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7月4日(金) 8時00分(h)

「ただいまー……って蒼太、来ていたのか!」


事務所の扉が開き、そこから現れたのは白河ハルカだった。左手には、品物の入った買い物袋をさげている。

ハルカは僕を見て笑顔になったあと、深神さんの口の周りにケーキのクリームがついていることに気がついた。


「って、深神さん! もしかして、あの残りふたつも、ひとりで食べちゃったのか!?」

「な、なぜだ。なぜ私がふたつとも食べたとわかった!?」

「口もとの生クリーム! あと深神さんの前に皿がふたつ並んでる! ……今夜、深神さんは夕飯抜きだからな!」

「なにっ? 上司に対して、それはあまりにも酷な仕打ちだぞ、ハルカ……!」

「あのなあ、深神さん、いつか栄養の摂り過ぎで死ぬぞ?」


それからハルカは、僕に向かって言った。


「なあ蒼太、夕飯はお前も食べていくだろ?」

「じゃあ……お言葉にあまえようかな。なにか手伝うよ」

「おう、さんきゅー。今日はカレーを作るぞ、カレー用の牛肉が今日は特売日だったんだ」


うれしそうに買い物袋を持ち上げて見せるハルカ。どこからどう見ても、主夫だった。


+++++


……結局、深神さんはちゃっかり夕飯にありついていた。


「ああ、やっぱり肉の入っているカレーはいいな」


しみじみと肉の味をかみしめている深神さん。

ハルカはカレーを口にふくみながら言った。


「にふがふいたひゃ、もっほかへげ」

「ん? "深神さんたら、とってもステキ!" だと?」

「一ミリも合ってねえよ! オレは"肉が食いたきゃもっと稼げ"って言ったんだよッ!」


そんなふたりの漫才劇場を聞きながら、僕は壁にかけてある時計を見上げた。


「それにしても、緋色の帰りがおそいですね」


もう、夜の八時を過ぎている。

深神さんは水を飲むと、同じように時計を見た。


「……そうだな。もう少し、はやく帰ってきてもよさそうなものだが」

「で、深神さん、いったい緋色はどこに出かけたんだ? 買い物だったら、オレが出かける前に言ってくれりゃあ、いっしょに買ってきたのに」

「まあ、いろいろと、な」


それから深神さんは、僕に向かって言った。


「西森少年。このまま緋色に会わずに帰るのもなんだろうから、今日は泊まっていけばいい。

寝る場所はこのソファになってしまうが」

「あ、ありがとうございます」


僕はというと、自分のマンションに帰らずにすんで、内心ほっとしたのだった。

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