きぼうからのぜつぼう
「……僧侶が、あなたの来る5時間ほど前に」
「! 彼女は今どこに?」
勇者はふらつきながらも立ち上がった。
「会わない方がいい」神官は俯く。
「!? なぜです? まさか醜い姿で転生されたとか?」
「いや、女神の転生を経れば、肉体に対する傷も呪いも正常状態時に戻ります」
「! ではなぜ!?」
「心です、彼女の心は……壊れてしまっていた」
「……!」
「もはや意思の疎通はとれず、日常生活は不可能、あんなに信仰熱心な子だったのに……残念だ」
「……合わせてください」
「勇者よ…」
勇者「お願いします」
「……わかった」
「あー」
勇者「……僧侶」
教会の個室で、床にペタリと腰をつけ、だらしなく涎を垂らしながら、彼女は天井を見つめていた。
勇者「…俺だよ?わかるか?」
僧侶「うー…あー」
僧侶は応えない、ただ天井を見つめてうめき声を上げる。
勇者「……」
この5年の旅だって辛かった。
辛いことがたくさんあった。
でも、みんなで協力して乗り越えることができたんだ。
でも……でも
あんな……拷問を受けたことはなかった。
死ぬ方がマシと思えるようなことは……なかったんだ。
仲間がいたから。
体が動けたから。
死んでも……教会で目覚めることができたから
彼女も、信仰を捨てるよう、迫られたのだろう。
でも、人一倍信仰の強かった彼女は、どんな拷問を受けてもそれを捨てることはしなかった。
心を犠牲にしても……っ
俺のおごりだ。
俺の作戦ミスだ。
死なないことにあぐらをかいた、俺のミスだ。
勇者「僧侶……すまない…ッ!」
勇者は、うつろな瞳で天井を見上げ、ただ声を漏らす僧侶の前に項垂れた。




