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異世界リベンジ! ~前世の借りをヤリ返す~  作者: 神ノ味噌カツ
第一章
13/74

幕間02

 大学に入学して早一週間。まだまだ不慣れな大学ライフを過ごしていた俺は、講義(こうぎ)が終わってそうそう、アニ研(アニメーション研究会)に顔を出していた。


「やっぱ、この十話の作画はヤバいよな?もはや神作画だよ」


「そうですね。作監の本気度が分かる回ですもんね」


 俺は今、このアニ研に誘ってくれた先輩、白石(しらいし)先輩と『魔法少女☆ロジックロジカル』をPCで視聴していた。


『魔法少女☆ロジックロジカル』は二年前に放送されたアニメで、オタク界の革命的な魔法少女ブームの切っ掛けになったアニメだ。


 白石先輩は、この『魔法少女☆ロジックロジカル』通称『ロジロジ』の大ファンで、こうして周りのオタク仲間にオススメする為に、鑑賞会(かんしょうかい)を開いたりするのだ。


 まあ、殆どのオタク仲間は『お前に何度も見せられたから、当分魔法少女はいいや』と言って鑑賞会には参加しないのだが、俺はそうでもないので、こうして鑑賞会に参加している。


「やっぱいいよな~ロジロジ。ミカちゃん、ガチ恋だわ」


「俺はどっちかって言うと、マリコちゃんですね」


「ああ~分るわ~マリコちゃんもいいキャラしてるしな」


「ミカちゅんとの絡みがてぇてぇ過ぎて魂が昇天するレベルなんですよね~」


「それな」


 キモオタトークで盛り上がるオタク二人。


「・・・・・・・・俺はメルディル派だな」


 と、窓際の椅子に座りながら携帯ゲームをいじっているメガネ男子、このアニ研の部長である大元(おおもと)先輩がポツリと漏らす。


 因みにマリコちゃんが主人公でミカちゃんがその親友、メルディルが悪の組織の冷酷なドS女幹部だ。


「さすがMな部長、Sなメルディル推しですか」


「勘違いするな、俺はMじゃない。至ってノーマルだ。メルディルは一見冷酷なドS女王風に見えるが、それは他の幹部達や部下共にナメられない為に、あえてそうやって虚勢(きょせい)を張っているに過ぎない。本当のメルディルは惚れた男に尽くすし、惚れた男の為に何でもするタイプだ」


 言われれば、そう言ったニュアンスを漂わせているシーンがいくつかあったな。流石部長。


「そして、メルディルの弱点は『尻』と見たっ!」


「・・・・・・・・・それ、部長の願望(がんぼう)ですよね?」


「そうとも言う!」


 拳を天に掲げて力強く宣言する我らがアニ研部長。


「駄目だこの人、早く何とかしないと」


 白石先輩のため息交じりのセリフが漏れる。今に始まったことではないので、俺はもう諦めている。


「そんなに変態属性全開にしてると、入部希望者が出てきませんよ?」


「ふむ、確かに先輩達が引退したことで、今や我らがアニ研は風前の灯。このままでは自然消滅も有りうるか・・・・・」


「勧誘活動でもしますか?」


「いや、入学式が終わって一週間だぞ?もう手遅れだろ」


「それを言うんじゃない馬鹿者」


『ハァ~・・・・・』


 重いため息が三人の口から洩れる。


 と、そんな時だ。


 コンッコンッ・・・・・・


 部室のドアが控えめなノックの音を鳴らした。


「ん?」


 もう講義が終わってからそれなりに時間がたっている。大体の人は各サークルに行っているか、グループを組んで遊びに行っていそうな時間。ましてやこのアニ研にはサークルメンバー以外人が来ることなど滅多にない。


「はい、どちら様で?」


 部長がドアを開けると、そこには目を見張るような美少女が一人戸惑いながら立っていた。


 俺はその美少女を見て、内心驚いた。


 何故ならその美少女は、一週間前に見たテニサーのチャラ男に絡まれていた女の子だったからだ。


「えっと、何か御用で?」


 部長は目の前の美少女に困惑しながら要件を聞く。


 すると、美少女は緊張しているのか、声を震わせて応える。


「あ、あの。ここ、アニメーション研究会ですよね?」


「え、ええ。そうですが」


「もし、よかったら、その・・・・・私を仲間に入れてください!」


 そう言って頭を下げる美少女。スカートをぎゅっと握る手が緊張で震えているのが見える。


「それは、うちに入部したい、と?」


「は、はい!」


 頭を上げて部長に応える。その瞳には強い意志の様な光が(うかが)える。


「ふむ・・・・・・とりあえず、中に入って」


 部長は少し考えてから、美少女を部屋へと促す。


「は、はい」


 それに素直に従い、美少女も部屋に入りドアを閉める。


 白石先輩が俺に近付き小声で話しかけてくる。


「なあ、この子滅茶苦茶可愛くないか?こんな子が入部してくれたらヤバいぞ」


「まあ、そうですけど。今は部長の判断に任せましょう」


「そうだな」


 そんなやり取りをしていると、部長が美少女に自己紹介をする。


「俺はこのアニメーション研究会の部長を務めている、大元輝明(てるあき)。こっちが部員の白石恭介(きょうすけ)と天野総司だ。君は?」


 部長は俺達を紹介すると、美少女に自己紹介を促す。


「は、初めまして。天霧美里(あまぎりみさと)です」


「では、天霧君。もう一度確認するが、入部希望で間違いないね?」


「はい」


「ふむ・・・・・・うちは見ての通りのオタクサークルだ、正直、君の様な女子が入部したいと言われても、困惑する。何か理由があるのなら教えてもらえないか?」


 それはもっともな疑問だ。人を見た目で判断してしまうのも悪いと思うが、彼女の様な可愛い女子が、こんな世間から犯罪者予備軍などと言われる連中がいるサークルに来る理由が思いつかない。


