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異世界リベンジ! ~前世の借りをヤリ返す~  作者: 神ノ味噌カツ
第三章
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03 火花散る視線

 美里の身柄保証人としてオベールさんと話し合った二日後、俺は組合を訪れていた。その理由は当然、美里を連れて行く為だ。


 組合に入り受付でオベールさんがいるか確認し、執務室の方にいると言うのでそちらにと言われた俺は執務室に向かう。事前にアポは取ってあるので執務室にはスムーズにいくことが出来た。


 扉をノックすると中から「どうぞ」の声。扉を開けて中に入ればオベールさんは書類から顔を上げてこちらに微笑みかける。


「やあソウジ君。待っていたよ」


「お待たせしました。それで、美里の方は?」


「ああ、既に準備も済ませてある。ソウジ君がいいのなら今から迎えに行くかい?」


「はい」


「では、付いて来てくれ」


 そう言って立ち上がり執務室を出て行くオベールさんに続く。案内されたのは組合の客室だ。


 オベールさんは扉をノックすると「失礼するよ」と一声かけて扉を開く。


「さあ、入りなさい」


「はい」


 客室に入ると、そこには簡素なワンピースに着替えた美里がソファーに座っていた。その隣には蒼い髪の女の子が所在なさげに座っていた。


(あれ?あの子、確か美里と一緒にいた・・・・・)


 そうだ、美里を救出した時に一緒にいた女の子だ。でもどうしてここに?


 疑問に思っているとオベールさんは二人が座る向かいにあるソファーに座ると俺も座る様に促す。


「改めて自己紹介しよう。ハンター組合組合長を務めるオベールだ」


「どうも、美里です」


「・・・・・・ミレーヌ、です」


 オベールさんが自己紹介すると、二人も同じく名前を告げる。


「もう顔合わせは済んでいるが、こちらがソウジ君。今日からミサト君の身柄保証人になってくれる人だ」


「よろしく」


 俺が言うと美里はコクリと頭を下げる。知った顔だがこういう場では何処かお互いよそよそしくなってしまうな。


「では詳しい受け渡しの内容、制約などに関して詳しく話をしていこう」


「お願いします」


 一応オベールさんから先に聞かされていたが、この場で改めて説明される。その内容は美里の行動自由に関するものだ。


 一つ、基本的には行動に関する制限はない。ただし犯罪などに手を染めた場合は当然逮捕、場合によっては保証人も身柄を押さえられる。


 二つ、奉仕活動という名目なので、仕事などは当然してもらう。ただし内容は保証人が指示したものとする。


 三つ、奉仕活動中は保証人の下を離れることは出来ない。もしも逃走などした場合は速やかに捕縛される。


 四つ、奉仕活動の期間は十年とする。


 五つ、期間以内に奴隷としてつけられた値段と同じ額を領主に渡すことで身柄は自由となる。


「大体こんなところだ。何か質問は?」


「あの、いいですか?」


「なんだいミサト君」


 小さく手を上げた美里にオベールさんは笑顔を向けながら先を促す。


「十年の奉仕活動が終わった後、もしもまだそこに居たいと思った場合は、そのままいられるんですか?」


 美里はチラリと俺に目を向けながらそんなことを尋ねた。


「その場合は保証人と話し合うしかないな。もしも保証人、君の場合だとソウジ君だね。ソウジ君が出て行けと言えば君は出て行くしかない。逆に居てくれていいと言うならその限りではない。まあ、全てソウジ君の気持ち次第になるね」


 俺次第というところをあえて強調するようにオベールさんが言う。どう考えてもプレッシャーを掛けられている。


「分かりました」


 美里はオベールさんの話に納得して頷く。


「他に質問は?なければこれで受け渡しは完了となるが」


「あの、オベールさん。一ついいですか?」


「何かね?ソウジ君」


 話が終わる前に先程から気になっていたことをオベールさんに質問する。


「美里の隣りに座っている、その、ミレーヌちゃん?彼女はどうしてここに?」


 見知らぬ俺が名前を呼んだからか、ミレーヌちゃんはビクリと肩を震わせ、どこか怯えたように美里の袖を握る。


「ああ、そうだった。それを説明していなかったね。彼女も保証人が決まってね、今からそこに行くことになっている・・・・・・ただ、ね」


「どうかしたんですか?」


「ミサト君と離れるのが嫌みたいでね。まあ、最終的には身柄の件に関しては彼女も了承してくれたのだが、やはり寂しいみたいでね。それで、せめて少しでもミサト君と一緒にと思って、すまないがソウジ君、ミサト君を家に連れて行くついでと言っては何だが、彼女を引き渡し先に送って行ってもらえないか?」


