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異世界リベンジ! ~前世の借りをヤリ返す~  作者: 神ノ味噌カツ
第一章
18/74

15 消えゆくモノ

「・・・・・・・」


 体中を刃で傷つけられ、自身の体から流れ出る血の海の中に横たわるモーガン神父はピクリとも動かない。


 その瞳は大きく見開き、光が失われ何もその瞳は捉えていない。


 一目見ても分かる程、モーガン神父は絶命していた。


「そ、んな・・・・・神父、さま・・・・・」


 誰にでも優しく、誰からも慕われているモーガン神父。


 シェスタ自身も、そんなモーガン神父を心から尊敬し、慕っていた。


 そんなモーガン神父が慈悲もなく、あっさりと殺された。


(なんで?どうしてこんなことにっ!)


 シェスタの腕の中にいるコロワは神父の成れの果てを見て、その身を震わせている。


「あ・・・・・」


「コロワ!」


 小さな声を漏れると同時、体の震えが止まったかと思うと、コロワは目の前の現実を拒絶するかの様に気を失った。


「コロワ!しっかりしてコロワ!!」


 何度呼びかけてもコロワは目を覚まさない。


 その姿をあざ笑うかのように、神父を殺めた男達が一歩一歩、シェスタへと近づいてゆく。


 まるで、震えるて動けなくなった獲物を追い詰めていくのが楽しくてしょうがないと言った様に、ニヤニヤと下卑(げび)た笑みを浮かべながら、ゆっくりと近づいて行く。


 そんな男達の姿にシェスタは恐怖した。


 モーガン神父は殺され、コロワは気を失い、武器を持った男達が徐々に近づいて来る。


 背には壁。逃げ道などない。


 仮に逃げ道があったとしても、気を失ったコロワを抱えたまま逃げ切れるとは到底思えない。


(どうすれば・・・・・どうすればいいのっ!)


 このまま捕まればどうなるか、殺されるか、それとも、死ぬよりも辛い思いをするのか。


 考えれば考えるほど、シェスタの頭は混乱してまともな思考が出来なくなる。


「さぁて、もう逃げられねぇぜ?」


 逃げ出すこともできぬシェスタに、ついに男達の手が伸びた。


「い・・・・イヤ!!」


 その魔の手から逃れようと体を動かすが、即座に男達に腕や足を掴まれ身動きが取れなくなる。


「嫌っ!離して、離してっ!!」


 拘束から逃れようとするが、華奢(きゃしゃ)なシェスタでは武骨な男達から逃れることなど到底できない。


「暴れるんじゃねぇよ!」


 パンッ!


「ッ!」


 暴れるシャスタにイラついた男の一人がシェスタの頬を叩いた。


 叩かれた頬がジンジンと熱を帯びて痛む。


 それだけでシェスタは完全に恐怖に飲まれ、体が動かなくなった。


「へへ、やっと大人しくなりやがったか。面倒掛けさせやがって・・・・・・オラ!こっちに来いっ!!」


 グイッと腕を強引に引かれて聖堂の中央まで無理矢理引っ張られる。


「きゃっ!」


 中央に到着するなり背中を強く押され、その勢いで床に倒れ伏す。


 そこに小脇に抱えて運ばれてきたコロワも一緒に床に転がされる。


「コロワ!」


 呼びかけるも未だコロワは意識を失っているのか、目を覚ます気配が無い。


 ぐるりと視線を向ければ、男達はシェスタとコロワを囲む様にして逃げ道を塞いでいる。


 男達の包囲の輪が一部解かれ、そこから一人の男が歩み出た。


「よぉ、お嬢ちゃん」


「っ!」


 獰猛(どうもう)な笑みを浮かべながら、その体から他の男達とは明らかに違う威圧感を放つ男、先程デップと名乗ったこの盗賊団を率いる男が、シェスタとコロワを見下ろしていた。


