信仰心の真実
司祭「……っ」
勇者「つまり…人類の命運は、俺の手の中ってわけだ」
司祭「……ッお前は……銅像を作り、勇者を崇めさせた」
勇者「……そう」
司祭「すべては……女神様を……神を倒すため」
勇者「その通り」
勇者は、笑う。
司祭「……みんなから魔力を集めて戦うのは、単なる見せかけだったんだな」
勇者「ああ、その気になれば、ライガだけで倒せた」
司祭「……こんな茶番を、他の世界でもやったのか」
勇者「そうだ、みんなの祈りを一身に受けた勇者が魔王を倒し、世界各地に作らせた勇者像を、信仰する新たな宗教ができるよう仕向けた」
司祭「……女神様が、黙ってないんじゃないのか」
勇者「食糧を奪われたからな、そりゃだまってないさ、だが、どうする?」
司祭「勇者の加護をはく奪する」
勇者「それは愚行だろ、制御を失ったライガがどうなるか俺にもわからんぞ」
司祭「……勇者への信仰を滅ぼす…」
勇者「そう、その通りだ。 つまりこの戦いは、女神様が起こしていることでもあるんだよ」
司祭「……ッ」
勇者「なぁ司祭、この魔王達がなんでこの世界に存在しているか知っているか?」
司祭「…」
勇者「こいつらには、性別はあるが生殖能力はない、ただ規格外の魔力と、女神を倒すという目的だけの為に生きている」
司祭「……何がいいたい」
勇者「俺は思ったんだ。こいつらは人間の信仰を吸い上げるための当て馬なんじゃないかってな」
司祭「!」
勇者「魔物を使い、人の信仰心を煽るための舞台装置、そう考えると、すべてに辻褄が合う」
司祭「……ッそれは…、お前の妄想にすぎない」
勇者「なぁ司祭、こんな世界を作った神を、守る価値なんてあるのか?」
司祭「だからそれは―」
勇者「じゃあなんで女神は、助けてくれなかった?」
司祭「!」
勇者「あの村娘や、少女を、何の罪もない人たちを、なんで女神は、助けてくれなかった?」
司祭「……女神様は……無意味な試練を与えない…」
勇者「いや、無意味だろ」
司祭「!」
勇者「死ぬよりもつらい苦痛の声を、お前は聞いたことがあるか?」
司祭「…やめろ」
勇者「あんな心優しい人たちを、あんな目に合わせる意味ってなんだ?」
司祭「やめろ!」
勇者「だから倒すのさ、こんなクソみたいな世界を牛耳ってやがる神どもを」
司祭「……ッ」
司祭は顔を歪めると、絞り出すように、質問をぶつける。
司祭「じゃあなんで……さっさと終わらせない」
勇者「ん?」
司祭「女神信仰の信者どもを殺せば、それで済む話じゃないか、女神様は信仰を失い、やがて滅びるだろうよ」
勇者「……なぁ司祭、俺の見た目を見て、どう思った?」
司祭「?」
司祭は、勇者に目を向ける、十年ぶりにみるその姿は……まったく老いていなかった。
勇者「俺の体の成長は、女神教と勇者教の戦いが始まったときから、止まっている」
司祭「!?」
勇者「おそらく女神たちの小賢しい抵抗だろう。どうやら奴らは俺に死なれるのが怖いらしい」
司祭「どういうことだ?」
勇者「信仰の中心である俺に死なれると困るってことは、要するに、俺の魂は死んだあと神の領域に届きうるってことだと考えている」
司祭「……そんなことが」
勇者「実際、信仰はすごいぞ、信仰を得るほどに、俺の力が今までにないほどに高まっているのがわかる、今ならこいつらを片手であしらえるほどにな」
勇者はそういって、周囲の魔王を見渡した。 魔王達の顔が一様に強張る。
司祭「……だから、そうそうに決着をつけない」
勇者「そうだ、女神を殺したからといって、この呪いが解けるとは限らない」
司祭「…」




