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愛人ごっこのはざまで  作者: 登夢
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地味な娘が店に一人でやってきた

開店して間もなく、磯村さんが以前つれて来ていた地味子ちゃんがこの前と変わらないスタイルで一人店へやってきた。だからすぐに分かった。彼女がここに初めて来てからもう3か月くらいたっていた。


ただ、この前よりも、随分スマートになっている。化粧の仕方も垢抜けてきているみたいで、近くでよく見ると目鼻立ちが整っているのでメガネをはずすとかなり可愛いに違いない。これは女の直感。


「いらっしゃいませ。確か以前に磯村さんといらしてましたね」

「はい、磯村先輩に連れて来てもらった米山です。覚えていていただいてありがとうございます」

「3か月程前にここで相談にのってもらいました。今日はここで先輩と待ち合わせです」

「そうですか、誠実な頼りになりそうな方ですね」

「私の大学の10年先輩でいろいろ相談にのってもらっています」

「いい先輩をお持ちで良かったですね」


「この前ここへ来た時に、ママのような素敵な女性になりたいと相談したら、規則正しい食事と運動したらと教えてもらいました。それにセンスの良い女性の先輩も紹介してくれました」

「それで前よりも随分きれいになられたのですね」

「そう見えますか? そうなら嬉しいんですけど」

「もともと目鼻立ちが整っていらっしゃいますから、お綺麗ですよ。もっと自信を持っていいと思います」

「ママにそう言ってもらえると自信が持てます」


7時少し前に磯村さんが店に現れた。私は地味子ちゃんとおしゃれについて話をしていた。

「早く着いて、僕の悪口を言っていたんだろう」

「いいえ、磯村さんを褒めていたんですよ」

「そのとおりです。いつも先輩には相談にのってもらっていますから」

「ママ、水割りとオムライスを2人分作って下さい」


私は水割りを作るとオムライスを作るためにそこを離れた。二人はすぐに相談を始めている。磯村さんは彼女の可愛さに気付いていないようだ。女の直感で地味子ちゃんの秘めている魅力が分かる。今ならメガネをとって髪型を替えて着飾ったら誰もが振り返る可愛い女な子に変身するだろう。話していると性格も良いのが分かる。彼が地味子ちゃんの良さに気づいたらと思うと少し心配になる。でもまだまだ彼女には、身体でも、Hのテクニックでも負けない自信がある。


オムライスを持っていくと二人はまだ熱心に話をしている。オムライスを食べながら話に夢中になっている。彼も地味子ちゃんと話していてまんざらでもないようすだ。彼の好みはこんなところにもあるのかもしれない。オムライスを食べ終わると同じくらいに話も終わったようだ。


「大事な相談は終わりましたか?」

「ああ、ママ、おあいそ」

「もう、お帰りですか? ゆっくりしていって下さいね」

「今日は帰るよ」


私は顔を近づけて小声でいう。

「あの娘に義理立てしているの?」

「そうじゃないけどね、また来るよ」


確かに来た時間が早すぎるからしかたがない。そのうちにまた訪ねてくれるだろう。待つしかないのが切ない。彼との関係はいつまで続くのだろう。いつまでも続くといいが、いつかは彼に好きな人ができて、別れる時が来るだろう。でも今は彼とのこの関係を大切にしたいと思っている。今は身体が満たされているし、気持ちも落ち着いている。


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