「報告で聞いた以上にいい女じゃないかぁ」


「ひっ!」


 その獰猛な瞳を向けられただけで、シェスタの体はビクリと震えた。


「俺はこっちの、ちっこいのが好みだなぁ、へへ・・・・」


「そうだな、たまにはこんぐらいのガキも悪くないかもな」


「お前らマジかよ。せめてもう五年ぐらいは様子見だろ・・・・・・まあ、確かに顔は悪くないな。身体つきも、まあ、いいんじゃないか?」


「て、ノリノリじゃねぇか!俺は断然こっちの乳デカシスター一択だな!今すぐにでもしゃぶりつきたいぜ!」


「シスターってことは、まだ経験が無いって事だろ?そそるねぇ」


 口々に男達が騒ぎ始める。あまりにも下賎(げせん)卑猥(ひわい)な会話だ。


「お前ら、少し静かにしろ。これじゃ話が出来ねぇだろうが」


 デップの一言で男達が下賎な会話を止めて黙る。


「急に押しかけて悪かったな。俺達も色々と事情があってな、気が急いていたんだ」


「じ、事情?」


 コクリと頷き、膝をついてシェスタの顔を覗き込むように近づく。


「それはなぁ・・・・・・」


 シェスタの瞳に映るデップの顔がニヤァと口が裂けんばかりに開く。


「この村を滅茶苦茶にしたくて我慢できなかったからさぁ」


「っ!!」


 顔を離し、再びデップは立ち上がってシェスタを見下ろす。


「俺は自分の欲に忠実でな、我慢なんてしないのさ。だってそうだろ?我慢なんてしてもイライラして頭が爆発しそうになる・・・・・・だったら、素直に己の欲に従った方がイイに決まっている。だから、俺は奪う。殺す。犯す。自分の欲を満たすためになんだってする」


 ギラギラとドス黒い欲望に染まった瞳が、シャスタの身体を舐める様に動く。


 シェスタ達を囲む男達に向けて、デップは高らかに宣言する。


「さあ、お前ら!久々の上玉だ、思う存分楽しめ!!」


『イェーーー!!!』


 男達がその宣言を受け、一斉に沸き立つ。男達は我先にとシェスタに群がる。その魔の手はシェスタだけではなくコロワにも向けられて―――――


「止めて!コロワに触らないで!!」


 シェスタの願いも虚しく、男達の未だ意識が戻らないコロワへと近づいて行く。


「おいおい、人の事を心配する前に、自分の心配をした方がいいんじゃないか?」


 デップはシェスタの両手を頭の上に片手だけで抑え込えこむ。


「やっ!」


「そそるねぇ・・・・・・怯えた顔もいいじゃねえか」


「いや、痛い!止めて!!」


「暴れるな。おい、押さえてろ」


 近くにいた部下の一人にシェスタを押さえさせ、デップはシェスタの胸倉を掴む。


「うっ!」


 掴んだ胸倉を勢いよく引いて服を裂いた。


「いやぁぁぁぁ!!」


 抵抗しようと暴れるシェスタの足をデップが押さえつけ、抵抗できないようにする。


「お、お願い、します・・・・・どうか・・・・・助け・・・・・・」


 シェスタの懇願(こんがん)にデップは笑みをより一層深める。


「喜べ。この俺が、お前の初めての男になるんだ・・・・・・たっぷり、可愛がってやるよ」


「いやぁ・・・・・お願い・・・・・・や、やめ・・・・」


 涙で視界が歪む中、デップの手がシェスタの肌に触れようとした瞬間―――――


 バンッ!!