 チラリとミレーヌちゃんに視線を向けると、ミレーヌちゃんは美里と離れるのが嫌なのか、身体を密着させるように美里に寄り添っている。


 そんなミレーヌちゃんに美里が大丈夫だよと励ます様に話しかけている。


「それとなんだが」


「はい?」


 そうして二人が話している隙を突くように、オベールさんが二人に聞こえない様に話しかけてくる。


「彼女、ミレーヌ君なんだが・・・・・・どうや赤蜘蛛の連中に攫われて奴隷として売られたみたいだ」


「っ!」


 赤蜘蛛。つい一ヶ月ほど前、俺がこの街に来る前にいた村を襲った盗賊共の名前だ。


「家族もミレーヌ君以外、全員殺されてしまったみたいで、行く当てもないそうなんだ」


「家族が・・・・・あっ、もしかして」


「何か知っているのか?」


「ええ・・・・・」


 以前クロードが赤蜘蛛の調査をしていた時、クロードが赤蜘蛛の被害にあったと思しき痕跡を見つけた。


 そこには二人の男性と、二人の女性の死体があったそうだ。そして、その場にはいなかったが子供と思われる靴があったそうだ。俺はそのことをオベールさんに話すと、オベールさんの顔に憐憫(れんびん)の表情が浮かぶ。


「ハイデルが残していった書類から分かった事だが、奴隷としてハイデルの下に来た時期と、ソウジ君が話してくれた内容の時期は一致している。おそらく彼女の事で間違いないだろう」


(やっぱりそうなのか)


 家族は全員殺され、唯一生き残ったミレーヌちゃんは奴隷として売り飛ばされた。きっと彼女の心は酷く傷ついている事だろう。


(それを美里が救ったのか)


