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空色の娘は日本育ちの異世界人  作者: 雨宮洪
二章 『愛し子』の娘、ギルド見習いになる
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24話 パン生地をつくる


「薄いのにいつものパンより美味い!」


「生のキャベツもショーガ焼きと一緒だと美味いな!」


この日のギルド『七曜の獣』の夕食メニューは雑穀入りトルティーヤに千切り野菜とエノルメピッグの生姜焼きをのせた和風テイストのラップサンドと竜鳥の骨、人参・玉ねぎなど野菜の皮とキャベツの芯で出汁を取ったスープに少々の塩で味付けし野菜を加えて煮たものだ。


今日もルエンに稽古でフルボッコにされたハロルドとカインの2人がガッツクようにアビリオとエイリの協働作業で作った料理を食べている。


「…具材を挟んだパンは屋台街で売っていたら良い酒のつまみになりそうだな」


「なんでお前はいつも飯を酒のつまみに例えるんだよ…。まぁ確かにこれは食う場所も選ばず片手で食えるし冒険者目線で見れば良いな。野菜も美味く食える」


雑穀入りラップサンドを食べたルエンとザンザスはこれをスオンに相談しこのレシピを屋台街に売ってエイリの小遣いという名の貯蓄を貯めてみてはどうかと提案した。


エイリの実父であるルエンは冒険者という危険な職業柄いつ何があるか分からないので早いうちから先立つ物は貯めておけということらしい。


「トルティーヤはちょっとてまがかかるからうれませんって…」


雑穀入りトルティーヤの生地をのばす作業が意外と難しい。


屋台で売る以上トルティーヤの厚さと大きさがなるべく均一にする必要がある。


それをクリア出来る人材かトルティーヤ用のプレス機がないと難しいだろう。


ーレシピを売るじゃなくて私が直に屋台で作って売れとかじゃなくて良かった…。このラップサンドの鑑定結果も中々凄いし…。



【名前】雑穀入りラップサンド(生姜焼き)


HP +60回復


防御力 +25UP(30分間)


【説明】雑穀の風味豊かな薄パンにシャキシャキ野菜と絶妙に味付けされた肉を挟んだ逸品。


という、エイリがラップサンドを鑑定したら下級ポーションの2倍回復量がある料理だという鑑定結果が出た。


屋台で料理を作って販売ではなくレシピを売ってみてはどうかという提案はエイリが幼児だからというのもあるが幼児でなくともただの料理の味付けだけでも規格外の効果を出しているからなのは確実だった。


エイリがギルド『七曜の獣』で料理手伝い(?)を始めて1週間。


たった1週間でもそれなりにアビリオに手伝ってもらいながら料理を作ってきて現時点で完成した料理を鑑定して分かったことは

『料理スキル』のレベルが極端に高くないとHP回復やステータスアップは無いようだ。


その証拠に今回指示だけエイリが出してアビリオが全部作った野菜スープの方にはステータスアップも何もなかった。


そして材料として使われた肉によってHPの回復量に影響があるようで竜鳥などの家畜の肉は控えめだがエノルメピッグなど討伐が困難な魔物の肉ほど効果が高いということも分かってきた。


エイリが幼児の姿でも材料次第でポーション並の効果とステータスアップする料理をエイリが大体の調理が一人で出来るようになってから同じ料理を作るとどうなるのか末恐ろしいばかりだ…。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


