ヒントをあげる
道を行く旅人の前に、答えを問う怪物が立ちふさがった。怪物は旅人に謎を問いかけ、答えられないものを食ってしまう化け物だった。
「朝は四本足、昼は二本足、夕は三本足。この生き物を答えよ」
旅人は即答した。
「わからん! お前を退治する!」
剣を抜いた旅人に、怪物は慌てた。
「頭を使わんか、単細胞め。しかたない、ヒントをやろう。これは比喩である。何を喩えたものか?」
「知らん! 斬る!」
なおも剣を構える旅人。
「で、ではもっとヒントをやろう。それはお主にとって身近な生物だ」
「ちんぷんかんぷん! ぶっ倒す!」
「ま、まだ難しいか。えーと、足が増えるわけではなくて、見たまんまの状態を考えるのだ。ほら、最初は四つの足で地面を駆けずり回り、時が進めばしっかりとした二本の足で大地に立つ。時を重ねて二本の足では立つことが難しくなると、支えを欲するだろう。ほら、ここまで言えばどんな生物かわかるだろう?」
「どうでもいい! ぶちのめす!」
「少しは考えて!」
剣を振り回す旅人に追いかけられ、怪物は逃げ出した。
逃げた先には崖があり、イノシシのように突っ込んでくる旅人は止まる気配もなく、怪物もろとも落ちていった。
この旅人の名前『追いディプス』は英雄として後世にまで語り継がれることになった。