 ミレーヌちゃんの眼はどこか母や姉に向けるようなものが混じっているように見える。きっと殺された彼女の両親に重ねているのだろう。


「保証人になってもらった人物は信頼できる人物に頼んだが、ソウジ君。すまないが君にはミレーヌ君の事を少し気にかけてやってはくれないか?」


 オベールさんはそう言ってチラリと心配そうな目をミレーヌちゃんに向ける。その姿を見て俺は頷いた。


「分かりました。何が出来るか分かりませんが、俺も力になります」


「すまない、助かるよ」


 俺とオベールさんの話がひと段落したタイミングで向こうの二人もひと段落したみたいだ。


「それじゃあ、行こうか。準備は出来てるか?」


「うん」


「・・・・・はい」


 俺は頃合いだと思い、二人に声を掛けて立ち上がる。美里とミレーヌちゃんもソファーから立ち上がると、ソファーの裏に置いてあった荷物を手に取る。


「それではソウジ君、後は頼む」


「分かりました。ところで、ミレーヌちゃんの引き渡し先って?」


「引き渡し先は――――――」



            *



「いらっしゃいませ~ってソウジさんじゃないですかっ」


 店の扉を開けて中に入ると直ぐに元気いっぱいの声が迎え入れてくれた。


「よう、ミーシャ。今いいか?」


 訪れたのは目の前の女の子、ミーシャが父親と営むバヤール亭。そう、ミレーヌちゃんの引き渡し先はバヤール亭だったのだ。


「勿論です!今席に―――――」


「ああ、いや、今日は飯を食いに来たわけじゃないんだ」


「そうなんですか?ってそちらの方は?初めましてですよね?」


 俺の隣りにいる美里に興味津々に目を向ける。


「美里って言うんだ。今日から俺が面倒をみることになった」


「ああ、保証人ってやつですね」


 どうやら店に来るハンター達から概ね事情を聴いていたみたいで、ミーシャは直ぐに理解したようだ。


「美里です。よろしくお願いします」


 そう言って美里は丁寧に頭を下げようとするが、ミーシャはそれを手で制する。


「ああ、そんな畏まらないでもっと気軽にしてくれればいいですよ。ミサトさん私より年上みたいだし」


 そう言って人懐っこい笑顔を浮かべるミーシャに当てられて、美里も表情を綻ばせる。


「うん、分かった。よろしくね、ミーシャちゃん」


「はい、よろしくです!」


 二人はそう言って互いの手を握りしめて笑みを浮かべる。どうやら二人は大丈夫みたいだ。


 さて、二人の挨拶も終わったことだし、本題に入らないとな。


「それで、ミーシャ。こっちが本題なんだが、美里」


「ほら、ミレーヌちゃん」


「あれ、その子・・・・・」


 今まで黙って美里の後ろに隠れていたミレーヌちゃんを美里が肩を押す様に前に出す。するとミーシャの眼の色が変わった。


「その子って、もしかして・・・・・」


「話は聞いてるかもしれないけど、この子はミレーヌちゃん。今日からここで引き取ることになった子だよ」


 俺は簡単に組合で聞いた話を説明しようとしたその時、ミーシャは俺の言葉よりも早く動いたかと思ったらミレーヌちゃんの身体を抱きしめていた。


「きゃあーーー!!来てくれたんだねミレーヌちゃん!!」


「わわっ!?」


 突然抱きしめられたことに驚くミレーヌちゃん。それを他所にミーシャは黄色い声を上げる。


「ああ~やっぱりかわいい~。このぷにぷにしたほっぺがまた何ともっ」


「え~と・・・・これは一体・・・・・・」


 ミレーヌちゃんの頭を撫でたりほっぺたをぷにぷにと突っついて緩み切った顔をしたミーシャにどうしたものかと困惑していると、店の厨房から一人の大柄な男性が姿を見せた。


「ミーシャ、困っているだろうが。いい加減離れろ」


「いたっ!」


 厨房から出てきた男性はこちらに来ると、そう言ってミーシャの頭に拳骨を落とした。その光景に呆然としていると、ミーシャが頭を押さえて(うずくま)りながら抗議の声を上げる。


「何するのよお父さんっ」


「お父さん?」


 お父さんと呼ばれた男性はこちらに顔を向けると小さく頭を下げて会釈する。


「初めましてだな。俺はこれの父で、サジだ。よろしくな」


「どうも、初めまして総司です」


「美里です」


 そうか、この人がミーシャのお父さん。いつも厨房にいるみたいだから姿を見たのはこれが初めてだ。前にここに飯を食いに来た時にミーシャが父親、サジさんの愚痴を言っていたのを思い出す。


