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異世界リベンジ! ~前世の借りをヤリ返す~  作者: 神ノ味噌カツ
第一章
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04 気になるワード

 カジルさんの店を出た俺たちが向かった先は、カジルさんの店からはす向かいに位置する、土壁で建てられた家の前だった。


「ここが鍛冶屋だ」


 テムロが言うには、この村の金物などが壊れたりしたらここで修理してもらうらしい。


「ガヤルさんは口うるさい人だから、初めての奴には誤解されやすいけど、根は他人思いのいい人だから」


 鍛冶屋の職人さんにありがちな感じの人だな。まだあってないからただのイメージだけど。


 テムロが前に出て扉を開けようと手を伸ばすが。


「あれ?開かない。留守なのか?」


 今度は扉をノック。


「ガヤルさ~ん。テムロだけど、いないの~」


 ・・・・・・・・・・。


 中からの反応はゼロ。


 どうやら噂のガヤルさんとやらは現在留守のご様子。


「いないか」


 残念。生の鍛冶場ってものに興味はあったが留守なら仕方がない。


「いないものはしょうがないさ」


「だな。じゃあガヤルさんの紹介はまたの機会にして、次に行くか」


 俺は残念に思いながらもテムロの案内で次に向かうことにした。


 そうして辿り着いたのは、この村の案内をしてもらって初めて目にする二階建ての木造建築の前に案内された。


「ここが、この村唯一の飯屋兼宿屋だ」


「へぇ~。しっかりした宿屋だな」


 他の民家に比べて頑丈そうな作りに見える。


「そりゃあ、客を寝泊まりさせんだから、多少頑丈に作っておかないとダメだろ」


 それもそうか。台風などで吹っ飛んでいては泊り客も落ち着いて居られないもんな。


 テムロが扉を開けると、扉に付けてあるドアベルであろう鈴がチリンチリンと音を立てる。


 先にテムロが中に入り、俺もそのあとを追うように中に入る。


 そこには調理場とカンター席、それと3、4人が座れるテーブル席が並べられ、直ぐ脇には二階へ続く階段がある。


 どうやら一階が食堂、二階が宿になっているようだ。


 中々広いし雰囲気も悪くない。


 しかし、そんな店でもやはり小さな村だからか、店には客が一人しか見受けられない。


 その客はカウンター席に座り豪快に飯を食っている。


 見た感じ中年のオッサンの様だがよく食うな。


 俺の位置からはテーブル席に座った背中しか見えないが、その背はがっしりとしていて、服の上からでもわかるほど筋肉がついている。


 けど、中年のオッサンよりも、オッサンの隣に立てかけられている、大ぶりな剣に目を奪われた。


 あれ、本物か?本物の剣なのか?


 本物だったらちょっとテンション上がる。


 その男は俺たちが店に入ってきたことに気が付き、こちらに振り返る。


「おお、なんだテムロじゃないか。どうした?飯でも食いに来たのか?」


 髪を短く切りそろえた男は、厳つい顔には似合わない人懐っこい笑みを浮かべて話しかけてくる。


「いや、今こいつに村の案内をしてやってる最中なんだ」


 そう言ってテムロは後ろに控えていた俺を指さす。


 それに釣られて男が食事の手を止め、俺の方へと目を向けてくる。


「お?もしかしてそいつが噂のレッグボアを一発で仕留めた奴か?んん~・・・・・の割にはパッとしない奴だな。鍛えてるようにも見えんし」


 何だよこのオッサン。人の事ジロジロ見てきて。パッとしてなくて悪かったな。


 ん?レッグボア?


「レッグボアって?」


「お前が倒したあの大猪だよ」


 ああ~あの猪の事ね。


「本当にこいつがレッグボアを倒しちまったのか?」


「確かにこいつが倒したよ。俺の目の前で倒したんだから」


「へぇ~テムロがそう言うんなら、確かなんだろうな」


 俺からしたら何が何だかって感じなんだが。あまりそんな風に感心されても正直、困る。


 こっちからしたらいきなり意識がボゥ~として、体が熱くなってきて、その熱が右腕に集まって外に出たって感じなんだよな。


 今更だがあれは一体何だったんだ?


