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空色の娘は日本育ちの異世界人  作者: 雨宮洪
消えた精霊王の加護
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43話 許されない悪戯




ハラス周辺にオークが出没し始めてから2週間経った。


その頃からパッタリとオークは出現しなくなったがまだオークキングが討伐されていないので油断はできない。


昼夜問わず交代で町周辺の見回りはされていた。


「お、オークの繁殖地となっていると思われる場所を発見しました!」


オーク討伐に関わっている騎士達と『七曜の獣』の団員達が宿泊している中央広場に町の外でオークの群が潜伏している場所を捜索していた騎士達がオークが隠れていると思われる場所を見つけたと駆け込んで来た。


オーク達は何処かに隠れ夜間になると外に出ているのではと昼間外でオークの群の隠れ場所を捜索している者達が捜索範囲を広げ森でオークの隠れ処だと思われる地下通路の入り口を見つけたという。


入口の大きさはオークがギリギリ通れるサイズだったので見つけた者達はまさかこの地下にオークが潜んでいるのではと考えたところで少し離れた位置にオークの姿が見えたので見つかる前に急いで町に戻りイアソン、ザンザス、丁度話し合いに加わっていた町長に報告しにきたという。


「そういえば…先代の町長から領主の許可を得て町を作り始める前まで逃げ延びた奴隷、私達の祖父母にあたる者達は地下に隠れ棲んでいたと聞いたことがあります」


ハラスは『スティリア』中で奴隷解放宣言される40年前からある町だがそれ以前まではリィンデルア国内でさえ奴隷扱いが酷い者は多かった。


所有者から逃げ出した奴隷達が現在の町に当たる場所より離れた森の中で偶々見つけた地下洞窟に隠れ棲んでいたらしい。


地下洞窟の広さは隠れ住むのに十分な広さはあった。


しかし洞窟内は酸素が薄く食料と飲み水の確保が困難で隠れ住む生活は厳しく苦しいものだったという…。


ある時、領地の視察に来た領主の側近に地下洞窟と中で生活をしていた元奴隷達を見つけ領主に報告した。


元奴隷達は日々の生活で衰弱し病人もいた為逃げ出すことも出来ず領主に捕まり再び奴隷にされる覚悟をしながらその時を待っていた。


だが、当時のハラス周辺の土地を管理していた領主は奴隷に対しての風当たりに心を痛めている人物だった。


領主は公式に元奴隷だった者達を領地に保護し食料品・薬等の必要物資を元奴隷達に提供し体力を回復させてから水源に近い場所に町を作るよう指示を出しハラスの町が生まれた。


先に住んでいた地下洞窟の事は辛い生活をしていた頃を思い出すからと自然と話題にあげることもなくなっていき知る年長者も少なくなり次第に忘れ去られていった。


繁殖地を探し群で移動していたオークがその地下洞窟を偶然見つけ繁殖地に選んだのだろう。


オークが出現してからハラスの外でしか手に入らない生活物資を運んでくるエニシ屋の従業員や他の町の商人が来ることができずあらゆる物が不足し始めていたので早々にオークの親玉オークキングを討伐し商人達が行き来出来るようにしなければならない。


後日一気にオークの繁殖地を叩く為の討伐隊が結成されることになった。


その討伐隊はオークキング討伐前提の為元騎士団長イアソン、ザンザス、アビリオ、ルエン、グランドンなどの実力者の他にレベルが高い新人騎士何人かで組み込まれた。


新人騎士全員と『七曜の獣』の上レベルの団員の中からオークキング討伐隊選考を夜遅くまで慎重に行ったこの夜、今まで夜に問題が発生したことが無かったのもあり町中を見回りをする者は居なかった。


それ故に"ある者達"がエニシ屋に仕掛けてきた襲撃を夜のうちに防ぐ事が出来なかった…。



「いったい誰がこんなことを…」


店の惨状を目の当たりにしたスオンは店を荒らされた悔しさと犯人に対しての怒りが混ざった声で言った。


店の外観では分からないが店内の見える場所に置いてある米酒や醤油、粉末出汁が入った瓶は全て割られ中身が床や壁にぶちまけられており猛烈なアルコール臭や醤油の匂いが充満していた…。


この日、いつものように中央広場にて新人騎士達と『七曜の獣』団員の者達の朝食作りを手伝い、オークキング討伐隊を送り出した後スオンは営業準備をするために町にある支店へ寄ると店内は悲惨な有様だったのだ。


スオンは直ちに町中で留守を頼まれている新人騎士達に通報し町での聞き込みと犯人探し、店内の掃除をユナミにも手伝ってもらうべく『七曜の獣』仮拠点へユナミを呼んできてもらうよう頼むと店内へ戻り店の被害状況を確認し始めるのだった…。



エニシ屋の惨状が発覚し店の周辺に人が集まりだした頃、ミクロを筆頭に3人の男児が『七曜の獣』の仮拠点へ向かっていた。


「ねぇ…もうやめようよ…。これ以上はヤバイって…」


ぽっちゃり体型の肉屋の息子ニックが気弱な声でリーダー格のミクロがこれからやろうとしている事を止めるよう言った。


「大丈夫だって泣きながら反省したフリをすれば大人は許してくれるよ」


「そーそーゲンコツを我慢すれば終わるさ」


ミクロと雑貨屋の息子レニの2人が言った。


この3人は"あるモノ"の作製方法を探す為にエニシ屋に忍び込んだ犯人だった。


しかし目当てのものは見つからず3人、特にミクロとレニの2人が八つ当たりでエニシ屋の商品を駄目にしたのだ。


まだ幼い男児がしたことだからと許される許容範囲を超えているにもかかわらず最早少し叱られたら反省したフリをして謝れば済むという考えしかない程3人は幼稚で愚かだった。


「ぜってぇ、あのパンの素の作り方を暴いてやる…」


ミクロ達が探していたのは天然酵母の作り方だったのだ。


エニシ屋が駄目なら『七曜の獣』にいる幼児、特にエイリなら知っているだろうとエイリはミクロ達のターゲットに定められてしまった…。






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