 その時ミーシャが口にした愚痴の内容は「お小遣い減らされた・・・・・あの暴力親父めっ!」と言った内容だったがそれはまた別の話。


「お前がソウジか、話は聞いている。クロードの弟子なんだってな?」


「ええ、そうです」


「で、今はライラとペアを組んでハンターしてるって?」


「はい」


「そうか。クロードの弟子なら大いに歓迎だ。いつでも(うち)に来な、最高の飯を食わせてやるぜ。わっはは!」


 そう言って豪快に笑うと俺の肩をバシバシと叩く。あの、痛いんですけど・・・・・


「お父さん、本当にミレーヌちゃんを家に引き取っていいんだよね!?」


 痛みから復活したミーシャが勢いよくサジさんに詰め寄ると瞳をキラキラさせる。


「おう、当たり前だ。その代わり、約束はちゃんと守れよ?」


「分かってるって!」


 サジさんに勢いよく頷くと、ミーシャは再びミレーヌちゃんに抱き着いた。


「これからよろしくねっ!」


「え、えと、あ、あのっ」


 再び抱きしめられて困惑しっぱなしのミレーヌちゃんをそっちのけで一人で盛り上がる。


「悪いな、ここまで連れて来てもらって」


「いえ、別にかまいませんよ。それより、さっき言ってた約束って?」


「ああ、アレか。アレはな―――――」


 サジさん曰く、組合に用事で訪れたミーシャが偶然にもミレーヌちゃんを見かけたことが始まりだと言う。


 見かけた時のミレーヌちゃんは暗い顔をしており、ミーシャはそれが気になり声を掛けたそうだ。


 最初は怖がっていたようだが、ミーシャの明るさにミレーヌちゃんは徐々に打ち解け、次第になぜ自分がここにいるのかと言う事を話したそうだ。


 ミーシャは奴隷が救出されたこと、その奴隷が奉仕活動という名目でこの街で暮らすことを店に通う客から聞いていた。


 ミーシャは心を痛めた。なぜこんな小さな子がこんな目に合わなければならないのかと。そして、用事を済ませて店に帰るなり父親であるサジさんに相談したそうだ。


「あの時は面食らったよ。いきなり「家で引き取るっ!」って言いだしたんだからな」


 苦笑を浮かべながらミレーヌちゃんを抱きしめる娘の後ろ姿に目を向ける。


「最初はダメだと言ったんだが、しつこく言ってくるもんで、俺も折れたのさ」


 苦笑を浮かべながらも、どこか暖かい眼で娘を見守るサジさんは続ける。


「多分、死んだ妹の事を思い出したんだろう」


「妹?」


「ああ、病気でな。まだ六歳だった」


 元々病弱な母親は妹を生んだ後、亡くなったそうだ。そして残された父と娘二人、支え合って生きていた。


 妹の世話をしつつ店の手伝いをしていたミーシャ。しかし店の手伝いで忙しく、妹にかまってやれない時間が増えてしまった。そんな時だ、妹が母と同じ病にかかったのは。


 医者に見せたが、難しい病気らしく、治療には莫大な費用が必要だった。しかし、当時店を始めたばかりで金もないサジさん達は最低限な治療しかさせてやれなかった。


「元気になったら、また一緒に遊ぼう?」そう二人は約束を交わしたが、妹が六歳になった日、息を引き取った。


 ミーシャは泣き崩れ、しばらくふさぎ込んでいたが、サジさんや周りの人達の優しい言葉に徐々に本来のミーシャに戻った。


「だから、放っておけなかったんだろう。きっと妹を亡くした時の自分と、そして、妹を重ねたんだろうな」


「そう、ですか・・・・・」


「だから、約束させたのさ。『今度は目一杯かまってやれ』ってな」


 だからなのか、ミーシャがあんなにミレーヌちゃんをかまうのは。


「それに、俺も、何だ・・・・・・妻と娘が先に逝っちまって、寂しいって言うか・・・・・いや、何でもないいっ!」


 慌てて言葉を止めるも、既に俺の耳には届いているので意味はない。目を逸らしたサジさんの頬は赤くなっており、その見た目に反して体が小さくなったみたいだ。


(オベールさんが選んだだけの事はあるな)


