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最弱魔王の思惑
「ガフッ」
勇者の数センチ手前で、銀髪の魔王の動きが止まった。
口から血を吐き出し、苦しそうに身をよじると、その場に膝をつく。
「……ッ」
その様子に、すべての魔王の表情が強張った。
勇者は悠然と歩を進めると、唖然と見つめる魔王達の前で大魔王が座っていた王座に腰を下ろした。
「……安心しろ、お前らはまだ殺さない、……やってもらいたいことがあるからな」
「……ッ」
魔王は、茫然とその光景を見つめていた。
そして、こみ上がる感情に、納得していた。
あの勇者が……ここまで
理屈も、理由も、すべて吹き飛んでいた。
ただ、胸には、優越感――
どうだ、俺の闘っていた勇者は――
俺の闘っていた勇者は――
とんでもない化け物だったぞ。
偉そうにしていた貴様らは、何もできずこのありさまじゃないか
「……はは」
魔王はこらえきれず笑みをこぼす。
そうか……余は
この光景が見たかったのか
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