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7月7日(月) 8時25分(b)

虹ノ端大学の校舎のなかも、やはりしんと静まり返っていた。

僕が歩くたびに、僕の靴音だけが必要以上に大きな音を立てて反響する。


一現目の講義は、三階で行われる。しかし、僕はエレベータを使うことをためらった。

こんなだれもいない校舎のなかでは、エレベータは人をのみ込むために口を開閉する、不気味な生き物のように感じられたからだ。


しかたなしに、僕は階段を使って、三階の教室へと向かった。


かすかな希望とともに、ゆっくりと教室の扉を押して顔をのぞかせてみる。

しかし、やはり教室のなかにも、人はひとりもいなかった。


くらり、とめまいがした。


どういうことだ?

地域ぐるみで、僕のことをからかっているとでもいうのだろうか。


「……そんなわけが、あってたまるか」


何度目かのひとり言をつぶやく。

僕は携帯電話を取り出し、アドレス帳の片っ端からコールした。


両親、妹、友人たち、アルバイト先のコンビニ……、

しかし、どの番号にかけてみても、同じようにコール音だけがむなしく繰り返されるばかりだった。


僕は校舎の外に出て、駅に向かってゆっくりと歩いてみた。


しかしどんなに注意深く周囲を観察しても、

いつも頭上にいるカラスや、神社に住みついている野良の黒猫、虫の一匹すらも見かけることはなかった。


木々が風に揺らされることもない。

……風が吹いていないのだ。


動くものをなにも見つけられないまま、僕は駅前についた。

普段は人でごった返している駅前の大通りでさえも、いまは静まり返っている。


大通りには、まるである一瞬で時を止めたかのように、あちらこちらに車が止まっていた。

しかしどの車もエンジンはかかっておらず、運転席にもだれも乗ってはいなかった。


呼吸の仕方を忘れてしまいそうだった。


時間が止まって、

僕ひとりだけがこの世界に取り残されてしまったのだろうか?


だれもいない。

……だれもいない。


僕はぼうぜんと辺りを見渡し、そこで道に落ちた音楽プレイヤを見つけたのだった。


+++++


……手にした音楽プレイヤをふたたび道路に捨てる気にもなれず、

自分のズボン……携帯電話が入っているポケットの反対側に、それをそっとしまった。


僕は途方に暮れていた。

まだ朝だというのに、もう長い間歩き続けたあとのように、疲弊ひへいしていた。


夜になったら、どうなるのだろう。

このままだれも見つけられないまま、ひとりきりの夜を過ごすことになるのか。


想像をしてみて、ぞっとする。

……そうなる前に、はやくだれかを見つけなければ。

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