はんげきかいし
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声がする
なぜ、何もして下さらない?
声がする
なぜ、ただあなたは見てるだけなのですか?
声がする
……これも……試練なのでしょうか?
声がする
…俺は……
~~~~~~
光球が、放射雷撃によって爆散する。
同時、魔王の影が、本体から分離し、光と衝撃に紛れて勇者の背後へと回り込む。
魔王の能力の一つ、自身の影を分離させ、その場所にワープする。
その移動の際、物理的な余波は一切発生せず、移動時間もゼロに等しい。
現状の勇者の野生の勘は侮れないものがあり、斧や、このような派手な攻撃をフェイクにし、影を紛れ込ませていた。
この方法で3度勇者を沈めている。
そして、いつでも反応できるよう、特に移動直後には特に気を張り、今回もワープを発動する。
ワープ、同時、勇者の刃が魔王の眼前に迫った。
(やはり)
覚悟をしていた魔王は、その攻撃をサイドステップで避ける。
何か目の引く攻撃があった直後、瞬間移動があることに直観的に感づいているのだろう。
避けに回り、体制を崩した魔王へ、勇者の追撃が襲いかかる。
嵐のような二刀流の乱舞。
「っ!?」
魔力を込めた手刀で受けきれない。
勇者の剣技がここにきてさらに荒々しさと鋭さを増していることに、魔王は顔をしかめた。
影移動で、その場から離脱。
しかし勇者、すぐに魔王のいる場へ飛びかかる。
「――!?」
移動の母体が影であることまで気が付いている!?
想定を超えた勇者の動きに魔王に動揺が走る。
知能がそこまで高い印象は、今までの戦闘ではなかった。
本能のみで戦う存在が、そこまで注意力を払えるものなのか――?
ワープ直後、複数の想定外の自体に、魔王が混乱したコンマ数秒――
「!」
魔王は見た、勇者の髑髏兜の闇の奥――意思を持った瞳の煌めきを―
(まさかこいつ――意識を保った状態で――)
魔力を込めた呪刃の双閃が、魔王の左腕を切り飛ばした。
「ッ――」
腕―…余の――
「――キィサマァァァッ!!」




