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異世界リベンジ! ~前世の借りをヤリ返す~  作者: 神ノ味噌カツ
第三章
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06 世界は広い

 荷物の配達の依頼を受けた翌日、俺達は依頼主である食料品店に訪れていた。


「ごめんなさいね、(うち)の主人はまだ腰が悪くて奥で休んでいるの」


 この店の主人の妻である中年の女性がそう言って頭を下げる。


「気にしないでください。それで、荷物の方は?」


「こっちです」


 そう言って店の裏にある倉庫に案内される。倉庫の中に入ると、そこには数々の商品が保管されていた。


「ここにある商品を届けてもらいたいの」


 女性が商品と言ったのは床に置いてある木箱や麻袋(あさぶくろ)など、そこそこ数があるものだった。俺達は手分けしてここに来るまでに持ってきていた荷車に積み込むと、挨拶もそこそこに事前に頼んでおいた馬車業者の店に向かう。


 昨日の内に話はしておいたお陰でスムーズにやり取りを終えた俺達は、馬車に荷物を積んで街を出ることに。


 因みに手綱を握るのはライラだ。俺が馬に乗れない事を知っているライラが率先して手を上げたのだ。まあ、乗り込むときに散々嫌みを言われたが・・・・・・


 こうして俺達は街を出て配達先であるゲルジャック村に向けて進み始めた。


 街を出て四時間、最初はゆっくりと流れていく景色を馬車の荷台で眺めていたおかげで退屈することは無かったが次第にそれも飽きてきて、今は退屈を紛らわせるために持ってきていた本を使って美里に文字の読み書きを教えていた。


 しばらくそうして時間を潰していると、話は勉強から雑談へと変わっていて、今はハンターの基礎知識として組合のルールなどを教えていた。


「依頼数と実績とかでランクが上がる・・・・・まるでゲームみたいだね」


「そうだな」


 ハンターランクについて美里に語ったところ、俺も当時説明を受けた時と同じ感想が美里の口から洩れた。


「うん?そう言えばさっきの話で疑問に思ったんだけど」


「何だ?」


「最高ランクってやっぱりSなの?」


「ああ~・・・・・・・」


 そう言えば俺も聞いたことがない。俺が知ってるのは最低ランクのEランクからスタートと言う事だけ。知っている人たちのランクもBまでだ。


「どうだろう?俺も知ってるのはEからBまでだからな・・・・・なあ、ライラ。その辺どうなんだ?」


 手っ取り早く知っているであろう先輩ハンターのライラに聞くと、ライラは御者台(ぎょしゃだい)からチラリとこちらに顔を向けながら答えてくれた。


「ハンターランクの最高位はSランクだ。まあ、ただ・・・・」


「ただ?」


 思わせぶりな発言に疑問を持つと、ライラはため息交じりに教えてくれる。


「現在Sランクハンターは存在しない」


 存在しない?


「何でだ?」


「Sランクハンターになるには条件が要るんだ。それもほぼ不可能と言われるほどのな」


 ライラ曰く、Sランクに昇格するにはある条件が必要らしい。


 その条件とは、他のランク昇格と同じように依頼数と実績、加えて信頼と実力、そして英雄的偉業。


「英雄的偉業?」


「例えば国の一大事を救うとか、誰も勝つことのできない魔物を倒すとか、とにかく誰にも出来ないような事をしたものだけに贈られる、いわば勲章の様な称号、それがSランクだ」


