7:人種差別者を殺そう!
たまにあとがきで凄い長く評価とか求めてる人いるじゃないですか。あれどうかと思いますよね~
人身売買オークションの襲撃から一週間後。俺は冒険者ギルドの待合室に用意させた高級ソファに座りながら、各地から取り寄せさせた新聞を読んでいた。
そこには、
『領主、遺体で発見! 見つかった屋敷には人身売買についての資料が!』
『実在していた人身売買オークション!? 多くの大臣や官僚が関わっていた疑惑について、女王陛下はノーコメント』
『薬物乱用パーティーの存在も明らかに! 闇営業していた女芸人が告白“とあるクズ領主に脅されてキメセクされた”』
などなど、週が明けても権力者どもをブチ殺してやった件が連日取りざたされ、それに伴い様々な醜聞が世に流出され始めていた。
まっ、数百体も死体を作ってやったんだから隠蔽のしようがないよなぁ! ド派手な事件には当然大量のマスコミが食い付くし、国のほうも突然数百人の権力者が消えちまったとなれば、大混乱すぎて圧力をかける暇もないだろう。
いやぁー面白いことになってきたなぁと笑う俺に、肩を揉んでいたベアトリーチェ(クズ領主)が媚びた笑顔ですり寄ってきた。
「へへっ、へへへへへ! 流石は正義の英雄レイン様ですわねッ! 税金が悪いことに使われていた件について、民衆たちは激おこですわ! これは各地で反乱が起きそうですわねっ、全てはレイン様のおかげですわ!」
「そうだなベアトリーチェ。ところでもうすぐ領主の仕事を覚え終わるから、お前はそろそろ葬式の準備をしておけよ?」
「仕事引き継いだら殺す気マンマンッ!? ……い、いやですわよぉレイン様! 協力して悪い奴らをやっつけた仲じゃないですか~!」
「お前は女装した俺を見て興奮しまくってただけだけどな……」
すでに殺すか否かではなく、どう殺すか考える段階に入ってるんだが、ベアトリーチェはまだまだ諦めていないようだ。涙目になりながらキスしてきたり乳を押し付けてきたり足をペロペロしてきたり脱いだパンツを押し付けてくる(なんで濡れてんの?)必死過ぎる29歳独身女性の姿は、なんというかもう憐れすぎて見ていられなかった。
「可哀想に……今すぐ殺してやるからな……」
「うぎゃぁッ!? 逆効果だったー!?」
始末してやろうとすると無駄に早いスピードで逃げていくベアトリーチェ(ノーパン)。……まぁ、あの残念無双な女は権力と金を失った状態で生きているほうが世の中生き地獄っぽいので、もうそれでいいかもしれない。
さてと。俺はベアトリーチェからもらったパンツに彼女の名前を書いてギルドの落し物箱に投入すると、孤児院の様子を見に行くことにした。
預かってる子供もだいぶ増えてきたし、それに例の人身売買オークションの場から救出してきた『魔族』の女の子たちも仲間入りしたからな! みんな仲良くやってるかな~と!
◆ ◇ ◆
――『魔族』。それは何らかの理由によって翼や尻尾が生えているなど、魔物のような身体的特徴を持って生まれてしまった人間たちの俗称である。
かつてより魔族の者たちは忌み嫌われ、産まれた瞬間に忌み子として親に殺されるか、あるいは変態的な性癖を持つ貴族の下に売り飛ばされ、ペットのように飼われてきた。
どちらにせよ、人間的な扱いは望めないのが彼らの実情である。
それゆえに、人身売買オークションにてレインに保護された子供たちもまた、どのような扱いを受けるのか戦々恐々としていたのだが……、
「ねぇ、いっしょに遊ぼうよっ!」
「えっ……でもわたし、魔族だし……」
「大丈夫! 『差別していいのは敵国エリシオンの奴らだけだ』ってレイン様が言ってたから!」
――連れられてきた孤児院での生活に魔族の少女たちは驚いた。周囲の子供らは分け隔てなく仲良くしてくれて、毎日お腹がいっぱいになるまで温かな食事を取らせてくれるのだ。
清潔なベッドで毎晩眠れる夢のような生活に、今まで虐げられて育ってきた少女たちは心から涙した。
さらに驚いたのが、ゴブリンの群れや伝説の魔物ベヒーモスが、孤児院の教育係を行っていたことである。
彼らは子供たちと遊びながら少女らに楽しげに語る。
『ギギャギャッ、人間の飯、ウマいッ! 悪いコトしたらレイン様にブッ殺されるけど、イイコトしてると褒めてくれる!』
『うむ! レインにボコられて無理やり連れられてきたのだが、なかなか充実した日々を送らせてもらっているぞ! 我らの陰口を叩く者はレインが全員殺したからいないし、森で木の実を食ってるよりもヤツがたまに作ってくれるケーキのほうが美味いしな!』
……人間の敵であるはずの魔物たちが完全に躾けられている姿に、魔族の少女らはただただ驚くしかなかった。
彼女らは理解する。自分たちを救ってくれた白銀の英雄、レイン・ブラッドフォールという男がどれほど凄まじき人物であるか。
彼はその暴力的な戦闘力によって数多の悪を殲滅し、魔物たちに理性というものを刻み込み、そして人々から差別の意識を力づくで取り除いてみせたのだ。
力による環境の変革。そのやり方は多くの者からすれば忌避するようなものかもしれないが――今まで最低の日々を送ってきた魔族の少女たちは、救世主であるレインの生き様に魅せられた。
ああ、自分たちも彼のようになりたい! 差別してくる者たちを全員殺し、人としての尊厳を示してやりたいッ!
自由と平和を勝ち取って、いつか世界から差別意識をなくすのだ!!!
そんな思いを胸に、魔族の少女たちはレインに対して心から心酔し――、
「――子供たちよ、強く胸に誓うのだ! 邪悪なる敵国エリシオンを討ち滅ぼすとッ!」
「「「はいレイン様ッ! エリシオン国はこの世の癌ですッ! 住民たちは害虫ですッ! 一匹残さずこの世から消し去り、世界を平和にしてみせます!」」」
……こうして誰よりも差別を嫌っているはずの少女らは、レインのヘイトスピーチをまんまと信じ込んで、隣国エリシオンに対して凄まじく理不尽な差別意識を抱くようになってしまったのだった。最悪である。
みなさまのおかげでなんと7話も連載出来ました!本当にありがとうございます!
最新話の下にあるポイント評価から、1人10ポイントまで応援することができます!
10ポイントは、冗談抜きで本当に大きいです!
『面白いかも!』
『続きを読みたい!』
『連載7話おめでとう! 陰ながら応援してるよ!』
と思われた方は、下のポイント評価から評価をお願いします!
今後も毎日更新を続けるための『大きな励み』になりますので!
どうか何卒よろしくお願いいたします!!