 森で目が覚めてから本当に不可思議なことが起こり過ぎだ。


「おっと、自己紹介がまだだったな。俺はクロード、よろしくな」


 オッサン、クロードは席を立ち、俺に歩み寄って握手を求めてくる。


 その握手に応えて手を握り返すと、鍛え抜かれたゴツゴツとした感触が手の平に返ってくる。


「俺は総司。よろしくです」


「ソウジ?変わった名前だな。どこの生まれだ?」


 来た。今一番聞かれたくない質問No,1が。


 しかし、何時までも答えないわけにはいかない。


 少し、いや、かなり不安だが、ここまでくる間に考えておいた返答を思い切って口にする。


「じ、実はそのことなんだけど・・・・・・・・俺、記憶が無いんだ」


 そう、俺が導き出し答えとは、まさかの『記憶喪失(きおくそうしつ)』ネタである。


「記憶が、無い?」


「おい、ソウジ。それ、本当なのか?」


 テムロとクロードは二人揃って、変な顔になる。


 具体的には、『( ゜д゜)ポカーン』こんな感じ。


 そうですよね。普通そうなりますよね。


 だが、ここで記憶喪失だと言い張っておかないと、後々面倒なことになる。


 皆が知っているような知識が俺にはないことを指摘されてしまえば、俺は直ぐに不審者にされてしまうからだ。


 得体の知れない人間が直ぐそばにいたら当然不安になる。


 不安が大きくなれば、その内その不安が爆発して警察などに連絡して捕まえられてしまうかもしれない。


 警察があるのか知らないけど。


 とにかく、ここは身の安全を確保するためにも、この茶番をやり遂げなければならない。


「目が覚めた時に直ぐに言おうとしたんだけど、こんな話、ましてやよそ者の俺の話なんて、その、信じてもらえないんじゃ・・・・・ないかって・・・・・思って・・・・・」


 出来るだけ悲壮な顔と声を意識して、ついでに顔も若干うつむき気味に演出。


「・・・・・・じゃあ、このレヴィア大陸の事を知らないのも、そもそも記憶がないから、てことなのか?」


「・・・・・・ああ」


「おいおい、この大陸を知らないって、本当か?」


 クロードは俺ではなくテムロに聞く。


 俺ではなくテムロに聞くあたり、もはやクロードの中での俺は完全に怪しい奴認定だろうな。


「本当だ。少なくとも、本当にこの大陸の事は何も知らないみたいだ」


「マジかよ、おい」


 意識してないだろうが、ナイスフォローだテムロ!


 クロードも顔なじみからの言を受けて、真実味が出てきたのか、驚愕している。


 これはチャンスだ。この流れに乗って一気に仕掛けるぞ!


「騙すような形になって、すまない。けど、怖くて、不安でしょうがなかったんだ。目が覚めたら知らない場所で、知らない人間がいて、何が起きたのかも思い出せない。唯一覚えてるのは、自分の名前と、僅かに残ってる記憶の断片ぐらい」


「じゃあ、ソウジが言っていた、えっと、ニホン?てのは」


「ああ、記憶の断片に日本って国があったんだ。もしかしたら、それが自分の故郷なんじゃないのかって」


 こじつけみたいになったが、これで起きた時に話した日本の事に対する言い訳を作っておく。


 すると、これまで俺に話を振ってこなかったクロードが、俺に向けて質問してくる。


「・・・・・・何時から記憶が無いんだ?」


 これは・・・・・信じ始めてくれてるのか?


 いや、まだ油断するな。ここは気を緩めず慎重(しんちょう)に話を進めていこう。


「気が付いたら森で目が覚めて、起きた時には何も思い出せなかった。それからすぐに、あの、レッグボア?に追いかけられたんだ」


 ここの部分はほぼ事実を語っておく。


 案の定これに反応したのはテムロだ。


「じゃあお前、あの時一緒に逃げてた時からすでに記憶が無かったのか!」


「あぁ」


「そう、か・・・・・」


 俺の境遇(きょうぐう)がショックだったのか、テムロはそのまま黙り込んでしまった。


 テムロが黙ってしまった為、その場を静寂(せいじゃく)が支配する。


(く、空気が重い!)


 自分で話しておいてなんだが、ここまで空気が重くなってしまうのは想定外だ。


 ここは少しでも明るく振舞って場を温めよう。


「けど、テムロに出会えてよかったよ!」


 俺は無理やり声を大きくしてテムロに話しかける。


「え?」


 これに黙っていたテムロから反応が返ってくる。


「見ず知らずの俺を介抱(かいほう)してくれたり、分からないことを親切に教えてくれたり、本当にテムロみたいないい奴に出会えて、よかったよ」


「ソウジ・・・・お前・・・・」


「テムロが傍にいてくれなかったら、きっと今頃、パニックを起こして泣き叫んでいたかもしれない。テムロがいてくれたから、俺は今こうして無事でいられる。テムロ、本当にありがとう」


 恥ずかしいことだが、これは俺の本心だ。


 テムロがいなかったら本当に途方(とほう)に暮れていただろう。


 だから感謝の意味を込めて、テムロに向けて頭を下げる。


「や、やめろよ!頭上げろって!」


 頭を下げる姿を見てビックリしたのか、テムロは狼狽(うろた)える。


 頭を上げてテムロに顔を向けると、目を逸らしてしまう。


「べ、別に、困ってたら助けるのが普通だろ?特別な事じゃない。だから、いちいち感謝なんてするなよなっ!」


 ツンデレか。男のツンデレって需要(じゅよう)あるのか?