 この二人なら、安心してミレーヌちゃんを任さられそうだ。


 俺と美里は簡単にミレーヌちゃんをよろしくお願いしますと頼み、店を後にする。


 店を去り際、ミレーヌちゃんが「また、会えるよね?」と美里の手を掴んで別れを惜しんでいた。美里は「大丈夫だよ」と答えると、ミレーヌちゃんは笑顔を見せて手を離した。


「さあ、それじゃあ俺達も行こうか」


「うん。それで、どこに行くの?」


 ライラの家に向かう道すがら、俺は美里にライラの事を話し、今からそのライラの家に向かうところだと説明した。


「ほら、あそこだ」


 道の先に見える一軒の家を指し示す。


「あそこが・・・・・」


「俺達がこれから世話になる場所だ」



         *



 丁度ライラが台所でお茶の用意をしていたところ、玄関の方から扉を叩く音が聞こえた。


「よお、来たか」


 ライラが玄関扉を開けると、そこには総司の姿があり、ライラは口端を上げる。


「随分遅かったな、っとそいつが例の奴か?まあいい、入れよ」


 ライラは扉を大きく開けて総司と美里を招き入れるとリビングに案内して、丁度用意していたお湯で三人分のお茶を入れる。


 二人の座るソファーの前にあるテーブルにお茶を置くと、ライラは二人の対面のソファーに腰を落ち着かせる。


「それで、遅かったみたいだが何かあったのか?」


 まさかまた変なトラブルでも持ってきていないだろうなと眉を潜めながらライラが問うと、総司は首を横に振って否定した。


「ここに来る前にバヤール亭に寄ったんだよ。バヤール亭でも一人預かることになったんだ。それでここに来る前に一緒に連れて行ってくれってオベールさんに頼まれたんだよ」


 そう言ってミレーヌの事、ミーシャとサジの事を話した。


「そうか。まあ、あの二人なら大丈夫だろう。二人共真っ当な人間ってことはアタシも認めてるからな」


「ライラがそう言うなら、安心だ」


 総司も二人の事は大丈夫だと思っていたが、やはりまだ付き合いは短くどこか不安ではあった。しかし、こうして古い付き合いのある人間が大丈夫だと言うと安心できる。


「それで、そっちがソウジが言っていた・・・・・」


 ライラの吊り目がちな瞳が美里に向くと、美里はビクリと肩を震わす。


「み、美里、です」


「おう、アタシはライラだ」


『・・・・・・・・・』


「え、え~と・・・・・・」


 自己紹介をしたと思えば急に黙る二人に、流石に総司は焦る。


(な、何だこの空気・・・・・二人共、なんか空気悪くないか?)


 総司が内心あたふたとしている中、ライラはそんな総司の事など目に入っていなかった。


(で、でかい・・・・・・)


 ライラは先程からお茶を飲みながらチラチラと美里の胸を凝視していた。


(なに喰ったらそんなデカくなるんだよっ)


 同年代に比べてお子様体型であることに若干のコンプレックスを持っているライラ。


 そこに現れたのが自分とは正反対な体の持ち主。しかもこれから一緒に暮らすとなると嫌でも意識してしまう。


(いや、落ち着けアタシ。確かソウジの話だとこいつはソウジと同い年って話だし、つまりまだまだ若いアタシには未来ってやつがあるわけだ。そう、焦る必要は無いんだ)


 そう言い聞かせながらお茶を啜りながら心を落ち着かせるが、直ぐに別の事に考えが及んでしまう。


(そう言えばこいつ、ソウジの奴が必死になってまで探してた女なんだよな・・・・・てことは、ソウジとこいつは恋人?いやいや、ソウジは友達だって言ってたし・・・・はっ!ってことはこいつに惚れてるって事か!?)


 そう考えた瞬間、チクリと胸が痛んだような気がしたが、ライラはそれが何なのかは分からない。


 頭の中であれこれとライラが考えている中、美里も出されたお茶を飲みながらライラをチラチラと観察していた。


(ちょっと目つきが怖いから最初はびっくりしたけど、よく見るとこの娘、可愛い・・・・・・)


 実は美里は可愛いもの好きで、前にいた世界ではよく好きなアニメや漫画などの推しはどれも可愛い動物や子供だったりする。


 と言っても今の美里にはその記憶はない。ただ美里の本能が訴えているのだ。可愛いは正義だと。


(確か総司の話だと十六歳って言ってたよね?同年代と比べたら小さい方なのかな?でもそれがまたカワイイ~、少し癖があるけどあの赤い髪も綺麗でとっても似合ってるっ)


 お茶を啜りながらそんなことを考えていると、ふと別の事が脳裏を過る。


(・・・・・この娘、確か総司のペア、つまり仕事の相棒?みたいな子って言ってたっけ。戦い方も同じ人から教わった姉弟子みたいな人だとも言ってたっけ)


 そう思いながらここに来るまでの間に総司がライラの事を語っていた時の顔を思い出す。


(嬉しそうな、自慢しているような顔をしてたな・・・・・二人って本当に仕事仲間ってだけなのかな?・・・・・もしかし、総司がこの世界にきてから出来た恋人!?いや、待って私、総司はそんな事一言も言ってなかったし、私の勘違い、だよ、ね・・・・・)


 それを考えた瞬間、美里の胸がチクリと痛んだ気がしたが、美里はそれが何なのか分からない。


 そんなことをお互いが考えていると、ふと二人の目が合う。すると―――――


「うふふふふ」


「ははははは」


「え?なに?ど、どうした?」


 急に笑い出す二人に一体何が起こったと更に困惑を増していく総司。


 そして美里とライラの二人はただ静かに、しかし、何かを探る様にお互いに視線をぶつけるのであった。

何だかバトルが始まる予感?

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― 新着の感想 ―
[良い点] やっと一息つけました。 こういうほっとするような描写うまいですね。 幸せな日常の一方で、必死で守らなければ大切なものがすぐになくなってしまう、この世界の残酷さが意識されます。 ありがとうご…
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