激突3
衝撃に互いに後方へ吹き飛ぶ。
地面を削りながら停止する二人。
そして停止と同時に、二人の姿が消える。
爆散する天井
壁を、床を、天井を蹴り、互いを錯綜させる二人。
魔王城を縦横無尽に駆け回り、破壊的な余波をまき散らしながら二人は激突を繰り返す。
勇者の狙いは明白であった。 魔王など後回しにし、魔王の間に到達することである。
魔王の間には、破壊されては困る何かがある、それがなんなのかまではわからない。
しかし、魔王は明らかにその場所を庇うように戦っている。
その状況こそ、重要だった。
勇者の銃剣の銃口が、魔王の間へ向けられる。
庇うようにその場に転移する魔王。
放たれる雷弾が、魔王に着弾する。
「……ッ」
雷弾の直撃により吹き飛び壁を貫通し、床を転がる魔王。
床を腕で撃ち、胴体を起こす。
「!!」
勇者の周囲を覆うように、無数の黒い槍が切っ先を勇者へ向け、空中に召喚されていた。
雷撃の閃光で視界が塞がる一瞬を利用して、防御ではなく、攻撃に転じた――
槍が、一斉に勇者へ迫る。
勇者は跳ねるように跳躍し、迫る槍を剣で撃ち落とし、時に魔法で迎撃した。
その最中の、勇者の背後、拳を振り上げる魔王。
「!」
勇者は咄嗟に体を反転させると、剣の腹で拳を受け止めた。
下から上へかち上げるように振るわれた拳撃に、勇者の体が浮き上がる
魔王の拳の着弾点を中心に、まるで透明な風船が膨らむ様に空間がゆがんだ。
「死ね!!」
やがて空間がガラスの割れるような音と共に爆ぜると、勇者の体は一瞬にして極超音速まで加速し、魔王城の外へ弾き出された。
「!」
勇者が放ったであろう雷撃弾が反対方向に突き進む、そして魔王の胴体に着弾する。
胴から煙を吐きながら後方に吹き飛んだ魔王は、床を踏み砕いて体を停止させると、忌々しげに上空を睨んだ。
魔王(あの状況で反撃の余裕があるか)
魔王は、右手を開くと、詠唱を始めた。
~~~
空気の摩擦熱に体を焼かれ、体の原型を失いながら雲を貫き上空へ上る勇者。
魔力を逆ベクトルに放射する、その結果高度2000メートルにて運動を停止させることができた。
口から噴き出る血液。
勇者は回復魔法により体を回復させる。
ガラスの砕けるような音を、鼓膜がとらえた。
同時、勇者は回復を早々にきりあげ、銃剣の銃口を下へ構え、引き金を絞った。
空間を砕きながら迫る黒い球体、魔王の究極暗黒魔法と雷撃弾が激突する。
球状に混ざり合った魔法同士が次の瞬間に爆裂し、周囲の雲を波紋状に拡散させた。
勇者「……」
勇者は左手で右手の前腕を支えるように持ち、右腕でまっすぐ構えた銃剣に全魔力を集中させると、再度引き金を絞った。
銃剣の剣先から放たれる雷を纏った直径10mの円柱状の光線が、大気を焼き切りながら魔王城へ向け突き進む。
魔王「!」
対し魔王、右掌を空へ突出し、漆黒の波動を放つ。
直線状に突き進むビームと、不規則に歪みながら大気を犯すように突き進む波動が、空中で激突した。
勇者・魔王「……ッ」
激突点を中心に球状に混ざり合う光と闇。 際限なく放たれるビームと波動のエネルギーを前に形状を保てず、勇者と魔王を隔てるように波紋状に拡散してゆく。
ビームを放出し続ける勇者、その引き金を絞ったままの腕の皮膚が裂け、血が噴き出した。
吐血、目からも血が噴き出す。大気に放たれた血は瞬く間に蒸発する。
規格外、特大の魔力を一気に長時間放出することに、体が耐えられないのだ。
理力の剣に、ヒビが走った。
勇者は歯を食いしばる。目の前が真っ赤に染り、やがて何も見えなくなった。
耳は音を失い、触覚もあいまいになる。
今、確かに感じるのは魔力を放出し続けているという感覚だけだった。
勇者「うおおぉぉぉぉおおぉぉぉおおおおおーーっッ!!!
~~~~
魔王「……!」
魔王の膝が折れた。
魔力が、底を尽きかけていることを悟る。
前半戦での、浅はかな魔力の消費。
それに加え、魔王の間を庇いながらの戦闘は、勇者よりもはるかに魔力を消費したのは間違いない。
いや、それ以前に、左腕を失ったことも大きかった。
完全に――読み負けた。
だが――
だが――っ
魔王の脳裏を、自分を嘲る魔王達の顔が掠めた。
こ の ま ま で は 終 わ れ な い
波動がビームに押し負け、散る。
大地に着弾した雷光線は、瞬く間に大地を削りながらドーム状に広がり、魔王城を光で覆い尽くした。
抵抗の消滅を感じた勇者は、引き金を絞る指の力を緩めた。
体が落下する。
勇者「究極回復魔法」
落下の過程で勇者の体が光に包まれ、やがて全快した勇者が光から飛び出し、巨大なクレーターの一部に着地する。
勇者「……」
勇者はあたりを見渡す、そこに魔王の魔力は感じない。
完全に消滅したか……あるいは……
勇者の視線の先には、不自然に残った魔王の間があった。
天井も壁もすべて消滅しているが、床と王座のみが不自然に残ったその場所。
勇者は歩みを進めると、王座の前に立つ。
勇者「……」
理力の剣の一振りで破壊される王座。王座の下には階段が地下へと延びていた。
階段を下りた先は、洞窟となっていた。 巨大なドーム型の空洞である。
その中央には、紫色に発光する巨大な魔法陣がある。
勇者「……」
勇者は銃口を魔法陣に向けると、引き金を引いた。
魔法陣の中央に着弾した雷弾がプラズマフィールドを形成し、地面ごと魔法陣を抉り飛ばした。
同時、世界を覆っていた圧力のような物が消える。
おそらくこれが、世界を蝕んでいた魔結界の発生源だったのだろう。 なるほど魔王は身を挺してこれを守っていたわけだ。
勇者は視線をめぐらせる。右側に、さらに下に降りられる道を発見した。




