英雄以外、ハーレムを作ってはいけない
私は先日まで不倫をしていた。期間は大体半年ぐらいだ。
結婚したあの日、女神に誓った。けれど、それを先日破った。
私には妻と子供がいる。許される行為ではない。
分かっていた。
けれど、やめることができなかった。
若い女性と仲良くなれる。そんなことが四十歳を超えた私に訪れるとは思っていなかった。その時、私は青年時代を思い出した。
十代のころは村の英雄ともてはやされた。力自慢で、魔物を何度も追い払った。そんな私に恋する女性は幾人といた。けれど、結婚した相手は村の外の人間で、私が好きだった人だ。そんな人間を私は裏切った。
最初はするつもりなどなかった。単に、若い子の面倒をする程度にしか考えていなかった。
だが、次第に変わっていった。勇者の凱旋パレードを一緒に見に行ったことで私の心は揺れ動いてしまった。
勇者と呼ばれる英雄は何人もの妃を持っている。国の王子であり、魔王を打ち滅ぼした英雄。いろいろな女性に好意を寄せられただろう。
勇者はその行為をすべて受け止めた。それが勇者としての在り方だったからだ。勇者として生きている中には、女を抱く、その行為も含まれていた。勇者だからなしえたことであった。
勇者であることが英雄であることがハーレムを築いた。
けれど、私はどうだろうか……。
週一回ほど、妻に隠れながら行為にいたる。もしかしたら、妻は不倫をしていることに気が付いていたかもしれない。いや、そうであったに違いない。
村の英雄と世界を救った勇者ではそのあり方が違った。
ハーレムとして受け入れられる器の大きさとでも呼ぶのだろう。その大きさが私にはなかった。
不倫相手に突然言われた。
結婚してほしい。
できるはずがなかった、私にも妻がいた。けれど、好意は彼女にある。その葛藤が辛かった。
ならやめればいだろう……そんなことができるならば、今この状況に陥っていない。
私はどうすればいいのか分からなかった。
正解は分かっていた。不貞を妻に告白し、罰せられる。そして、一生妻に詫びを入れながら生きる。それが正しい。
けれど、それが怖かった。何より彼女といるのが楽しかった。やめれなかった。
愛と恋が違うということをようやく理解した気がした。
そして、ある日、不倫相手が妊娠した。
私はその事実を受け入れることができなかった。
首を吊った。
次の日、私の死体が私の家から発見された。
勇者ならば、ハーレムを築くことができただろう。けれど、村の大人ではそんなことはできない。