ぐ「職業」である ・時を超え誰かに憑依する(生まれつき憑依なら輪廻転生と同じかも?…
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