おもいで2
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司祭「ライガってのは、要するに超小型の魔物だ」
「魔物? スラきちみたいな?」
そう言って魔法使いの彼女は、胸に抱いたスラきちを撫でた。
「ぴ?」
「ああ、イメージとしてはそれであってる、そいつらは魔物の体内では無害な存在だが、一度人間の体内に侵入すると、変身し、宿主の細胞を攻撃するようになる」
「zzz」
「戦士、話を聞けよ…全く。…ライガって、スラきちの中にもいるのか?」
「ああ、いる」
「え゛!」
魔法使いは胸に抱いたスラきちを手放した。スラきちが地面に転がる。
「ぴー!」
「まあ、ただ触れる分には問題ない、ライガ自体は空気中での生存能力は高くないからな、魔物の唾液や血液などを口から摂取するくらいじゃないと、魔物からの感染は起こりえない」
ぷりぷり怒るスラきちを無視して、司祭は言葉をつづけた。
「ではなぜ、人々はライガに苦しんでいるのでしょうか?」と僧侶は言う。
「それは、変身したライガだからだ」
「んー? 頭がこんがらがってきた」と魔法使い。
「人間の体内に入りこみ、増殖したライガ…便宜上ライガ2と呼ぶが、こいつは人間の呼吸と共に外に飛び出し、他人の体に入りこむことができる」
「…空気中での生存能力が高まるってわけか」
司祭「お、勇者の言った通りだ、いつまでも空気中を漂っているわけではないが、感染者を増やすには十分な時間だ」
「はいはい! 質問でありまーす! そのライガ2が魔物に感染したらどうなるの?」
「ライガ1に戻る」
「はい???」
「原理は一切不明だ、おそらく魔物の仲間意識に近いんじゃないか?」
「なんか……すごい違和感、そんな都合のいい生物っているの?」
「実際いるじゃないか」
「でもさ、その性質はライガが生きていく上でどんなメリットをもたらすわけ?」
「快適な宿主を守るための防衛行動とか、いくらでも理由は考えられるが……そんな言葉は、人間から見れば大半の魔物に当てはまるだろう」
「まぁそうなんだけどさー…」
魔法使いは何やら考え込んでいる。
「お兄様、そろそろ、私たちに教えていただけませんか?」と僧侶は言う
「おお、そうだった、横やりが入るもんだからつい長引いちまったな」
「勝手にしゃべりだしたのはお前だろうが」
「お? なんだ? お前らが何も知らないアホずらしてるから教えてやったんじゃないか」
「…ほほう、喧嘩ね、買うわよ、戦士が、さあ目覚めなさいあなたの出番よ」
魔法使いは傍らに寝むる戦士をペチペチ叩いた。
「ふが……なんだ? 飯か?」
「戦士、お前と戦うのはいつ以来だろうな? 人のありがたい話を前にぐうぐう眠りやがって」
「お? なんだ? 喧嘩か?」
「なんでこんな時だけ察しがいいんですか! 違いますよ! 旅立つ私たちに、お兄様がオルガの解毒魔法を教えてくれるって話だったじゃないですか!」
火花を散らす司祭と戦士の間に割って入り、僧侶が叫んだ。
「ああ、そうだったっけ?」と司祭と戦士
「もう!!ライガの感染対策はこれからの旅でも必須だ、だから俺と魔法使いも覚えたいって言ったのは勇者様ですよ、この場をなんとかおさめてくださいよ!」
「…ああ、悪かった…ちょっとドヤ顔の長話にイラッとしただけで…申し訳なかった」
「はは、勇者、まず歯を食いしばれ、話はそれからだぁああ!!!」