 国の一大事を救うって、それってゲームだと魔王から世界を救え、みたいな感じか。


「なるほどな。つまり、勇者になれと」


「お前の言っている意味は分からんが、とにかく条件が特殊だから今現在Sランクは存在しないってことだ」


「それじゃあ今いるハンターの人達の最高ランクってAランク?」


「ああ、そうだ。と言ってもAランクハンターを取得しているハンターも少ないから殆ど見かけないから、主にCからB+の連中が組合を回してるってのが現状だな」


「Aランクの人達は何してるんだ?」


 ライラは前を向いたまま答える。


「正確には今何をしているかは分からん」


「分からんって・・・・・」


「変わり者が多くてな。と言うか変わり者しかいない。大陸中を好き勝手ほっつき歩いてるって事は聞いたことはあるが、実際何をしているかはアタシも良く知らないんだよ」


 Bランクよりも上。つまりクロードやビジャルよりも強いハンターがいるにもかかわらず、そいつらは依頼をするわけでもなく好き勝手しているらしい。


 ライラは実力があるんだから仕事しろと愚痴のような事をぼやいていた。


 確かに仕事しろと言いたい気持ちは分かる。実力も実績もあるAランクハンターが仕事をしないとそれ以下のランクのハンターにしわ寄せが来るのだから。


(一体どんな連中なんだろうな)


「どんな人たちなのかな?ライラは知ってる?」


 俺と同じ疑問を持ったのか、美里が首を傾げながらライラに質問する。


「アタシが知ってる限りなら・・・・・・そうだな、『暁の旅団』ってクランのリーダーで、『拳聖(けんせい)のバルロ』って奴は有名だな」


「拳聖・・・・凄い二つ名だな」


 なんか、武道を極めた人、みたいな感じだ。


「クランって、確か数人でグループを作って依頼を受けるチーム、だったよね?」


「ああ。バルロは暁の旅団ってクランを作って、そいつらと一緒に各地で傭兵(ようへい)のまねごとをしながら旅をしているらしい」


 ライラが言うには、そのバルロ率いる暁の旅団は傭兵まがいの事をしながら何かを探しているらしい。その何かは知らないが、リーダーでありAランクハンターのバルロは当然として、それ以外にクランメンバーも相当な実力を持ったハンターであるらしい。


「噂だと、暁の旅団に所属するメンバーは全員Bランク以上って話だ」


「Bランク以上!?」


 それって、その暁の旅団にはあのクロードやビジャル級の実力者がゴロゴロいるってことだよな・・・・・・こわっ!


「しかも、誰もが避けて通る様な依頼をバルロ一人で解決した、なんて話もある。例えばドラゴン討伐とか」


「マジか?ドラゴンを一人で倒したってのか?」


「ああ。しかも一体じゃなく三体同時にだそうだ」


「三体同時にっ!?」


 俺の頭にファンタジー定番の巨大なドラゴンを相手取る拳闘士(ファイター)の姿が浮かぶが、余りにも現実離れし過ぎてにわかには信じがたい。それは美里も同じようで唖然(あぜん)とした顔をしている。


「まあ、お前らの言いたいことは分かる。アタシも話がぶっ飛び過ぎてて流石にネタだろうとは思うがな」


 例えネタだったとしても、それを言わせるだけの何かがその人にはあるのだろう。


「はあ~・・・・・世の中凄い人がいるもんだな」


「他にもそう言った人がいるの?」


「そうだな・・・・・・ハンターじゃないが、不死身の吸血鬼を倒したって言われている騎士団がいるな」


 ドラゴンの次は吸血鬼かよ。


「その騎士団の団長がかなりの実力者で、なんでも一人で魔物の大軍を薙ぎ払ったって話だ」


 そして今度は魔物の大軍・・・・・何でもありかよこの世界は。


「あくまで噂だが、そいつが所属している国は神器を所持しているって話だ」


「神器を?」


「総司、神器って?」


 ああ、そうか。美里にはまだ話したことなかったな。


「神器ってのは―――――」


 俺は神器の事について話すと、美里は目をキラキラと輝かして子供の様に興奮し始めた。


「それってつまりアレだよね?鞘から抜いただけで世界が終わる剣とか、世界を七回も崩壊させられる剣とか!」


「いや、まあ、そこまでかは分からんが・・・・・」


(そうだった、美里はアレだった)