 しかし、ここはちゃんと言葉にして伝えよう。


「それでも、俺は感謝してるんだ。だから、ありがとうテムロ」


「ふ、ふんっ!」


 遂に照れてそっぽを向いてしまった。


 このリアクションを男ではなく、美女美少女で見たかったよ、とは言うまい。


 しかし、これでテムロの方は大丈夫だろう。問題はクロードの方なんだが・・・・・


「そ、ソウジ・・・・お前、苦労してたんだなぁ~・・・・うぅ~」


 と、思っていたら、いきなりクロードが泣き始めたぞ?


 つか、泣くような話かこれ?


 言っちゃ悪いがこんなの、小学生が書いたお芝居以下の茶番だぞ。


「な、泣くことないだろ?」


「お、俺はこう言う話に弱いんだよぉぉ~」


 マジか。弱いにも程があるぞ。一体どんな感受性(かんじゅせい)なんだよ。


「グスッ、話は分かった!俺も力になるぜ!」


「え?い、いいのか?」


「ああ!記憶が無いのなら生活していくにも何かと不便だろ?俺が教えてやれることは何でも教えてやる。だからいつでも頼りな!」


 お、おおっ!マジか!


 こんなご都合展開あっていいのか?いや、いい!


 ご都合だろうが何だろうが関係ない。今は一つでも問題が解決してくれるなら、何でもいい!


「ありがとう、クロードさん」


「さん、なんて付けるな。クロードでいいぜ」


「ああ、分かったよ、クロード」


 改めて握手を交わしあう。


 良かった。これでしばらくは大丈夫そうだな。


 後は変なボロが出ないように気を付けよう。


 そう今後の事を考えていると、二階から降りてくる足音が聞こえてくる。


 降りてきたのは、クロードと同じぐらいの中年のオッサンだった。


「何だ。話し声が聞こえると思ったらテムロじゃないか」


「コークおじさん。お邪魔してるよ」


 なるほど。この人がコークさんね。


「ん?そっちの見ない顔は誰だい?」


「こいつはソウジ。森でレッグボアに襲われたところを助けてくれてんだ」


 助けたつもりは無いんだがな。


「レッグボアからか?よく生きてたな」


「ソウジが一発で倒したんだよ!」


「へぇ~そいつはすごいじゃないか!」


「だろ?」


 何でお前が自慢げなんだよ。


「けどこいつ、記憶喪失なんだよ」


 え?いきなりそれ話すの?


 あんまり言いふらされるとボロが出そうなんだけど。


「記憶喪失?そりゃ大変だ!何か困ったことがあるなら言いなさい。微力ながら力になるよ」


 嘘だろ?そんな簡単に信じるの?


 もしかして記憶喪失って珍しくない?


「ありがとうございます。そう言ってもらえて有難いです」


 この村、いい人が多すぎやしないか?いい人村に改名することをオススメするわ。


「しかし、記憶が無いなら何かと不便だろ。教えられることがあるなら教えるよ?」


「それなら、クロードが協力してくれるから問題ないよ」


 と、横からテムロが話に加わる。


 しかし、クロードは二人からもかなり信頼されている様子だが、何者なんだ?


 クロードが協力してくれることに対し、コークさんはなら大丈夫だろうと言った顔をしている。そこまで信頼されってるって、クロードは学者か何かか?そんな風には微塵(みじん)も見えないが。


「クロードがいれば、私が出る幕はないな」


 だが、俺の考えを他所にコークさんは一人納得する。


「おうよ!俺に任せときな!」


 ドンッ!と自信満々に胸を叩くクロード。


「クロードはそんなに物知りなのか?」


「まあな。何せ、俺は『ハンター』だからな!」


「ハンター?」


 ハンター・・・・猟師(りょうし)


「狩りでもしてるのか?」


「ははっ!違う違う。ハンターてのは、世界の探求者(たんきゅうしゃ)さ!」


「探求者?」


 なんだそれ。意味が分からん。


「クロード、それれじゃ記憶が無いソウジには分からないよ」


 混乱している俺を見かねてテムロが助け舟を出してくれる。


「あのなソウジ、『ハンター』て言うのは『冒険者』とも言われている職業の事だよ」


「冒険者・・・・・」


 ・・・・・・オタクな俺の心を揺さぶるワードが来ちゃったよ。

今回はここまでです。


最近寒いせいか、久々に風邪を引きました。


皆さんも体調には気を付けてくださいね。



PS グラブルの古戦場が始まり、忙しい。禿げる。

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