「止めろ、このクソ野郎がああぁぁぁぁ!!!」



 教会の正面扉が勢いよく開かれ、一人の男が駆け込んできた。それに続くように後ろから、別の男二人が教会内に駆け込んできた。


「あぁん?」


「あ・・・・・・」


 突然の侵入者に思わず手を止め振り返ると、叫び声をあげて入ってきた男と視線が合った。


「てめぇ、今すぐシェスタから離れろ!!」


 その男の顔を見たシャスタは喜び、男の名を口にする。


「テムロ!!」



                 *



 陽が沈み辺りはすっかり暗くなった道を、木材を乗せた荷車を引きながら俺達は歩く。


「思ったより時間が掛かったな」


「早くこいつを教会に置いて帰ろう。俺腹減ってきた」


 教会に着くと入り口近くに荷車を置く。


「これでよし。シェスタ達を呼んで帰ろうぜ」


「そうだな」


 俺達はシェスタ達を呼ぶ為、教会の入り口に向けて足を向ける。


「待て」


 クロードの声に歩きかけた俺とテムロの足が止まる。


「何だよクロード。どうしたんだ?」


「何か変だ」


「ん?何かって、何だよ」


 辺りを見渡しても月明りに照らされた森と教会以外特にこれと言ったものはない。


「特に何もないと思うけど?」


「・・・・・・・教会に明かりがついてない」


「え?」


 テムロに言われて改めて教会に目を向ける。


 確かにテムロの言う通り、教会の窓からは明かりが灯っている様子は見受けられない。


「もう暗くなってるんだ、ランプの一つも点けていないのはおかしい」


「モーガン神父の部屋にいるだけじゃないのか?」


 モーガン神父の部屋は教会の裏口の近くにある。俺達は今入り口の方にいるから当然そちらの様子は此処からでは窺えない。


「・・・・・・・・・それだけじゃない。中から人の気配がする。それも、十人以上はいるぞ」


「村の人・・・・じゃない、よな?」


「ああ、この時間帯に教会に足を運ぶ人はいない。殆どは仕事が終わって家の中だ」


「じゃあ、一体誰が・・・・・」


 クロードが正面の扉に近付く。俺とテムロもその後に続く。


 クロードが扉に手を掛け、少しだけ扉を開けて中を覗き込む。俺とテムロもその隙間に顔を寄せて中を覗き込む。


「なっ!」


 覗き込んだ教会の中は薄暗いが、窓から差し込む月明りでかろうじて中の様子が窺えた。


 そんな教会の中はとんでもない事になっていた。


 薄汚れた格好をした男達が数十名、各々手に剣やナイフといった得物を握りしめていた。


「っ!シェ、むぐっ!」


「騒ぐなっ」


 叫びそうになったテムロの口をクロードが慌てて塞ぐ。


 だが、テムロが叫びたくなるのも分かる。何故なら男達の真ん中にはシャスタとコロワがいたからだ。


「あいつら、一体・・・・・」


「・・・・・・・・赤蜘蛛だ」


「赤蜘蛛って、クロードが追っていた・・・・・」


「ああ・・・・情報通りなら、あそこにいる男がこの盗賊団のリーダーのデップだ・・・・・クソっ!奴ら、まさかこっちに向かっていたなんて!」


 自分の判断に後悔するクロードを嘲笑うように、目の前の男達はシェスタとコロワに襲い掛かった。


 コロワは気を失っているのか、ピクリとも反応しない。


 男達がコロワへと迫る。


 それを「止めて!」とシェスタが静止の声を上げるが、シェスタ自身もデップとか言うやつに押さえつけられて身動きが取れない。


 デップがシェスタの服を強引に破り、その手がシェスタへと伸ばされる。


「ンン~~~!!!」


 それを見たテムロがクロードの腕の中で激しく暴れ回る。


「待て!シェスタ達が人質に取られてるんだ、せめて奴らに隙が出来るまで・・・・」


 暴れるテムロをどうにか押さえつけようとするが―――――


「っ!」


 クロードの手に思いっきり噛みつく。


 手を噛まれた痛みで拘束が一瞬緩んだ隙に、テムロはクロードの手から逃れ、扉を押し開いて教会の中に駆け込んでしまう。


「テムロ!」


「クソッ!」


 俺とクロードも慌ててテムロの後を追い教会の中に駆け込む。



               *



 テムロの静止の声に不機嫌さを隠すことなくデップはテムロを睨みつける。


「おい・・・・・今いいとこなんだよ。邪魔だ、消えろ」


 そこらにいる人間ならこのデップの一言だけで怯むのだが、シェスタを辱められた怒りで頭に血が上っているテムロには意味がなかった。


「シェスタから離れろ!」


 今にも跳びかかりそうな勢いでデップに近付いて行く。


「テムロ待て!」


 追いついてきたクロードに肩を掴まれ、その場で足を止めさせられる。


「クロード、離せっ!」


「・・・・・クロード?」


 デップはクロードの顔を見て、なるほどと一人納得した。


「そうか、お前がクロード・・・・・知ってるぜ、『炎剣』なんて大層な二つ名で呼ばれてるそうじゃねぇか」


(クロード・・・・・二つ名なんてあったのか・・・・)


