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どんな手を使っても

女戦士「…ん?」


 女戦士は、言葉の意味がつかめず、眉を寄せる。


勇者「ずっと、避けてた、勝てないと思ったから、もう万策尽きたと思った」


女戦士「??」


勇者「だけど、君たちのおかげで、俺はまた、挑むことができそうだ」


女戦士「えーっと、勇者さん?」


勇者「――ヤツらを倒す策を、思いついた」


 勇者は、口にした、今まで口にできなかった言葉を、いまこの時確かに口にしたのだ。


女戦士「え? 今、なんて?」


勇者「ありがとう、君たちのことは他言しないから安心してくれ」


 勇者はそういってほほ笑むと、転移魔法で飛び去って行った。


 女戦士は勇者の消えた空を唖然と見あげる。


 空を駆ける勇者、その目は、失いつつあった光が輝きを取り戻していた。


~~~~~~~




 山奥の洞窟、勇者はそこでひたすらに待った。


 ここで来るかどうか、それが、何よりも大事だった。




 女神の信徒にはある特徴がある。


 あの姉弟に出会い、勇者が気が付いたことである。


 王子としての生活、そのあとすぐに勇者としての生活が始まった。



 そんな勇者だからこそ、この異常事態に気が付かなかったのだ。


 しかしここで、疑問が一つ生じる。



 今までの冒険を思い返せば、共通点は見えてくる、だが明確な違いを確信できるほどの情報が今の勇者には不足していた。


 可能性は十分にある。



 しかし、確信に至るほどの情報ではない。


 これが、何よりも大切なのである。


 これがもし、成功するのであれば…


 大きな希望が見えてくる。


 勇者の頭に閃いた策の成功率が上がる。




 だから来い


 勇者は洞窟の岩に腰掛け、ただひたすら待つ。


 そして――


 足音、すたすたと、一定のリズムで、その者は来た。


「…あー」


 僧侶は、意思のない瞳を彷徨わせながら、勇者の前で足を止めた。


「……」



 ここは王国から300キロメートル離れ、四方を海に囲まれた孤島の洞窟である。


 心の壊れた僧侶が、この場所に現れた。


 どれほどの苦労があっただろう。


 しかし僧侶は来た。



 勇者は、口元を釣り上げた。



 勇者が洞窟にこもって5日後のことであった。


~~~

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