5:権力者を殺したい!!!
いつもご感想ありがとうございます!
このたび、この王道冒険ファンタジーにレビューをいただけました!やったぜ!
「――それで、領主ベアトリーチェ。どうして俺を呼び出した」
「ぃ、いや、それは……えぇぇぇぇぇ……?」
豪奢なる屋敷の一室で、俺は礼儀知らずの女領主とテーブル越しに向かい合っていた。
ってかこの女、俺が忙しい中わざわざ呼び出されてやったのに、さっきからチラッチラと周囲ばかりを見てぜんぜん礼儀がなってねぇな! ちょっとゴブリン百体に囲まれてるだけじゃねぇか!
『ギギャギャァッ! コノ女、美味ソウッ!』
「ひえぇーっ!?」
「駄目だな領主よ、民衆を導く立場であるなら魔物ごときに怯むなよ。凛と胸を張るがいい」
「ってその魔物たちを引き連れてやってきたアナタだけには言われたくないんですわよッ!?」
俺のありがたいアドバイスを無下にするベアトリーチェさん(たぶん29歳)。
もうそれだけでブッ殺し案件なのだが、すでにコイツを始末することは決まっているのでひとまず大人しく話を聞いてあげることにするレインくんなのだった(優しい)。
彼女はコホンと咳ばらいをすると、顔を青くしたまま俺に訴えてくる。
「話というのは他でもありません。わたくしの美しき街、コキュートスに魔物を引き入れていることについてです!」
「俺が掃除するまで汚かったが」
「うるさいっ! とにかく、人間の生活の場に汚らわしい魔物の群れを住まわせるなんてどうかしてますわッ! そういう異常な神経をしてるから嫌いなんですわよ、冒険者という生き物はっ!」
「俺は人間という生き物だが」
「喧嘩売ってますのッ!?」
何やらプンスカ怒りながら、周囲のゴブリンどもに嫌悪の視線を向けるベアトリーチェさん。
……まぁ言いたいことはわかるさ。魔物というのはその名の通り、“魔”の属性を持つ縁起の悪い生物たちとされているからな。ゾンビキャットが横切ったら不幸が起こるなんて言われてたり。
ゆえに、それらと接する機会の多い冒険者もまた、主に高貴な者には嫌われている職業というわけだ。
といっても、ほとんどの男の子はやっぱり冒険者になって伝説のドラゴンを狩るのを夢見たりするし、食べる物がない貧民なんかはスライムをおやつ代わりに食ってるくらいなんだけどな。
ちなみに俺も魔物に対する偏見なんてこれっぽっちもない。だって人間だろうが魔物だろうが、殺せば無害になるんだからな。
それにだ――、
「よく偉そうなことが言えたものだなぁ。……貴様、民衆を苦しめるマフィアの存在を野放しにしていたのはどういうことだ」
「ぐぅッ……!? そ、それは仕方がなかったんですわよッ! ヤツらの力はあまりにも強大で、大切な兵士たちを傷付けさせるわけには……!」
「ゴミのような言い訳はよせ。……どうせ、ラクに稼ぐのが好きな悪党どものことだ。街の占拠を見逃して貰うかわりに、お前に対して『分け前』を払っていたんじゃないのか?」
「なっ、そ、それは……!?」
明らかな動揺を見せるベアトリーチェ。まぁ、やはりそんなところだったか。この部屋に来るまでにコイツの私兵どもを気分的に全員殺してきたから分かる。この女、少なくともマフィア連中を追い出せるくらいの兵力は持っていやがった。つまりはそういうことなのだろう。
俺はゆっくりと立ち上がると、腰から剣を抜いてクズ女の首に突き付けた。
「ひっ、ひぃい!?」
「民衆たちより無理やり奪われた金の一部を受け取っていた時点で、お前も悪党の一味と変わらない。……いいや、それに加えて税金までも掻き集めていたのだから、さらに最悪の存在と言えよう。ゆえに、ここで裁かせてもらうぞ」
「まっ……ままま、待ってくださいましッ! ねぇレイン様、わたくしと取引をしませんかッ!? ど、どうかお願いしますわ、『ブラッドフォール家』の後継者さま!」
「……何?」
コイツ、俺の家のことを知っているのか。その上で取引だと?
一旦刃を止める俺に、ベアトリーチェは先を続ける。
「わ、わたくし知ってますわよ! 冤罪……冤罪? ……とにかく冤罪で家族を処刑された貴方は、隣国の王に復讐するための戦力を集めているのでしょう!?
でしたらこのベアトリーチェが役に立つはずです! わたくし多くの貴族たちと顔見知りですし、それに各地のマフィアの幹部たちとも仲良しで、薬物乱用パーティーや人身売買オークションとかによくお呼ばれしてるくらいですしッ!」
「お呼ばれしてんじゃねぇよパンチ」
「ギャーッ!?」
チッ……想像以上のクズだったので殴り殺そうとしたら、コイツ咄嗟に避けやがった。やっぱりクスリをキメまくってるだけあって感覚が敏感らしい。
……それにしても、人身売買オークションか。それはかなり気になるな。
よし決めた。俺は涙目になっているベアトリーチェの頭に手を乗せ、ぐりぐりと撫でまわしてやる。
「ひっ、ひぃいいい……! ころされりゅ……!」
「いいぞ、ベアトリーチェ。正義の英雄である俺のペットとして、もう少しだけ生かしてやろう。ただし俺の所有物になったからには、もう悪いことはするんじゃないぞ?」
「ク、クスリをキメるのは!?」
「駄目に決まってんだろ馬鹿」
どうしようもないクズ領主にデコピンを食らわして昏睡させ、俺は意気揚々と引き上げていくのだった。
いやぁ~人身売買オークションかぁ!
……悪い権力者たちがどれだけ集まってるのか、レインくん今から楽しみだなぁ!!!
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