7月7日(--) 32時12分(b)
「蒼太さん、紅茶ができました。どうぞ」
「ありがとう」
僕は、みずきからカップを受け取った。
何だかとてもいい香りがする。カップのなかをのぞきこんでみると、オレンジ色の液体が入っていた。
「カンヤム・カンニャムという紅茶です」
みずきの口から呪文のような言葉が発せられた。
「か、かんにゃむ?」
「はい」
にっこりと笑ってみずきがどうぞ、と手で紅茶を進めてくる。
「実は私のお気に入りの紅茶なんです。さ、どうぞ召し上がれ」
「じゃ、じゃあ遠慮なく……」
おそるおそる口をつけ、一口だけすすってみた。
聞きなれない名前のわりには、香りがよくて、おいしかった。
「うん、おいしいや」
「そうでしょう? この紅茶は、ストレートで飲むのが一番おいしいんですよ」
そうしてみずきも自分のカップに口をつけ、うっとりとしている。
異常な世界のわりには、なんだかまったりとした、おだやかな朝だった。
「さて、と」
みずきはぱん、と手を叩いた。
「この紅茶を飲み終わったら、今日も街に出かけましょう。
この世界をなんとかする手がかりを、はやく見つけないと」
みずきは昨日よりも、だいぶ元気になっているようだった。
しかしこうして"こちらの世界"では当然のように会話を交わしている村崎みずきも、
"向こうの世界"には存在していなかったなんて。
……この少女はいったい、何者なんだろう。




