ゆくえふめい
勇者拘束7日目
「……」
魔王は王座で一人思考にふけっていた。
魔王の間に一人のローブで全身を覆った魔物が入ってきた。
「魔王様、本日は、いかがいたしますか?」
「……なぁ側近よ、なぜ勇者は信仰を捨てぬと思う?」
「……人間の感情など、私にはわかりかねます」
「余は、何か短絡的な間違いを犯している……そんな気がしてな」
「……魔王さま、差し出がましいようですが、いっその事勇者も、あのスライムと同様魔界に送ってはどうでしょうか?」
「側近よ、最初に勇者達を拘束した時に言ったであろう」
「は、勇者に魔界の位置を認識させると、万一勇者が死に、逃がしてしまった場合転移魔法で乗り込まれてしまう……それは重々承知しております、しかし、その勇者が邪魔なのも事実、ならば普通の人間にはたどり着けない魔界におき、魔王様直々にこの人間界を早々に落とすというのも、一つの手ではないかと」
「何をそんなに焦っておるのだ、この城から放たれる魔結界も徐々にではあるが広がりつつある、あと5年もあれば、余はこの人間界のどこでも全力で戦えるようになるのだ、焦る必要などあるまい」
「…何か悪い予感がするのです、失礼ですが、魔王様は、あの勇者を侮っているように見えます」
「侮るもなにも、余の敵ではないではないか」
「実力的には確かにそうなのですが……あの男の目は……その、うまく言えないのですが、侮れないものがあるように思うのです」
「ふん、下らん、考えるまでも―」
「魔王様!」配下の魔物が、急ぎ足で魔王の間の扉を開ける。
「勇者が……勇者がどこにもおりません」
「……なに?」