 総司の場違いな思考を置いて会話は続く。


「俺達を追っているハンターがいるのは知っていたが、まさかお前さんだとはな」


「・・・・・・二人を離せ」


「ハァ?この状況でそんな真似をする馬鹿がいるかよ・・・・・おい」


「へいっ」


 その一声だけでデップの言わんとすることを察したのか、男の一人がシャスタの身体を起こして、首筋に短剣を突きつける。


「お前達こそ、そこで大人しくしていろ。じゃないと可愛いシスターさんがあんな風になっちまうぞ?」


 そう言ってデップは聖堂奥に横たわる死体を指さす。


「貴様ッ!!」


「う、嘘だろ・・・・・」


「モーガン神父!!!」


 そこには、モーガン神父が血を流して倒れていた。


「二人を守るのに必死だったぞ?まあ、無駄な努力だったがな」


 それを聞いて男達は一斉にゲラゲラと笑い出す。


「て、てめえぇぇぇぇ!!」


 肩に置かれたクロードの手を振り払い、テムロは拳を固く握りしめてデップ目掛けて一直線に駆け出す。


「待て!止めろテムロ!!」


 テムロはクロードの停止の声を無視して突き進む。


(こんな奴に、シェスタを好きにされてたまるかっ!)


 テムロの内にどうしようもない程の怒りがこみ上げ、テムロの身体を突き動かす。


(シェスタは・・・・・俺が、守るんだ!!!)


 デップの近くに控えていた男がその進行を止める為に歩み出ようとしたが、デップに手で制されて足を止める。


「貸せ」


 脚を止めた男の腰にぶら下げている剣の柄を握ると、剣を引き抜くと同時に、今まさにデップを殴り飛ばさんと接近したテムロに向けて、その凶刃を振り抜いた。


「あ」


 放たれた刃はテムロの右肩から斜めに切り裂き、テムロは勢いを無くしてその場に倒れ伏した。


「テムロ!!!」


 切られて倒れ伏すテムロの姿を見て、シェスタが悲痛な叫びをあげる。


 それと同時に総司はテムロの元に駆け出す。


「ソウジ!ぐっ!」


 駆け出す総司を追おうとしたが、いつの間に近づいたのか、四人の男達にクロードは囲まれ刃を向けられる。


 追うことを止められてしまったクロードをしり目に、テムロの元に駈け寄った総司は、倒れるテムロの身体を抱き起す。


 腕の中で眼を閉じてぐったりとするテムロの身体から、デップの手によって傷つけられた傷口からドクドクと赤黒い血が止めどなく流れる。


「テムロ、しかっりしろ!」


 総司の呼びかけに反応してテムロの瞼が力なく上がる。


「そ・・・・・うじ・・・・・・」


 テムロはぼやける視界の中に総司の姿を見つけると、何かを求める様に総司へとヨロヨロと手を伸ばす。


 伸ばされた手を総司が掴む。するとテムロは、総司に聞こえるか聞こえないかというぐらい小さな声で囁いた。


「わ、悪い・・・・・そう・・・じ・・・・・馬鹿、やっち・・・まった・・・・・」


「テムロ!」


 握ったテムロの手から徐々に温もりが消えていく。


「そう、じ・・・・・・たの・・・・・・シェス、タ・・・・・守っ・・・・・・・・・」


 最後まで言い終わる前に、テムロの瞳から光が消えていった。


「・・・・・・テムロ?」


 答えはない。


「・・・・・・冗談、だろ?」



 そこには光を無くした空虚(くうきょ)な瞳が、総司の姿を映しているだけだった。


「テムロォォォォォ!!!!」


 この世界で初めてできた友と呼べる人間が、総司の腕の中で――――――死んでいった。

遂にゴールデンウイークだーーーー!!!・・・・・・・・何処も彼処も店が閉まっている。


この状況で何をしろと?

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