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空色の娘は日本育ちの異世界人  作者: 雨宮洪
消えた精霊王の加護
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42話 ミレイとタリア



町の外にある畑地帯から日々オークが5~6体ほど現れ討伐しているにもかかわらずはじめのオーク出現から10日経っても尚未だにオークの親玉だけが見つからない。


昼間とはいえ町にオークが侵入してくるかもしれないという恐怖からハラスの住民達は家の中に籠ることが多くなってしまった。


外に出ているのは昼間とはいえ住民達の安全の為に町中を見回るイアソンが連れてきた新人騎士達だ。


彼等は町の中央広場で野営用のテントを張り宿泊している。


食事は中央広場でスオンが騎士の中で調理を担当する者達と食事を調理し、ふわふわのパンをシャロムが騎士達に提供している。


2日前からは深夜に町の外でオーク討伐担当をしている団員達も町に戻ってきてすぐ食事と仮眠がとれるよう中央広場で宿泊することになった。


ステータス向上効果がある食事を騎士や団員に提供するならばエイリもその場で調理を手伝った方が良いのだがエイリの姿をなるべく騎士達に姿を覚えられないよう手伝うのは仮拠点内で出来る食材の下準備などだ。


例えばオーク肉で少々固い部位を柔らかくする為に切った肉に蜂蜜、酒、醤油、摩り下ろした生姜を揉み込み後は焼くだけで良い生姜焼きの漬け込み肉などをエイリがスオンと大量に作り、それを仮拠点に調理担当の騎士が数人で取りに来るのでそれを渡しスオンも中央広場へ行き調理し騎士達に提供している。


生姜焼きは騎士達にも好評だったが毎日では飽きるので間にバーベキューソース風に漬け込んだ肉などを挟んでいる。


この日の朝は餃子風おやきをグランドンが食べているのを見た騎士達から自分達も食べたいと催促されたのでエイリはスオンと一緒に餃子風の具を作った。


残りの調理は中央広場でスオンが調理担当の騎士達に指導しながら調理するようで仮拠点に残る団員達の食事をユナミと用意してからスオンは中央広場へと行った。


スオンが不在の間仮拠点にいるのはエイリ、猫耳姉妹、ハロルド、カイン、クロ、クゥとスオンから留守を頼まれたユナミだ。


元々引きこもりに近い生活をしていたエイリはスオンと料理などをするのでこれが気分転換になっており不満で愚図りはしないが安全の為にと室内に篭りっきりの生活に幼い猫耳姉妹は飽きていた。


それは猫耳姉妹の友人達も同じだったようで親に送迎され仮拠点へ遊びに来ることになった。



「ふわふわのしゅわしゅわですごくおいしい!」


「こんなにおいしくてあまいものはじめてたべた!」


青髪と飴色の髪をした2人の幼女に先日スオンと一緒にマヨネーズで余った卵の白身をメレンゲにして作り冷蔵庫で冷やしていたチーズ蒸しパンを振る舞うと甘いものに目がない年頃なので至福の表情をしながら言った。


この幼女達は猫耳姉妹の友人のミレイとタリアだ。


身長からして猫耳姉妹と大差ない年頃だろう。


ミレイとタリアの2人はハラスで生まれ育った子供でまだ猫耳姉妹が町にきてすぐ仲良くなりミクロ達にいじめられている時にも助けてくれていたのだという。


「エイリはミレイとかわんないのにこんなにおいしいのがつくれるなんてすごい!」


「タリアもおいしいものがつくれるようになりたいからおしえて!」



この日、ミレイとタリアはエイリが話す昔話や童話を聞きに来たらしいがチーズ蒸しパンを食べそれが余りにも美味しく2人も作り方を知りたくなったようでエイリに作り方を教えて欲しいと言った。