 暫く天霧さんは口ごもっていたが、腹をくくったのか、意を決して話始める。


「実は私、中学のころから、その、オタク趣味で・・・・・けど、周りの皆はアニメとか漫画とかには興味なっくて、それどころか奇異(きい)の目で見るぐらいで・・・・・だから、今までそう言ったことを隠して生活してたんです」


 なんと、彼女は隠れオタクだとカミングアウト。


「確かに、オタクは世間からは嫌われ者の存在だからな。特に思春期にそれがバレればボッチ確定になるだろうな」


 白石先輩の言う通り、バレれば即のけ者扱い、最悪いじめの対象間違いなしだ。


「だから、今まで隠してきたんですけど、やっぱり好きな事を好きだって言えないのが嫌で・・・・だから大学に入ったら、それを隠すのを止めて、堂々としていたいって・・・・・」


「それで、まずはこのサークルに入ることから始めようと?」


「はい」


「なるほど・・・・・・」


 部長は考えを巡らせているらしく、沈黙。しばらくして部長が口を開く。


「もう一度だけ確認する。本当にこのサークルに入りたいと?」


「はいっ!」


 再度入部希望か確認を取ると、天霧さんは力強く答えた。


 それを受けて、部長は頷く。


「では、入部条件としていくつか質問をする。その質問に答えられたら入部を認めよう」


 は?何だその条件。俺が入部する時はそんな条件なかったぞ。


 てか、今の流れならそのまま入部を認める流れだったろうが。


「ち、ちょっと部長、何ですかその条件ってのは」


 部長の袖を引っ張ってこちらに引き寄せて小声で問いかける。


「俺が入る時はそんなのなかったじゃないですか」


「そうですよ。どう言うつもりですか部長?」


 俺と白石先輩が困惑気味に問いかけると部長は真剣な目で口を開く。


「馬鹿者。こんな美少女がうちの様なオタクサークルにわざわざ入部したいと思うか?」


「いや、さっきの話聞いたでしょう?何が不満なんですか?」


「話は理解した。だが!こんな美少女が本当にうちに入りたいと思うか?答えは否だっ!」


 どうしてそうなる?


「きっと裏があるはずだ」


「裏?」


「そうだ。オタクならコミュ症だから、自分みたいな美少女が持ち上げてやれば金を貢ぐようになるだろうと」


 この人は・・・・・・


「いや、さすがにそれは・・・・・」


偏見(へんけん)じゃないですか?」


 コミュ障ここに極まれり。


「いいからお前達は黙って見ていろ」


 そう言ってこちらの様子を窺っている天霧さんに向き直る。


「では、質問だ!」


「は、はい!」


 部長の合図にビシッと姿勢を正す天霧さん。


「問一、週刊少年バッツで連載している『ブリーフ』の主人公、尊那(そんな)バナナのブリーフの色は!?」


 何言ってんだこのクソ部長!!


「茶色です!!」


 そしてなぜ答えられる!?


「ふむ、正解だ」


「やった!」


 いや、天霧さん?可愛らしく拳を握って喜んでますけど、週刊少年バッツってかなりマイナーな週刊誌だからコンビニとかでは見かけない雑誌なんだが・・・・・


「では次だ!アニメ『ノッポの青春』で主人公の親友、アヘーンの口癖は!?」


 またマニアックな物を!しかもその答えは女の子に言わせるのは・・・・・・!!


「『あっ、イッちゃった・・・・・・』です!!」


 おいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!


「・・・・・・やるな」


「・・・・・・部長こそ」


 ヤバい、頭痛くなってきた・・・・・・


「ならば!次は―――――――」


 そうして、激しい問答が繰り広げられてから二十分後・・・・・・


「我が問いに全て答えるとは・・・・・認めよう。我がアニ研に入る資格があると!」


「ありがとうございます、部長!」


 ガシッ!


 死闘を繰り広げた末、お互いを認め合い熱き友情に目覚めた戦士(重度のオタク)が、笑みを浮かべて握手を交わす。


「本日をもって、天霧美里君は我らアニメーション研究会の一員だ!!」


「よろしくお願いします!」


 部長は俺と白石先輩に振り返り高らかに宣言し、天霧さんは頭を下げる。


 そして、俺と白石先輩は・・・・・・・


『ああ・・・・・そっスか』


 としか言えなかった。


 こうして、訳が分からない内に新人部員天霧美里はアニ研に入部することになった。

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