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ツイてないなぁ

　私が高校を卒業して十年。学生の面影はとうに消え、いち社会人として身を立てられるようになった。

　仕事に忙殺の日々では男性との出会いはなく、学生時代からもほとんど男子と会話した記憶がない。

　男に縁がないのは、何年経とうとも変わらない。

　最近仕事がうまくいって、より高いステップに挑めるようになった。こつこつ頑張ってきたこともあるが、運が良かったとも言える。

　もうひとつ、運がいい出来事があった。

　まだ私がセーラー服に身を包んでいた当時、密かに好きだった男子がいた。特に仲が良かったとはいえないが、帰り際には挨拶を交わす程度には親交があった。だけど、私の急な転校で思いを告げられないまま引っ越してしまった、十年経った今でも後悔が心の隅で沈殿している。

　そんな彼と、仕事上で再会したのだ。

　名前を聞いてもしやと思い確認すると、相手も私のことを憶えてくれていた。

　この上ない幸運に感謝した。

　でも不運が二つあった。

　実は両想いで、私が勇気を出して引っ越す前に思いを告げていれば、交際は実現していたということ。

　もう一つは、彼は今や彼ではなくなっていたということ。

　『彼女』になっていた。

　まったく、ツイてないなぁ。色んな意味で。