「んー…、この蒸しパンはシュワシュワのもとをつくるのが難しくてスオンさんがいないと無理かなー…」


先日スオンと一緒に作ったチーズ蒸しパンはスフレチーズケーキをイメージして作ったもので卵の白身を泡立ててメレンゲを作らなくてはならない。


現在スオンは中央広場へ炊き出しへ行ってしまった。


今留守を任されている大人のユナミはスオンに料理を教えて貰うようになって間もない女性だ。


今回のチーズ蒸しパンに使ったメレンゲ作りはエイリが随分前に動画サイトで見つけた裏技でスオンに作ってもらったものだ。


裏技を使っても作り終わった後のスオンは腕が疲れている様子だった。


メレンゲ作りは男性でも根気のいる作業なのだ。


料理初心者のユナミにメレンゲ作りを頼んでもスオンにお願いした時程のメレンゲを作るのは厳しいだろうとエイリは思った。


それでも猫耳姉妹の友人達に期待を込めた目で見つめられたエイリはどうするか考える…。


「それじゃあパンケーキはどうかな?パンケーキなら混ぜて焼くだけで簡単だよ?リコとルティとも一緒につくって食べてるものなんだけど」


パンケーキであれば蜂蜜とバターをトッピングすれば十分甘いおやつになり最近は生地作りだけ猫耳姉妹も手伝っているのでこの2人にも作れるだろうとエイリは提案した。


ミレイとタリアはパンケーキのことを猫耳姉妹の自慢話で聞いたことがあるようで乗り気になってくれた。


「パンケーキをつくる前にユナミさんにもお願いしなきゃね。生地を焼くのに火を使うから」


パンケーキ作りは簡単とはいえ火を使うので幼児だけで作るのは危ない。


エイリは庭で洗濯物を干していたユナミにパンケーキ作りを手伝って欲しいとお願いするとユナミは快諾してくれた。


こうして女子だけのパンケーキ作りは始まった。


「ねぇねぇ、これなぁに?」


「へんなかたちー」


台所へ移動し手洗いをして使用する道具を教えているとミレイとタリアは泡立て器を見て言った。


「これは泡立て器っていうボウルにいれたものを混ぜる道具だよ?おうちにないの?」


エイリは泡立て器がある暮らしが当たり前なので忘れているがこの世界の一般家庭の料理といえば茹で野菜、焼いた肉、塩味の野菜スープ、茹でたじゃがいも、オーツ麦で作った粥、パン屋で買った固い雑穀パンなので泡立て器を使う必要がないのだ。


この世界で泡立て器を使うのは上流階級お抱えの菓子職人くらいのもの。


仮拠点にある泡立て器もエイリが欲しい調理器具をスオンに注文しルエン、アビリオ、ザンザスの3人が共同で支払い購入したものだ。


一般の家に泡立て器が無いのならばとエイリは泡立て器が無くとも家にある道具だけでパンケーキを作る方法を教えることにした。


必要な道具と材料を用意しミレイはルティリス、タリアはユナミ、エイリはリコリスと2人1組に分かれてパンケーキの生地作りを開始した。


「はじめにパンケーキに必要な液体をつくるよ」


ボウルに竜鳥の卵を割り入れある程度フォークで混ぜてから蜂蜜、牛乳、酢の順に加えてよく混ぜてパンケーキの生地作りに必要な卵液を作った。


「次はボウルに粉と重曹と塩をいれてさっきつくった液体をちょっとずつ混ぜてね」


卵や牛乳を混ぜた液が入ったものと別のボウルに粉類を入れていく。


使用する粉は小麦粉と粉末にしたオーツ麦、どちらもハラスで栽培されている穀物だ。


小麦粉だけでも良いがミレイやタリアが家でパンケーキを作る場合小麦粉だけでは少々材料費が高くなってしまう。


いつもエイリが作るパンケーキには小麦粉の他にライ麦粉を混ぜるのだがこの日オーツ麦を使用したのはライ麦よりオーツ麦の方がミレイとタリアの家の食事で粥として馴染み深い穀物だったからだ。


安価なオーツ麦を混ぜればおやつだけでなくいざという時に雑穀パンの代わりにもなり美味しく、小麦には無い栄養もとれる。


粉が入ったボウルに重曹と塩を加えたら少しずつ卵液を注ぎながら泡立て器の代わりにフォークで混ぜていく。


ある程度注いだところで木ベラに持ち替えボウルの底に溜まった粉もしっかり混ぜ全体的に粉ぽさがなくなりドロリとした感触になればパンケーキ生地の完成だ。


「今日はちょっとバターも入れてリッチな味にしよっか」


エイリは完成した生地を焼く前に熱したフライパンで溶かしたバターを生地に混ぜた。


こうすればバターでフライパンに油引きも出来るので無駄がない。


「きょうはリコもひっくりかえしたい!」


生地を焼くのは作り慣れているエイリと大人のユナミでするつもりでいたのだがいつも生地作りまで手伝っているリコリスが今日こそは自分もパンケーキを焼きたいとしつこくせがんだ。


「フライパンは熱いから手にあたらないように気をつけてね」


「うん!」


根負けしたエイリは熱したフライパンに手を当てないようにと幼児達に言い皆でパンケーキを焼くことにした。


お玉で生地をフライパンに流し入れポツポツと黒い穴が見えたところでフライ返しでパンケーキをひっくり返す。


エイリとユナミはパンケーキを作り慣れているので綺麗な丸いパンケーキに仕上がったが他の幼児達は初めての作業だったので細長い丸型、歪んだ丸型、上手く返せず半月状のパンケーキになってしまいしょげてしまった。


それでも完成したパンケーキに蜂蜜をかけて食べると幼児達はあまりの美味しさに目を丸くしていた。


それからエイリは幼児達に何故こんなに美味しい物が作れるのか質問責めにあうのだった…。




補足(エイリが全部作った場合)



【料理名】パンケーキ


HP +15回復


【説明】粉末状にした穀物に卵や乳製品を混ぜて焼いたもの。おやつ、主食にもなる。


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