第一印象
その転校生は鉄仮面を着けてやってきた。
鈍く光る鋼鉄の仮面は厳めしく、見る者に威圧感を与える。
わずかに覗く目元は鋭く、常に周囲に気を配る。
学生の身空とは思えない、冷たく異様な存在だった。
教室のざわめきは一瞬にして止まり、浮き立っていた雰囲気が潜水艦めいて沈下した。
「えー、今日から彼がこのクラスに編入することになりました。みなさん仲良くしましょう」
先生も困惑を隠せず、ちらちらと彼の方を見る。
彼は黒板にチョークでカリカリと自分の名前を書き記す。おおむね、そのビジュアルに負けていない名前だった。
「さて、それではみなさん、彼に質問はありますか?」
その仮面はなんですか? クラスの気持ちが一致した。
だが、それを口に出せる勇者はなかなか現れない。
次第に小さなざわめきが起こる。それに触れていいのか? いや、地雷じゃないか。授業中でも見られない、真剣な討論が静かに行われる。
ふいに、ガタっ、と音が立った。彼が教卓に足をぶつけた。
刹那の間だけ止まる会議。そして、勇者が立ちあがった。
「あの……その仮面はなんですか?」
震える声で質問する。クラスメイトの誰もが質問者に拍手喝采を送りたかった。
彼は一呼吸の間を置き、述べた。
「……恥ずかしがり屋なんです」