40話 手づくり万能調味料
『スティリア』にはヤヌワ伝統の調味料で日本でも馴染み深かった味噌と醤油が存在しておりそれ以外の調味料となると塩、砂糖、黒糖、蜂蜜、酢、胡椒などがある。
他にハーブや香辛料もあるのだがこれらは薬として扱われている。
周辺で手に入る調味料でも十分おいしい料理を作ることは出来るのだが『料理スキル』のステータス向上効果がある料理を発掘の為にもエイリは自作できる調味料も作ることにした。
この日作ったのは日本で魔性の調味料として名高いあのマヨネーズだ。
マヨネーズは新鮮な卵、植物油、塩、酢を混ぜて作ることができる調味料である。
マヨネーズ作りは手間が掛かり買った方が早いのだが『スティリア』にはマヨネーズが存在していないので自作するしかない。
『スティリア』ではやはり日本以外の国同様に生卵を食べると腹を下すという認識なのでエイリがマヨネーズ作りで生卵を使った調味料と説明するとスオンに腹を下したりしないのですか?と言われた。
それに対してエイリは卵は新鮮なものを使い酢と塩で殺菌し作る時はその日使いきれる量にしたり加熱する料理に使うなりすれば問題無いと説明した。
この世界では冷蔵庫のような魔道具が開発されたばかりなのでいくら殺菌作用がある酢や塩、マスタードを入れても生卵を使っている以上手作り調味料を常温で保存するのに衛生的に不安があったからだ。
兎に角、マヨネーズとは日本どころか外国でも大人気の調味料だとスオンを説得してマヨネーズ作りを開始した。
「エイリさんは本当に器用ですね…」
「そう?」
マヨネーズ作りは全卵でつくるものと卵黄で作られるかによって仕上がりは変わってくる。
今回作るのは有名なメーカーで作られているものと同じ卵黄を使ったマヨネーズだ。
余った白身は甘党のアビリオと猫耳姉妹のおやつとしてふわふわのチーズ蒸しパン作りにでも使おうとエイリは予定していた。
エイリはお菓子作りで卵の殻をうまく使い卵を卵黄と白身に分けるのに慣れておりどんどんボウルに竜鳥の卵の卵黄を入れていく。
スオンは慣れぬ作業で卵黄を何個も潰してしまっていた。
『スティリア』には卵の卵黄と白身を分ける道具は無い。
エイリは動画サイトでどこの家庭にもあるもので卵黄と白身を分ける方法を思い出したのでその方法をスオンに教えた。
それは漏斗を使った方法だ。
漏斗の中にそのまま卵を割り入れると小さな穴に卵黄が引っかかり白身だけ下から流れ出るので卵を綺麗に割れさえすれば勝手に卵の卵黄と白身を分けることができる。
「なるほど!このやり方は楽で良いですね!」
スオンは漏斗を使った卵黄と白身の仕分け方法を気に入ったようだ。
マヨネーズは手早く泡立てるように混ぜる必要がありこの作業はまだエイリには出来ないのでスオンにお願いした。
卵黄に酢と塩を加え泡立て器で卵黄が白っぽくなるまで泡だてていきサラダ油を一気に入れると分離してしまうので少しずつ加えながら白くもったりするまで泡立てるとマヨネーズの完成だ。
完成したマヨネーズをスプーンですくい味見をする。
「どこの家にもあるこの材料でこんなに美味しい調味料が出来るとは驚きです…。エイリさんの育った場所で人気が高いのも分かります」
エイリが知るマヨネーズの味とはやはり少し違うが鶏卵より少し薄味の竜鳥の卵でも十分美味しいものだったが初めてマヨネーズを食べたスオンには衝撃的な味だったようだ。
この日は途中で夜の見回りに合わせて仮眠していたアビリオが起きてきたので彼も加わり数種類のマヨネーズを作りそのマヨネーズに合った料理も作って夕飯に出した。
「ん!?いつもの料理も美味かったが今日のは段違いで美味いぞ!!」
「このおいもがはいってるのおいしー」
「この少し黄色ぽいタレ少し辛いけどうまい!」
この日の夕食のメニューはマヨネーズ料理定番のポテトサラダ、オーク肉のポーク南蛮、オーク肉入り餃子風おやき、野菜たっぷりの味噌汁だ。
日々戦闘専門の団員達やイアソンが連れてきた新人騎士達、腕に自信がある町の住民達が討伐しているオークの肉は食用できる魔物肉であるのとマヨネーズを使った料理を調子に乗って思いつく限り3人で作った結果このようにオーク肉とマヨネーズ尽しのメニューになってしまった。