 俺が若干引き気味になっている事などつゆ知らず、美里は興が乗ったのか、更に言葉を重ねていく。


「必殺必中の槍とか、邪龍が守る剣とかもカッコイイよね!?あ、でも私的にはやっぱり約束された勝利の剣とかも良いと思うな~」


「そ、そうだな。は、はは・・・・・」


 引きつった笑みを浮かべるも、そんな俺のリアクションなどお構いなしに別の世界に逝ってしまう美里。


「おいソウジ、アイツは一体どうした?」


 ヤバい薬でもきめたような様子の美里に、俺と同じように頬を引きつるライラが小声で話しかけてくる。


「ああ~・・・・・何て言うか、美里は、アレだ。いわゆる『中二病』ってやつだ」


「チューニビョー?」


 そう言って首を傾げるライラの姿がどこか可愛くてつい笑ってしまう。


「なんだよ、なんで笑うんだよ」


 不貞腐れたように頬を膨らますライラに「気にするな」と言って誤魔化す。


(美里はこういった話が大好きだったからな)


 大学で初めてあった時はそうでもなかったが、部長の話を聞いてるうちに、美里もファンタジーの世界にハマっていき、気付けば立派な中二病患者になっていた。


(俺も嫌いではないからいいんだけどな)


 そんなどこか懐かしい気持ちと共に、俺達は依頼の村までの旅路を進んだ。



          *



 時刻は夕暮れ。それもあと僅かで周りが暗闇に包まれるであろう時間。そんな時間に俺達三人は火を起こして夕食の準備をしていた。


「えっと、食材はっと・・・・・・」


 持ってきた荷物の中から晩飯にできそうな食材を探っていると、後ろから美里に声を掛けられる。


「総司、包丁ってどこにあるかな?」


「ちょっと待ってろ」


 そう言って俺は食材を探すのを一旦やめ、馬車の中に置いてある荷物の一つを開ける。


「あれ?確かここに・・・・・・」


 その荷物には調理器具一式が入っているのだが、肝心の包丁が見当たらない。


「おっかしいなぁ・・・・・確かにここに入れたと思ったんだが」


 もしかして入れ忘れたか。そう思って一応他の荷物も確認して見たがどこにもなかった。


「悪い美里。どうやら持ってくるのを忘れたみたいだ」


「そうなんだ。じゃあどうしよう?」


「そうだなぁ・・・・・・」


 今この場には俺と美里しかいない。ライラは森に入って水と、ついでに食べられそうな木の実なんかを探すと言って今はいない。


「ライラが戻ってくるのを待ってティソーナで、ってのは流石に怒られるよな・・・・・・あ」


 あれこれ考えていると、俺はふとあることを思い出し、自分の荷物の中を漁ってあるものを取り出す。


「お、あったあった」


 そう言って取り出したのは一振りの果物ナイフ。そうノザル村を出るときに、餞別(せんべつ)としてガキ大将を気取っていた男の子から貰ったものだ。


「これ、使えないか?」


 美里に果物ナイフを渡すと、鞘から引き抜いて具合を確かめる。


「よく手入れされてるね。これなら大丈夫だよ」


「そっか。ならそれはそのまま美里が持っててくれ」


「え?いいの?」


「ああ。俺は料理は得意じゃないし、それに護身用って訳じゃないけど、何もないよりはマシだろうしな」


 刃の厚みや長さは心持たないし、武器とは到底呼べないが、それでも使い方によっては人だって殺すことは出来るのだ。手ぶらでいるよりも数倍マシだろう。何せこの世界には盗賊や魔物もいるのだから。


「分かった。じゃあこれは預かっておくね」


 そう言って美里は食材が入った荷物を漁っていくつかの肉や野菜を取り出す。俺は馬車に積んである調理器具を持って美里に渡した後はやることが無く、料理が出来るまで美里の調理風景を眺めていた。


