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異世界リベンジ! ~前世の借りをヤリ返す~  作者: 神ノ味噌カツ
第二章
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エピローグ

「ライラ、無事か?」


「それはこっちのセリフだ」


 ベヤドルの亡骸の傍に立つライラに歩み寄ると、ライラからのツッコミを貰う。まあ、客観的に見ても今の俺の惨状は酷いとしか言いようがない。


 脇腹から血を流し、ベヤドルに殴られてボロボロ。ハッキリ言って立っているのも辛い状態だ。正直今すぐ倒れたい。


 けれど、そうも言っていられない。まだやるべきことが残っている。


「追いかけるか?」


「ああ」


 俺の考えが分かっているのだろう、ライラの問いに俺は頷く。


「分かった、レヤックを引っ張ってくるから少し待ってろ」


 そう言ってライラはミタリーの仲間が残していってくれたレヤックの下に向かう。


 ライラがいった後、俺は地面に横たわるそれに目を向ける。


「・・・・・・・・」


 黒焦げになり、もはや誰なのかも判別できないそれをただ黙って見つめる。


「・・・・・・・・すまない、助けられなかった」


 俺は、そんなことしか言えなかった。


『お前が謝る必要があるのか?別にお前のせいでもないのに』


「・・・・・・うるせぇ」


 オグマの茶々に文句を言っていると、遺体の傍に落ちていたアーティファクトに変化がった。


「ん?アーティファクトが・・・・・・」


 ペネトレイターの表面にひびが入り、徐々にその亀裂が全体に広がると、砕けて砂になる。


「これは、一体?」


『・・・・・・・・・・』


 吹き付ける風にあおられ、砂は空を舞って跡形もなく消える。


「・・・・・・・なあ、オグマ。アレは一体何だったんだ?お前はアレが何か知っているんだろ?」


 俺が言っているアレとは、ベヤドルが纏った黒い闘気の事。オグマはそれを知っているかのような口ぶりだった。


『・・・・・・・アレは、呪いだ』


「呪い?」


『そうだ。アレは―――――――』


「ソウジ」


 振り返るとライラがレヤックを一頭引っ張てきたところだった。


「準備できたぞ。ミタリーたちが上手くやっているなら、追いつくはずだ」


「ああ、分かった・・・・・・・・」


「どうした?」


「いや、ファムは・・・・・・・」


 俺が目を向けると、ボロボロの身体を引きずりながらビジャルがファムの下に向かっていた。


 肝心のファムは下を向いて涙を流している。


「放っておくわけにもいかない、か」


 俺が何を言いたいのかはライラもファムの様子を見て理解したみたいだ。


「ん?」


 どうするべきかと考えていると、ビジャルがファムの下に辿り着き、その背中を優しく撫でる。そして、俺達に顔を向けると小さく頷く。


「・・・・・・ここはあいつに任せよう」


「いいのか?」


「アタシらより、ビジャルの方が適任だ。全部終わったら迎えにいけばいい。それまでは、二人だけにしてやろう」


「・・・・・・そうだな」


 ライラがレヤックに跨り、俺はライラの後ろに乗る。その場を去る直前、俺は最後にもう一度後ろを振り返る。


「・・・・・・・・・」


 そこには拘束を解かれたファムが、ベヤドルの亡骸に縋り付いて泣いていた。


 俺達はそれを振り切る様にその場を離れる。


 心の中で何度もゴメンと繰り返しながら。



              *



 レヤックを走らせること数時間、痛む身体に鞭を打って追いかけた甲斐もあり、ミタリーたちに追いつくことが出来た。


 そこは森の中に隠された小さな小屋で、その周りにベヤドルが連れていた馬車、そして仲間がミタリーたちの手によって拘束されていた。


「ライラ、ソウジも無事だったか・・・・・・その、ベヤドルは?」


 総司達の姿を見たミタリーは駈け寄ると、二人にベヤドルの事を尋ねる。


「・・・・・・・ベヤドルは――――――」


 ライラが事の顛末を語ると、ミタリーは「そうか・・・・」と呟くと二人の下から離れた。


 総司が追いかけようとしたが、ライラがそれを止める。


「一人させてやれ」


「ああ・・・・・・」


 離れていくミタリーの背中を、二人は黙って見送った。



                *



 ライラは拘束した元疾風のメンバーを見張る為その場に残り、総司は一人、小屋の前に集められた集団の中を歩いていた。


「・・・・・いない」


 幾つかのグループに分けられて固まる集団は、全て奴隷だった。


 総司はその奴隷達が集まっている場所を一つ一つ見て回っていた。


「・・・・・・違うか」


 何度目かのため息をつく。辺りにはまだ見ていない奴隷達が溢れかえっていた。


「・・・・・・探そう」


 きっとこの中にいるはずだと言い聞かせながら、ボロボロの身体を引きずる様に不安と共に歩き出す。


(一緒に連れてこられたのは確かなんだ)


 ベヤドルが地下で言っていた事を思い出す。それが正しければここにいるはずだ。


 探し始めること数分、一向に見つからないと焦りながら次へ向かおうと足を向けると、視界の端に黒い髪が映った。


「っ!」


 反射的に足を止め、直ぐ近くにいた奴隷達に向けていた足をそちらに向ける。


 ドクン、ドクンと総司の足が動くたびに心臓が激しく脈打つ。


 周りの音が耳に入らない。


 その場所以外の景色が視界から消える。


 ドクン、ドクンと耳障りな心臓の音が頭に響くが、総司は気にしない。いや、気にも留めない。


 総司の足が止まる。


 総司の目の前に、蒼い髪の女の子を抱きしめている黒髪の奴隷の背中がある。


「もう、大丈夫だよ。もう安心だから」


 そう言って黒髪の奴隷は女の子の背中を優しく撫でる。


「っ!」


 黒髪の奴隷の声を聞いて、総司の心臓が一際大きく脈打つ。


「あ、あ・・・・の・・・・・・・・・」


「ッ!?」


 総司が声を急に声をかけたからか、黒髪の奴隷はビクリと肩を震わせながらゆっくりと振り返る。


「っ!!」


 振り返った奴隷の顔を見て、総司は息を飲む。


「や、やっぱり・・・・・・」


「え?きゃっ!」


 総司の手が奴隷の肩を掴む。


「美里、美里なんだなっ!?そうだろっ!!」


「え、どう、して・・・・・?」


 総司の顔を見て困惑の表情を浮かべる。


「やっぱり美里なんだな!一体どうしてここに、いやそれより、どうしてあの時――――――」


「なんで、私の名前を知ってるの?」


「・・・・・・・・え?」


 その言葉に、今度は総司が困惑する。


「なに、言ってるんだ、美里」


 総司の目の前に美里がいる。自分が愛した人が、そこにいる。


 なのに―――――――



「あなた、誰?」



 美里の瞳には、()()が映っていた。

これで二章は終わりです。


一章に比べると大分長い話になりました。戦闘を意識して話の展開を持っていこうと悩みまっくた結果、この長さですw


さてさて、エピローグの最後がアレなので、次の三章書き出しを考えるとまた色々と頭を悩ませることになるかなwまあ、大体もう決まっているけど。


それではここまで見ていただいてありがとうございます。次回三章スタートです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] やっと再開できた! ……と思ったら、まさかの展開です。 こんなに近くにいるのに、誰なのかわかってくれない。 次章が楽しみです。 どうもありがとうございます。
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