それでも団員達は初めて食すマヨネーズの味とエノルメピッグより臭みがあるオーク肉がこんなに美味くなるとはと驚いていた。
大人用のポーク南蛮にかけているタルタルソースに使ったマヨネーズは発祥の地フランス風に全卵とマスタードを使ったものなので少々ピリ辛に仕上げている。
辛いものはまだ早い今のエイリと猫耳姉妹のポーク南蛮のタルタルソースはマスタードは入れていないものだ。
マスタードには殺菌作用があり『スティリア』では腫れ物などの湿布治療として使用されているらしく以前グランドンが負傷した時にもマスタードを潰したものが湿布に使われていた。
エイリがマスタードがこの世界では調味料ではなくそのように使われていると聞いた時は日本伝統の昔話に登場したあの火傷したタヌキに辛子を使ったのは治療として間違っていなかったんだなと思った。
「このおやきというやつは美味いな。これはまだあるか?夜の見回りの夜食に食べたい」
「生地をつくればあるよ」
ルエンは餃子風のおやきが気に入ったようで夜食にも食べたいとエイリに要望した。
餃子風の具は量の作り加減が難しく余ったものが冷蔵庫に保存してあるので生地作り焼けば夜食として渡すことが可能だった。
「オレにも良いか?出来ればこのマスタード入りのマヨネーズも頼む」
「僕にも欲しいなー。僕も作るの手伝うから良い?」
「俺も食べたい!」
ルエンと夜の見回りで組んでいるザンザスとアビリオと新人騎士達と組むことになったグランドンからは餃子風おやきのタレ代わりにしていたマスタード入りのマヨネーズも一緒だった。
食後、アビリオも手伝うと言ったが彼には夜の見回りの体力を出来るだけ温存して欲しかったので手伝いは辞退してもらいエイリはスオンだけでなく留守番メンバーのハロルドとカインにも手伝ってもらいながら夜食用のおやきとマスタード入りのマヨネーズを作った。
「はい、おとうさん。おやきもおつまみに合うだろうけど飲みすぎちゃ駄目だからね」
「それぐらいわかってるさ」
ルエンに出来上がったおやきとマスタード入りマヨネーズが入った瓶を渡す際エイリが言った。
「あとね、おとうさんがスオンさんに頼んで持ってきてもらったバジル。塩漬けにしたのをポテトサラダのマヨネーズな早速使ったよ!」
少し前に塩漬けにしたバジルの風味が移った塩をポテトサラダ用のマヨネーズを作る時に加える塩に使っていた。
「道理で少し薬草の風味がしたのか。だがあれも美味かった。」
「おとうさんがスオンさんに頼んでくれたからつくれたんだよ。おとうさんありがとう!」
手に入りづらいハーブをルエンがスオンに採取して渡すように頼んだからこの塩を作ることやこの先庭にハーブを植えて増やすことができ、母親フィリルルの形見でもあるものを得ることができたのでエイリはルエンにありがとうと笑顔で礼を言った。
「お前がいつまで経ってもガリガリの子猫だからな。多少食べ慣れたものを食えばマシになると思っただけだ」
「うん、そういうことにしておく」
素直でない返答はルエンなりの照れ隠しなのだと実の親子とはいえまだ普通の親子と比べれば共に暮らした月数は短いがエイリには良く分かっていた。
他の見回りをする団員達にもルエン同様のものを渡してエイリは団員達を見送った。
ー補足ー
【料理名】野菜たっぷりおやき
体力 +30回復
攻撃力 +20UP (120分)
防御力 +10UP(120分)
【説明】肉が少なくともしっかり野菜が旨味を吸っているので食べ応え十分のおやき。
【料理名】ポテトサラダ(バジル風味)
体力 +20回復
魔法攻撃力 +30UP (120分)
すばやさ +20UP (120分)
【説明】じゃがいも、きゅうり、人参、塩漬け肉をバジル風味の調味料であえた一品。
【料理名】オーク南蛮
体力 +50回復(120分)
全ステータス +15UP (120分)
【説明】臭みがあるオーク肉に独自の調理方法で調理した一品。マスタードのピリッとした風味が癖になる。
【料理名】マヨネーズ(マスタード)
すばやさ +15UP (120分)
麻痺回復
【説明】卵で作られた調味料。肉料理に良く合う。
『料理スキル』レベル上級者が2人一緒に作った結果、ステータス向上効果の継続時間が人数分の倍になるという設定となっております。