 暫くしてライラも戻り、三人で美里の作った料理に舌鼓を打つ。それから不寝番を決めて各自眠ることに。こうして一日目が終わった。


 二日目の昼。相変わらずやることのない俺は美里に勉強を教えていた。そんな時だ。


「うん?どうしたライラ?」


 急に馬車が止まり御者台に顔を出すと、ライラは傍らに置いてあったティソーナを掴んだ。


「魔物だ」


「なに?」


 ライラの差す場所に目を向けると、確かに魔物と思われる犬の様な生き物がいた。


「ハウンドドッグ、野犬の魔物版みたいな奴だ。対した強さは無い」


 そこらの野良犬などよりも筋肉が発達して獰猛(どうもう)な目をしたハウンドドッグが威嚇(いかく)する様に唸って進行方向を塞いでいる。その数、五匹。


「雑魚だからアタシ一人で十分だが・・・・・・いい訓練相手だ。ソウジ、お前ひとりでやってみろ」


「俺か?」


「あの程度の相手ならお前でも問題ないはずだ。危なくなったらアタシが出る。気にせずやってみろ」


「・・・・・分かった」


 そう言われてはやるしかない。俺は拳を握ると馬車から躍り出る。


「総司、大丈夫なの?」


 心配そうな顔をして美里が馬車から顔を出すが、俺はそれに対して笑って言った。


「心配するな。任せとけ」


 俺はゆっくりとハウンドドッグに近づきつつ闘気を練り上げる。発動するのは身体強化。いつでも動けるように身構えつつ距離を詰める。


「ガウッ!」


 ハウンドドッグの一匹が吼えると同時に勢いよく俺に向かって走り出す。


「フッ!」


 大きく口を開けて噛みつこうとしてきたハウンドドッグを素早く回避し、お返しとばかりにその横っ腹に拳を叩きこむ。


「ギャンッ!」


 短い悲鳴と共にハウンドドッグは吹き飛び木にぶつかって動かなくなる。まずは一匹。


「グルルッ」


 一匹が倒されるのを見てか、残りの四匹が俺を包囲しようと動き出す。俺はそれをさせまいと先制して動く。


 側面に回り込もうとしていた一匹に縮地(しゅくち)を使って一息に接近、その勢いに乗って蹴りを叩きこむ。


 吹き飛ぶ姿を確認することなく直ぐに反転、近くにいたもう一匹に跳びかかり踵落としを脳天にくれてやる。


「危ないっ!」


 一匹を地面に沈めると、馬車からこちらを窺っていた美里から警告の声が上がる。


(心配しなくても)


「見えてるよっ!」


 背後から迫っていたハウンドドッグの爪を片足を軸に回る様に回避、そのまま胴体に回し蹴りをお見舞いする。


 マナ感知で周囲の動きに気を配っていたおかげで姿は丸見え同然だ。


(これもベヤドルと戦ったおかげかな)


 ハイデルのテントで戦った時よりもマナ感知の扱いに慣れてきたのか、手に取る様に、とまではいかないが、その精度は増している気がする。


「これで、終わりっ!」


 最後の一匹が飛びついて来たところをカウンター気味に拳を放ち、顔面に拳がめり込み吹き飛ぶ。地面を転がり、ピクピクと痙攣(けいれん)した後、動かなくなる。


「ふぅ~・・・・・ま、こんなものかな」


 他に撃ち漏らしはいないか周りを確認し、動くものはいないと認めた俺は馬車に戻る。


「凄い、総司強いんだね」


 馬車に戻ると、美里から賞賛(しょうさん)の言葉を貰う。


「いや、大したことないよ。俺よりもライラの方が全然強いしな」


「当たり前だ。お前とは経験が違うんだよ」


 どこか呆れたようにライラが言う。


「それより、もう少し早めに攻撃に出られたろう?相手の力量を推し量るのはいいが、明らかに格下相手なんだから、もっと素早く片付けろよ」


 と、次の瞬間にはお説教が飛んでくる。


「い、いや、初見だったし、向こうの方が数が上なんだから慎重に動く方が――――――」


「言い訳するな。少なくとも最初の一匹を仕留めた時点で力量は分かってたはずだぞ。だったらすぐに終わらせることが出来たはずだろ。後あの程度の相手に縮地なんて使うなマナの無駄だ」