酵母つくり4日目


「おー」


「最初よりかなり凄いことになってる…」


アビリオはヨーグルト酵母が入った瓶をまじまじと見つめる。


熱湯消毒した瓶に入れられたヨーグルトと小麦粉を混ぜたものは作りはじめた次の日にはポツポツと気泡が見えているくらいだった。


それから4日間小麦粉と少量の水を混ぜて発酵をさせる作業を繰り返したヨーグルト酵母はもう数センチで蓋にまで達する程まで膨らんでいた。


蓋を開けて確認するとアルコール臭だけでなくシュワシュワと音も聞こえる。


順調に酵母が瓶の中で発酵している証拠だ。


「これくらいげんきに発酵していればきょうにでもパンきじがつくれます」


もうすぐ柔らかいパンが食べれるー!とホクホクした表情でエイリは言った。


「パン作りってのは結構手間と時間が掛かるもんなんだな」


台所に来ていたザンザスが2人のやり取りを見て言った。


今エイリ達が作ろうとしているパンの原理は酵母が時間を掛けて発酵し生地を膨らませるもの。


作る手軽さでいえば重曹を混ぜて作るソーダブレッドにはかなわない。


「じかんはかかるけどおいしいですよ。やきたてのパンのかおりも食欲をそそりますし」


天然酵母にはソーダブレッドにはない柔らかさと小麦本来の風味と甘さがあり何より焼きたてのパンの香りは食欲をそそるだけでなく幸せの香りだ。


これを考えたらエイリはある意味日本育ちで良かったと思っていた。



「さてどうするかな…」


酵母が完成したら次は生地作りなのだが…、エイリは悩んでいた。


いつも食べているソーダーブレッドのように雑穀多めにするか小麦粉だけのプレーンの生地にするかを。


今回使用する小麦粉はハラスで生産されたグルテンが薄力粉より多い中力粉だ。


中力粉用の麦はリィンデルア国内の至る所で栽培されているがそれでも雑穀と比べると少々割高だ。


なので中力粉はあくまでつなぎとして安い雑穀を多めに混ぜるなどして価格を下げて販売する店が多い。


一応ギルドの倉庫にはまだ中力粉はあるがギルドに借金があるのでは?と思っているので大量に使って良いのだろうかとエイリは悩んでいた。



「リコとルティは白いパンを食った事が無くてなぁ。いっちょ飛びっきりの美味いパンを頼むぜ」


その様子を見てザンザスがエイリに材料費なんか気にすんな!とニカッと笑いながら言った。


ザンザスのこの一言でエイリは『スティリア』で初めて焼くパンをシンプルな小麦粉で中身が白いパンを作ることに決めた。


元種を瓶の半分ほど入れたボウルに少し前にスオンが持ってきてくれた金属製の計量カップで計った小麦粉、蜂蜜、少量の塩、バターがあれば良いのだがバターは無かったのであまり癖のないどこの家にもある食用油を少し入れた。


「油も入れるの?」


アビリオが不思議そうに言った。


「油がはいっていたほうがじかんがすこしたってもやわらかいので」


次は水だ。パン生地作りで水分量は大事だ。


少なければ生地の成型は簡単だが仕上がりは硬くなってしまうし、多ければ捏ねるのも成型も難しくなってしまう。


木ベラで材料を混ぜて様子を見ながら水を少しずつ足して調整する。


目安はうどん生地より少し柔らかいくらいだ。


丁度良い固さになったら木ベラで捏ねるように混ぜる。


「これをこのまえつくったうすいパンのきじみたいにつやっとするまでこねてください」


作業台をキレイに拭き生地をのせてエイリは言った。


現在7才の姿になってしまったエイリには雑穀入りトルティーヤ生地より柔らかいとはいえパン生地をこねるのは重労働だが、アビリオは元々刀を振るっていただけあって腕が細い割には筋力があるのではじめはベタついた生地に苦戦していたがすぐに艶々の生地に仕上がった。



仕上がった生地はボウルに戻して濡らした清潔なフキンで蓋をして一次発酵。


「3じかんくらいしたら様子をみましょう」


向こうの世界にあったドライイーストを使えば一次発酵は1時間ほどで完了するのだが自家製の酵母だとやはり品質や気温で差が出やすいのでどうしても発酵に時間がかかってしまう。


リィンデルアはハーセリアより少し温暖な気候なのでそこに期待しよう。


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