 先輩、厳しいっス・・・・・・・


 ライラのお説教、もとい、アドバイスの後、再び馬車を走らせる。幸い、あれから何事もなく旅路は順調に進んだ。



         *



 デムローデから出て三日が経った。太陽が山に吸い込まれるように沈んでいく頃、ようやく目的地であるゲルジャック村が見えてきた。


「あれが依頼にあった村か」


 まだ距離があるからハッキリとは見えないが、オルギット山を背景に、森に囲まれるようにして小さな村が見える。


「予定より遅れたが、無事に到着出来たな」


 当初の予定では二日目の夕方ごろに着くはずだったのだが、慣れない旅のせいか、美里の体調が崩れて休むことに。そのおかげで予定よりも一日だけ遅れることになった。


「・・・・・ごめんね。私が体調を崩したから」


「気にするなよ。慣れないことしてたんだからしょうがないさ」


「ソウジの言う通りだ。別にお前のせいじゃない」


 一日遅れたせいか、美里は自分のせいだと気落ちしてしまっている。


「こんなのは慣れだ慣れ。一々こんなことで気落ちするな。もし、申し訳ないと思ってるんならさっさと慣れる努力をしろ」


 ぶっきら棒に言うライラの言葉に美里は頭を下げる。


「うん、ごめんね」


「だから、一々謝るなっての」


 調子が狂うな・・・・とライラはぼやきながら馬車を進めると、いよいよ目的の村、ゲルジャック村に到着した。


 簡素な木で出来た村の入り口を過ぎると、そのまま馬車をゆっくりと進めていく。馬車を進めながら周りを見ると、村の人と目が合った。丁度いいとその人に声を掛ける。


「すみません、村長さんの家はどこにありますか?」


「村長の家ならこの先を言ったところを左に曲がるとデカい家がある。そこが村長の家だ・・・・・あんたら、村長になんの用だい?」


 村人の男性は何所か訝し気な、探る様な目で問いかけてくる。その様子に若干疑問に思うも、別にやましい事などないので素直に用件を伝える。


「デムローデで店をやってる主人から荷物の配達を頼まれて」


 そう言って荷台を指さすと、男性はチラリと視線を向けると納得したように頷く。


「そうか、あんたらが話に聞いていた人達か」


 なぜか安堵したような表情を浮かべる男性に疑問を覚え訊ねてみる。すると、男性は顔をしかめながら答えてくれた。


「今、この村にハンターが来てるんだ」


「ハンターが?」


「ああ、それも大人数で。何でもどこかの依頼を終えてその帰り道って話なんだが、如何せん人数もだが、ガラの悪い連中でね。しかも、奴隷なんだよ」


「奴隷?」


「ああ、隷属(れいぞく)の首輪をつけてたから間違いないよ」


 隷属の首輪。美里が奴隷として売られた時に嵌められていた物だ。効果は対象者の首を絞めつける物だと聞いている。その気になれば首をへし折ることも出来るものだとか。


「今は村の端にある宿屋にいるが、あんた達近づかない方が良いよ?何されるか分かったものじゃないからね」


 それじゃあな、と言い残して男性は去って行った。


「奴隷でハンターって、なんだそれ?そんなのいるのか?なあ、ライラ」


「・・・・・・・・」


「ライラ?」


「あ?ああ、いや、何でもない」


「そうか?」


「・・・・・行くぞ」


 何かを思案していた様子のライラだったが、声を掛けると首を振って考えを振り払ったのか、素っ気なく答えて馬車を再び進ませる。


(なんだ?ライラの奴、何か知ってるのか?)


 と、考えてみたものの、答えないのなら別にいいかと、この時は考えていた。


 それが後に面倒な事態になることなど、この時は予想できなかった。

久々の戦闘描写。やっぱり苦手だ(苦笑

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― 新着の感想 ―
[良い点] 美里の記憶が戻らないもどかしさはあれども、三人で旅をする柔らかな情景にほっとします。トラブルが間近に迫っているようですが。 更新ありがとうございます。
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